アングル:超長期金利に低下圧力、財務省対応で思惑 需給不安解消は不透明
[東京 10日 ロイター] - 超長期金利の急上昇を招いた国債市場の需給悪化を食い止めようと、財務省が対策に乗り出すとの観測が浮上している。国債市場に思惑が広がり、10日の超長期金利も一時、大幅に低下した。ただ、対策が実現するかは不透明で仮に実現したとしても、参院選に向け与野党から減税や現金給付を訴える声が高まる中、財政拡張への懸念はくすぶる。超長期債の需給問題が解消するかは依然、不透明との指摘は根強い。
<市場が読み取る財務省の「本気度」>
これが超長期債の買い材料となり、30年金利は5月21日につけた過去最高水準の3.185%から、わずか3週間で2.860%へと30ベーシスポイント(bp)超低下した。
大和証券の川原竜馬シニアストラテジストは報道を受け「財務省が新発減額を超えた包括的な対策に踏み出すことの意義は大きい。年度途中での発行計画見直しに続く異例の対応は、財務省の危機感と本気度を改めて示すものだ」と評価。「超長期債市場は新たな安定化局面に入る可能性がある」として、今月20日と23日に見込まれる市場参加者との会合での議論に注目する考えを示した。
<入れ替え進める生保は歓迎、くすぶる財政懸念>
住友生命保険ALM証券運用部の資金債券運用室長、大原悟司氏は「買入消却については、市場参加者の一部から要望はあったが総意とはなっておらず、(報道は)ポジティブサプライズ」との受け止めを示す。
その上で、超長期の新発債減額と併せて既発債の買入消却を実施すれば、需給の調整と市場の安定に寄与するだろう、という。
ただ、市場では財政懸念がくすぶっている。参院選を控え、各党からは減税や給付などポピュリズム的な政策を掲げる動きが強まっているためだ。
超長期債市場では生保など長期保有の買い手の存在が縮小傾向にある一方、「足の速い」外国人の存在感が増している。住友生命の大原氏は「市場はこれまで以上に財政関連のニュースフローに敏感に反応しやすく、財政懸念が金利にダイレクトに反映されやすくなっている」と指摘。再び超長期債が売られて金利が上昇する可能性もあるとしている。
(植竹知子 編集:平田紀之、石田仁志)
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