「『1回くらいは勝ちましょう』と」「すごい数の人がラジオ体操を」「鈴鹿にも活かせるトライ」【SF Mix Voices 第10戦(2)】

スーパーフォーミュラ ニュース

Tomohiro Yoshita, autosport web

 2025年全日本スーパーフォーミュラ選手権は10月12日、静岡県の富士スピードウェイで第10戦の開催日を迎えたが、予選を終えて決勝開始を待つ14時ごろにサーキット全域に濃霧が立ち込め、視界不良となったために決勝レースが中止となってしまった。

 決勝のキャンセルが決まった後、予選を走ったのみで大会を終えた選手らがミックスゾーンに参加。編集部としても不完全燃焼に終わってしまった第10戦を何とか盛り上げるべく集めた各選手の言葉を2回に分けてお届けする。(前編はコチラ

 第10戦の予選では5番手につけた野尻智紀。Q1からコース上の一部にウエットパッチが残っている状況で、そこを考慮してのタイムアタックとなったが「コンディション的には、タイヤが温まってしまえば、そんなに気にするほどではなかったです」と振り返った。

 ドライコンディションで行われた金曜日のフリー走行では、2セッションともトップ3圏内には入っていなかったが「タイムが伸びなかったのですが、フィーリングは良かったです」と、それなりの手応えはあった様子。さらに上位を狙うべく新しいトライも行なったという。

「ただ、もう少しタイムレンジの高いところでクルマを組み立てないと行けないなというところで、全体の剛性を上げて今日の予選に臨みました」

「今週のなかでそこまで硬くしたこともなかったので、ネガティブな部分も出てしまったというところで、タイムを出しきれなかったのかなというところはありました」

 Q2に進出して5番グリッドを獲得したが「本当の晴れの状態だったら、もう少し路面温度も上がったでしょうし、タイヤも発動して、違った結果になったのかなと思います」と、少なからず思い残すところはあったようだ。

 ただ、午後の決勝は濃霧のためレースができず、現時点でランキングトップの坪井翔とは39ポイント差。数字上では逆転できるが、その可能性は極めて厳しいと言わざるを得ない点差だ。

 これについては野尻も「ほぼ(可能性は)ないくらいでしょうね」と現状を把握している様子。

「ここまで来ちゃうと、やれることというのは……今年僕は1回も勝てていないので、そこはさっきチームとも話をしたのですが『1回くらいは勝ちましょう』というところで、そこにフォーカスを置いて戦うだけかなと思います」と、鈴鹿大会に向けた意気込みを語った。

野尻智紀(TEAM MUGEN) 2025スーパーフォーミュラ第9&第10戦富士

“ちょい濡れ”の難コンディションで行われた第10戦の予選で、トップ6を占めたホンダ勢の一員として6番手につけた佐藤蓮。

 決勝が中止となった第10戦については「Q2のアタックは、狙ったところにピークを持ってくことができれば、ポール争いは全然あったなと感じているので悔しいです。決勝に対してもすごい自信があったので残念でしたね」と振り返る。

 この週末はドライの専有走行日からフルウエットの第9戦まで、つねにトップ5に入る速さを見せていた佐藤は「今までやってこなかったトライ」をしていたことを明かした。

「コンディション変化に対するウインドウについて、ちょっと難しい部分があるなと感じているのですが、今週のセットは鈴鹿にも活かせるトライができたかなと思っています」

 セットアップの方向性を変えたのか? と問うと「そうですね。新たなトライはコンディションが変わってもポジティブでした。そこを継続しながら細かいところを詰めていきたいです」と期待が籠った返答をした佐藤。

 第10戦予選で2番手につけていたチームメイトのイゴール・オオムラ・フラガにも同様のセットアップ変更を行っていたとのことで、2台同時に上昇のきっかけを掴んだ様子。次戦の鈴鹿は佐藤がこれまで2度の表彰台を獲得してきた場でもあるため、第11・12戦はさらなる好結果を掴むチャンスになるかもしれない。

佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING) 2025スーパーフォーミュラ第9&第10戦富士

 今回から国本雄資ドライビングアドバイザーが加入し、金曜日のフリー走行から手応えを掴んでいた小高一斗。ウエットコンディションとなった第9戦では予選で苦戦した場面もあったが、ドライに戻った第10戦の予選では、目標としているQ2にあと一歩というところまで迫った。

 Bグループからの出走となった小高は残り20秒を切ったところで1分23秒151を記録し、一時は2番手につける好感触だった。しかし、その後にライバルが次々とタイムを更新していった。小高も2周続けてプッシュしたが、自己ベストを更新できず。最終的に通過ラインまで0.107秒差で7番手敗退となった。

「金曜日のフリー走行では、前回の富士と比べてもタイム差がだいぶ少なくなって、Q2のカットラインに対してギリギリなところにいて『戦えているな』という印象でした。(予選Q1も)今までは、もっと遅いレベルにいたのですけど、今回は通過ラインまでコンマ1秒というところに来ました」と小高。

 ただ、アタックを振り返ると足りないところはあることは認識しており、「タイヤのウォームアップとかも含めてバシっと決まっていればQ2に行けたと思うんですけど、あのコンディションに対して皆がうまく合わせ切れないなか、ほんのちょっと足りていないだけでした」とQ2進出を逃したことには悔しい様子。

 それでも、決勝に向けては自信があったようで「ただ、あの位置(13番手)からレースができていれば、いつもスタートで順位を上げているので、ポイント圏内には行けていたと思います。決勝では、どちらかというと鈴鹿に向けてのセットアップ変更も見たかったので、少しだけでもクルマのフィーリングを確認したかったです」と語った。

 調子が上がりつつあっただけに、今大会は2レースとも不完全燃焼に終わった部分があったが、間違いなく鈴鹿大会に向けてポジティブな方向に進んでいるのは確かなようだ。

小高一斗(KDDI TGMGP TGR-DC)とドライビングアドバイザーの国本雄資 2025スーパーフォーミュラ第9&第10戦富士

 Q1 B組で9番手となった山下健太。10日の2度の専有走行や前日にフルウエットで行われた第9戦予選で得ていた手ごたえをもとに第10戦予選に臨んだが、アタックラップでミスがあったことを明かした。

 迎えた第10戦の予選時のコンディションは、前日に降り続いた雨こそおさまっていたものの、路面が完全に乾くまえのダンプ。山下は「1コーナー(TGRコーナー)で突っ込みすぎたし、Bコーナー(ダンロップ・コーナー)から13コーナーの間でほぼハーフスピンぐらいの感じになってしまった」とミスを悔やんでいた。

「ちょっと……しょっぼかったんですけど自分が」と肩を落とす山下は、「若干縁石が乾ききっていなかったのもあるし、コンディションが悪いのにも関わらず攻め過ぎたと思います。縁石にも乗りすぎていたし、完全にグリップするドライのコンディションであれば大丈夫だったと思うのですが、ちょっと軽く考えていたというか、予想よりもグリップしなかった」と原因を振り返った。

 そう低いテンションで話した山下を明るくしたのは“ママケン”の話題だった。

 今回の第9・10戦では、山下の母であり、全国ラジオ体操連盟公認の『1級ラジオ体操指導士』としてラジオ体操を指導・普及しているママケンが、グランドスタンド裏のステージや、ホームストレート上で行われた『アフターレースグリッドパーティ』で多くの観客とともにラジオ体操を行っていた。

 大勢のファンが一斉にラジオ体操をするという、これまでサーキットではあまり見られなかった光景には、母とJRPをつないだ山下自身も驚きを隠せない様子で「すごい数の人がラジオ体操をやっていたので、びっくりしてありがたいなと思いました」と笑顔で話し、身内の話題に照れつつも母の集客力を讃えていた。

山下健太(KONDO RACING) 2025スーパーフォーミュラ第9&第10戦富士

 前日の第9戦で優勝を飾ったサッシャ・フェネストラズ。第10戦でも予選から好位置につけたいところだったが、アタック前のラップでスピンを喫するなど歯車が噛み合わず、Aグループトップから1.5秒遅れの9番手でQ1敗退となった。

 まずは100RからADVANコーナーにかけてのスピンに関してだが、「あそこにウエットパッチが残っていて、そこに乗ってスピンしてしまった」とフェネストラズ。わずかにフラットスポットもできたということだが、タイムが出なかった一番の要因は、アタックラップに入ったTGRコーナーでのミスだったと語る。

「トラックコンディションも走るにつれて良くなっていたから、もっとも重要だったのは、セッションの最後にタイムを出すことだった。だけど、不運にも(アタックの)ターン1のブレーキングでミスをして、1秒くらいロスした。それが大きかった。あのミスがなければ、問題なくQ2に進出できていたと思う」

「あとは昨日から今日にかけてブレーキを少し変えていて、昨日と比べて感触が良くはなかった。もちろん、僕のミスであることは間違いないけど、ブレーキの変更が助けにならなかったものもあった。それがQ2に行けなかった要因だと思う」

 結局、決勝レースは濃霧により行われなかったが、フェネストラズは「残念だったけど、ペースがあったことは確認できた。レースはできなかったけど、自信を持つことができた週末だった。1号車とくらべても良いところまで来たので、この数レースでのパフォーマンスは満足している」と、前半戦にはなかった自信に満ちた表情をしていた。

サッシャ・フェネストラズ(VANTELIN TEAM TOM’S) 2025スーパーフォーミュラ第9&第10戦富士

髙木ゆきたかぎゆき

2025年 / スーパー耐久 KENNOL GIRL

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