ARグラスで仕事がしたい!! とプライムデーに買った「XREAL Air 2」に後悔! その顛末をお伝えします【テレワークグッズレビュー】
■ 「ARグラスで仕事」ができる時代がやってきたらしい メガネをかけるだけで目の前にディスプレイが現れるARグラス、とりわけ「XREAL」を、意外にも娯楽目的だけでなく仕事用途で使う人がいるそうです。 【この記事に関する別の画像を見る】 「XREAL」を始めとするARグラスは、簡単にいうと、メガネ越しの空中に映像を映し出すことができるメガネ型のウェアラブル端末。これまでARグラスやVRグラスなど「ゲームで使うと臨場感があるのだろうな〜」とは思っていたものの、VRグラスで有名な「Apple Vision Pro」も60万円とかなり高額なこともあって、自分とは関係のないもの、ガジェット界隈で盛り上がっている他人事ぐらいに見ていました。 ところが、本連載テレワークグッズ・ミニレビューの中で、ARグラスの「XREAL One」を仕事の外部ディスプレイとして活用している記事が掲載されました。そのレビューでは、電車内のような、モバイルモニターでさえ設置するスペースがないような場所でも作業できたそうです。 「ARグラスで仕事ができる」ということに驚かされましたが、他の媒体でも仕事でXREAL Oneを仕事で使ったというレビューをいくつか見つけ、「ARグラス、マルチディスプレイとして仕事に使うことができるんだ!? 普通のディスプレイのように使えるの?」とXREALへの興味が沸いてきました。 しかもそんな矢先、オフィスでもリアルに「XREAL One」で仕事をしている人を発見! 「本当に仕事で使っている人がいた! あのメガネの中でディスプレイが広がっているのを体験してみたい」と“XREAL使ってみたい欲”がますます湧いてきました。 そんな具合にXREALへの欲求を募らせた7月、なんとXREALがAmazonプライム会員向けビッグセール、プライムデーの対象になったのです! それまでの思いと、プライムデーの価格の安さに、うっかり「XREAL Air 2」をポチってしまった私ですが、結論から言うと、今、ちょっと後悔しています。時間が戻せるならポチる前の自分に言ってやりたい、買うのは「そっちじゃない」と……。 今回、その顛末を自戒こめてレビューにしたので、「ARグラスで仕事」が気になっている人はぜひARグラス選びの参考にしてみてください。そして、私の屍を越えていけ!! ■ スペック表を見てもどれを見れば良いのか、さっぱり分からない…… XREALのセールを見つけた私は、「これはぜひ試したい!」と、ざっくりXREALの公式サイトなどでスペックなどを調べたのですが、正直、どのモデルを選べば良いかが全く分かりません。 というのも、XREALには、「XREAL Air 2」「XREAL Air 2 Pro」や「XREAL One」などと、複数のモデルがラインアップされていて、値段も安いモデルと高いモデルの間で倍ぐらいの差が。にもかかわらず、見た目的にはほぼ変わらないので、何が違うのかがさっぱり分からず……。 例えば、これがディスプレイであれば、さまざまなメーカーからさまざまな種類の商品が販売されているので、それらのスペックを見比べることで「これはリフレッシュレートが他より高めだから、ページスクロールしても残像感がなさそう」とか、「日中は部屋がかなり明るくなるから輝度が高いものがいいな」といった具合に、はじめてでも、自分にあったスペックのディスプレイがどれか、なんとなく目星をつけることができます。 ところが、XREALは比較できる製品数も少ないですし、使ったことがないからなにを基準に選べばいいのかがまったく分かりません。「DoFってなに? 単位? 画面が動く動かないで何か変わるの?」「輝度の違いでどう見え方が変わるのかが分からない!」と、比較サイトなどでモデルを比べてみても、いまひとつピンと来ません。 購入したいけれど、性能の比較ができない。ならば、あとは価格で決めるしかありません。上位機種の「XREAL One」はセール価格でも約6万円という、社会人2年目の私にはかなり冒険する価格でした。購入して「全く使いこなせない!」と失敗したらどうしようか、などとあれこれ考えてしまい、まずは低価格(セール時で3万2000円ほど)の「XREAL Air 2」を選ぶことにしました。これなら、多少失敗しても、勉強代ということで済ませられるかな、なんて思っていたのです。 ■ 空中にディスプレイが出てきた! けど、XREAL Air 2単体では仕事に不向き…… プライムデーで購入して、数日後に到着。早速ARグラスをPCに接続してかけてみました。私が普段仕事で使っているMacbook Air(M3)で使用するときは、USB Type-Cケーブル1本で接続することができます。そして、ARグラス内の画面は外部ディスプレイ(拡張、ミラーリングのどちらも可能)として認識してくれました。 表示設定をしたのち、「XREAL Air 2」をかけてみると目の前に画面が現れ、いつも見ている景色に画面が浮かんでいるように見えます。 画面はフルHD(1920×1080)の解像度で、映像自体はかなりくっきり綺麗。グラスのレンズ部分はサングラスのようになっていて、光量が2割ほど抑えられている感じで、映し出された画面が見やすくなっています。なお、輝度はグラス横のボタンで調整することができ、最大500ニト。実際に最大輝度でかけてみるとディスプレイに表示された白色がかなり眩しく感じました。 そして原稿執筆にあたり、グラスのディスプレイにはPCの画面を拡張させ、参考にしたいサイトを表示しつつ仕事をしてみました。 まず、通常のディスプレイと同様に、遅延なくスムーズな操作感です。また、リフレッシュレートも120Hzと、私がいつも使っているPC(Macbook Air M3が最大60Hz)よりも滑らかに動いてくれます。 ですが、画面が滑らかに動くという良さを発見したと同時に、2点ほど気になることを発見しました。 1つ目は、表示したウェブページの文字が読みにくいこと。目の前に表示されたディスプレイの大きさ自体は、いつも使っているPCの画面よりも一回り大きい感じがありましたが、だいぶ離れた距離から画面を見る感覚に近く、例えるなら、映画館で見る巨大スクリーンのよう。 このため、着用してすぐに一般的なディスプレイ感覚で使えるか? というと、人にもよるでしょうが慣れが必要だと思いました。そもそも、物理的なディスプレイではなく、空間に映し出されたディスプレイを操作するので、これは「XREAL Air 2」に限らずARグラス全般で言えることかもしれません。 ただ、これはPCの設定でウェブページの拡大表示(125%拡大)することで、文字がずっと見やすくなって、この問題は解消しました。 致命的だったのが2つ目の問題。 何かというと、首を動かした時に、目の前のディスプレイが追いかけてくるのです。つまりマルチディスプレイとして使いたいのに、Macbookの画面を見ようと首を下げると、ARグラス上の画面も動いてしまって、ディスプレイ同士が被ってしまいます。 冒頭に紹介したレビュー記事では、首を動かしても画面が一定の位置に固定されているので、ノートPCの画面を見ながら、「XREAL One」をマルチディスプレイのように使える、とあったのですが、私の買った「XREAL Air 2」だとそうはならないのです。 頭を傾けたり首を振ると、どこまでも画面が視線の先にあります。このため、ときどき目線を下げるとノートPCの画面とXREALの画面が重なってしまうので、かなりのストレスを感じます。 マルチディスプレイをあきらめて、「XREAL Air 2」だけで使えば、画面が重なる問題はありません。でも、仕事中にはときどきキーボードに視線を向けるなど首や頭を微妙に動かすことがあり、それに合わせて画面も微妙に揺れます。これはちょっと酔いやすいかもしれません。 なにか設定の問題なのかな? と思っていろいろと調べたところ、なんと私の買った「XREAL Air 2」では、画面を固定できる機能「空間固定」が使えない(オプションで対応)ことを、このときに初めて知りました。 空間固定に必要なのが「3DoF」という機能で、確かに「XREAL Air 2」にはありませんでした。購入前、「3DoF」がなにか分からず調べたものの、検索しても「頭を動かせる自由度」といった説明しかなくて、なんのことだかよく分からず。「ARグラスをかけて動き回ることなんてないし、気にする必要はないだろう」と軽く考えていました。 ところが、、「3DoF」に対応しているか否かは、ARグラスを選ぶ際に特に重視するべきポイントだったと、使ってみて初めて気が付いたのです。まさか、これが仕事で使えるか否かに大きく影響するとは……。 ちなみに、DoF(Degree of Freedom)というのは、ARグラスやVRグラスをかけた状態で人間がどれだけ動くことができるのかを表したもので、3DoFだとグラスをつけている人の頭の「縦」「横」「傾き」の3方向の動きを感知し、頭を動かしても画面が特定の場所に固定されているように見せることができる、ということ。ちなみにその上の6DoFは頭の3方向の動きに加え、体の「上下」「前後」「左右」の、合計6方向の動きを感知するので、たとえば6DoF対応のVRグラスを付けて前や後ろに進むと、VR空間の中を移動できる、といったイメージです。 私が購入した「XREAL Air 2」で3DoFを使うには、別途オプションデバイスである「XREAL Beam Pro」を買う必要がありました。以前は「XREAL Beam」というシンプルで低価格な製品もあったようですが、今は生産終了しているようで、多機能なXREAL Beam Proのみ。ただし多機能な分、価格もお高めで3万円弱なので、もし仕事でも使うことを考えるなら、はじめから「XREAL One」を買っておけばよかったのです。「XREAL One」を仕事で使ったレビューは多いのに、「XREAL Air 2」を仕事用途で使用したというレビュー記事を見かけなかった理由は、きっとこれだったのでしょう。 ■ とはいえ、確かな没入感はあるから動画鑑賞にはいいと思う 仕事用途で使う分にはちょっと残念だった「XREAL Air 2」ですが、プライベートでは活躍の場面がありました。 仕事で使用したのち、試しに自分が推しているアイドルの動画を観てみましたが、まるで映画館で推しを観ているよう。日々動画をスマホの小さい画面で観ていた身からすると、レンズの向こうに映し出された推しを独り占めできたようで、大満足です。 仕事が終わった夜には動画配信サービスで配信されていた映画を観ました。レンズの向こう側にシアターが広がり、しかも観ているのは一人だけ。さらにスピーカーも内蔵されているので、イヤホンを必要とせず寝転がりながら映画を楽しむことができます。 また、「XREAL Air 2」で映画を観る良さを感じた場面も。スマホで観ているときは手で持ち続けて疲れてしまったり、机にスタンドを置くときも姿勢が悪くなりかなり疲れます。一方、「XREAL Air 2」は常に着用しているのでこうした疲れがなく、動画を集中して鑑賞できるのです。 今までのデバイスでは味わえないこの没入感、特に映画鑑賞が趣味の人には結構おすすめできます。 そういえば、「XREAL Air 2」を購入する直前に、とあるゲームをやってみたいと思い「PS5」デビューを果たしました。ところが、自宅にあるPS5と接続可能なディスプレイは家族で共用している55インチテレビ1台のみ。実家暮らしの身としては、下手なプレイを家族に見られるのは少し恥ずかしいので、「ARグラスでゲームが完結できたら、安心してプレイできるかも」と、XREALの購入に踏み切ったところがあります。 ただ、PS5のようなHDMIでの接続には別途変換アダプターを購入する必要があるそうで、まだ試せていません(ここも購入前によく調べておかなかった自分が悪い)。ひとまず、近いうちにゲーム機器に接続するための変換アダプターを追加購入して、PS5で遊んでみたいと思います。 ■ 今はプライベート専用になっているけれど、次は仕事できちんと使えるモデルを試したい ひと通り、「XREAL」体験記録を書いてきましたが、これだけは言えます。 “スペック表、見てもワケが分からないなら、一度試したほうがいい” XREALですが、サブスクリプションサービスで月数千円で体験することもできます。例えば、ドコモの家電レンタル・サブスクサービス「kikito」では15日間のレンタル料金5480円でレンタルすることもできますし、ヨドバシカメラなどの実店舗では実際に体験することもできます。特に首を振っても画面が固定される機能が「XREAL Air 2」のみだと対応していないことについては、購入前に見落としてました。いや、正確にいうと「別にそのDoFみたいな機能は使うことはないだろう」とかなり軽く見てしまったことがありました。慌てて購入する前に、まずは数千円くらい払って体験するか、あるいは足を運んで試しておけばよかったです。 そして、もし仕事でもARグラスを使いたいと思うのなら、画面が固定できる3DoF機能は外してはいけません。この機能がないと、画面がどこまでもついてきます。 ということで、人生で初めて手に入れた「XREAL」ですが、現在はプライベートで活躍中です。ですが、もし時間が戻せるなら⋯⋯「XREAL Air 2」ではなくて、多分「XREAL One」を選んでいたと思います(清水の舞台から飛び降りる勇気がさらに必要になりますが)。
INTERNET Watch,松永 侑貴惠