【実録】東南アジアで仕入れたものを日本で売れば素人でも利益が出せるのか? 2年間の戦いの結果
ウチの父は “外国で商品を買い付けて日本で売る商売” をして、私と妹を育て切った。「仕事で外国へ行けていいな〜」と昔は思っていたが、トシをとるにつれてガチで羨ましくなってきたので、あるとき私は父のアシスタントとしてタイへ同行した。
そこで分かったのは「父と私とでは絶望的にセンスが違う」ということ。父が選ぶ商品は私にとって、どれ1つとして「欲しい」と思えるものではなかった。しかしながら、父が選ぶ商品を購入する客が一定数いるから実家の商売は成り立っているワケで……この段階で、私が父の商売を継ぐセンは限りなく薄くなったといえるだろう。
では、私が私のセンスで商品を買い付けたらどうなるのか?
・やってみた!
そんなワケで、今度は1人でタイへやってきた。タイへは何十回も来ているが、仕入れ目的で訪れるのは初めてである。
と、いっても素人ゆえ、今回の買い付けは予算10万円ほどの超実験的なもの。業者であれば「大量購入で大幅ディスカウント」とかも望めるが、今の私はそのレベルにない。そもそも日本にはタイ雑貨を扱う店が多く、並大抵のタイ雑貨では大手に太刀打ちできないだろう。
よって今回はスキマ産業的な掘り出し物を見つけだし、コア層を一本釣りする作戦で臨みたい所存だ。ありきたりじゃなくて、大きすぎず、重すぎず、高すぎず、安すぎず、かつ売れそうなモノ……
……ってマジ無いから気をつけろ!!!!
・バンコクの片隅で頭を抱える
1週間バンコクをウロついた私だが、「これぞ」という出会いが無く、日に日に心が衰弱していった。「もしかすると売れるかも?」程度の品はいくつかあったものの、いざ購入となると踏ん切りがつかず、道端で頭を抱え、最終的に見送る……という流れを繰り返した。
“売れるか売れないか分からないものを大量に仕入れる” という行為が人にこれほどのストレスをもたらすとは、想像もしない事態である。この商売を40年も続けている父がメチャクチャ眩しく見えた瞬間だった。
かくして私は、最終的に390バーツ(約1892円)の同一商品を10個だけ購入した。詳細については企業秘密のため差し控えるが、「アパレル関係」とだけお伝えしておこう。絶対にタイでしか買えない、かつ日本では見たことがない商品である。
目標の10万円には全く届かない極小仕入れとなったが、今の私にはこれが精一杯だ。もし一瞬で完売したら、すぐ買い足しに来ればいいじゃないか、うん。
・国際郵便を送ろう!
さて。父は買い付けの際「送り屋さん」と呼ばれる配送業社を利用して日本へ荷物を送っていた。さっそく送り屋さんを紹介してもらおうと父にコンタクトをとったところ……
「そんな少量は普通に郵便で送りなさい」と言われたので郵便局へ来た。父いわく、タイの郵便局では「荷物をそのまま持っていけばパッキングしてくれる」らしい。大丈夫かなぁ。
日本の郵便局と同じように、番号札を受け取って呼ばれるのを待つ。
「日本へ送りたい」と伝えると、局員のお姉さんがテキパキとその場で梱包してくれた。特に難しいことを聞かれるでもなく、英語が全くできないという人でも、翻訳アプリとかを使えば余裕でこなせるミッションだと思う。
あとは送り状に住所やら品名からを記入し、計量。3キロ弱で送料1320バーツ(約6400円)。思ってたより全然安い!!!
タイの郵便局員さんはとにかく親切で、ザ・ほほえみの国って感じであった。あとは無事に届いてさえくれれば……!
・結果発表
買い付けミッションを終え、ようやくタイ観光を楽しんだ私が帰国すると……
もう届いてた! かかった期間は12日。海外旅行先で買い物しすぎた時など、我々はもっと気軽に郵便を使うべきなのかもしれない。
それではさっそく仕入れた商品を売ろう! 仕入れ値に送料をプラスすると、1個あたりの原価は522バーツ(約2532円)。もちろん交通費や私の労力などを入れると数倍に跳ね上がるが、今回は実験なのでそのへんは度外視とする。
と、なると商品は少なくとも5000円くらいで売らなきゃ商売にならない。あれから2年。私が仕入れた10個の商品は……
4個売れた。
まず仕入れてすぐフリマで1個(5000円)、そこから半年後にオークションサイトで1個(4200円)、忘れた頃にフリマサイトでまとめて2個(3500円×2)。なぜ金額が異なるのかというと、あまりの売れなさに少しずつ値下げしたから。
2年間で4個……私の人生における初仕入れは、大成功とは言い難いものなのかもしれない。しかし「30年前の在庫が突然売れたり、時間が経って値段が跳ね上がったりすることもある」と語るのは、何を隠そうウチの父である。遅咲きの商品を一発目に引いたと考えれば、あながち失敗とも言い切れないのではないだろうか?
そして何より、自らの足で売れそうな商品を選び、販売にこぎつけたことは私に多大な経験値をもたらした。私の商人(あきんど)人生はまだ始まったばかり……なお第2章があるかどうかは今のところ不明だ。
【重要:読者への注意喚起と免責事項】 記事内の体験は筆者の個人的な実験であり、輸入・販売を推奨するものではありません。 利益目的で商品を輸入・販売する場合、日本の法令を遵守し、自己責任で必要な手続き(商業輸入申告、品質表示など)を行う義務があります。
執筆:亀沢郁奈 Photo:RocketNews24.
▼タイの郵便局のキャラクターかわいい