46Aから空中給油が許可されていないA
KC-46Aの信頼性が欠如した空中給油システムは27機種中26機種への空中給油が許可されているものの、フライングブーム方式の空中給油は大幅な運用制限が残っており、A-10への空中給油はブーム剛性不足で許可されていない。そのため中東地域でプローブ付きのA-10が登場した。
参考:A-10 Revamped: Warthog Flying in Middle East with New Refueling Probe, EW Pod
KC-46Aの空中給油システムは信頼性が高いKC-10のものを使用するはずだったのだが、米空軍は予備設計後に空中給油システムの制御をアナログからデジタルに変更するよう要求、未検証の技術で構築されたリモートビジョンシステム=RVS1.0は新規設計と呼ぶに相応しいものだったにも関わらず予備設計審査を簡略化して初期設計に移行し、プロトタイプのテスト中に不具合が報告されたのに問題を軽視して調達を強行した結果、KC-46AはRVS1.0の不具合で空中給油能力が制限される事態に直面。
出典:DoD Photo by U.S. Army Sgt. James K. McCann
この不具合は小手先の修正で何とかなる問題ではなく、米空軍とボーイングはRVS2.0開発を決定して「2024年3月から交換作業に入る」と発表したが、一から作り直すRVS2.0には未検証の新技術(自動空中給油システム導入に向けた拡張要素など)が含まれており、これを標準的な手順で検証すればリリース時期は2026年頃になると予想されていたものの、米空軍とボーイングはスケジュールを守るため予備設計審査を再び簡略化し、米政府説明責任局が「再び同じ失敗を繰り返そうとしている」と警告した通り、RVS2.0のリリース時期は2024年3月→2025年10月→2026年→2027年夏→2028年初頭と遅延を繰り返していく。
KC-46Aは現時点で27機種中26機種への空中給油が許可されているものの、空中給油を行う環境条件、空中給油を受ける側の機体構成、特定機種で明確な運用制限が残っており、RVS1.0の構成センサーの1つ=遠赤外線(LWIR)カメラの性能不足で深度知覚やブーム先端を識別困難になるため、暗視画像システムを必要とする夜間の空中給油能力は大幅に制限(Category 2=制限運用)され、特にブーム先端が機体表面のステルスコーティングを傷つける恐れがあるためF-22とB-2への夜間空中給油は事実上禁止、F-35は手順制限を守れば夜間空中給油も可能なもののKC-135による空中給油が推奨されている。
出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Paige Weldon
根本的にRVS1.0のカメラ画像は光量調整不良、奥行歪み、グレア耐性不足で「KC-135のように窓から直接見るような自然な視界」が得られず、特定の太陽角度、強い日光反射、雲出入時の光量変化時にブームオペレーターがブーム先端を識別困難になるため、KC-46Aによる非ステルス機=F-15、F-16、B-52H、B-1B、C-17、C-5への空中給油も基本的にはCategory 2=昼間運用がメインでKC-135併用が推奨され、Category 3=無制限運用が認められているのは主翼下に取り付けられたポッド型空中給油システム=プローブ&ドローグ方式を利用した場合だけだ。
そして27機種中1機種のみ空中給油が許可されていないのがA-10で、これはRVS1.0の不具合ではなくブーム剛性不足=重量が軽いA-10の給油受け口にブームが接続した際、ブーム自体の伸縮制御の柔軟性が不足してブームの接続を維持することが困難なため、KC-46AによるA-10への空中給油はRVS2.0と並行開発されている新型ブームに交換されるまで実現の見込みはない。
出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Aidan Martínez
米空軍の空中給油戦力はKC-10が全て退役したためKC-46AとKC-135で構成され、KC-135もKC-46Aへの更新(2027会計年度もKC-135の20機退役とKC-46Aの20機受領が予定されている)が進んでいるため、Category 2の制限運用に起因したKC-135併用推奨は空中給油作戦の柔軟性を大きく損なっており、特にA-10を運用する場面ではKC-46Aが使用できないため「A-10の給油受け口にプローブ&ドローグ方式のプローブを取り付ける」という動きが観測されていた。
そして中東地域で飛行するプローブ付きのA-10が確認され、この緊急改良によってA-10はKC-46Aのポッド型空中給油システムだけでなく、HC-130J、MC-130、KC-130からも空中給油を受けられるようになり、空中給油作戦の柔軟性における課題の1つが解消された形だが、プローブ&ドローグ方式による空中給油は空中に展開されるホースの先端=バスケット状の受け口にプローブを差し込まなければならず、空軍のパイロットはプローブ&ドローグ方式に慣れていないため訓練が必要で、空中給油中の燃料移送スピードもフライングブーム方式に比べて約半分しかないため給油に時間がかかる。
出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Nicholas Monteleone
A-10の給油受け口にプローブ&ドローグ方式のプローブを取り付けるのは「一時しのぎ」に過ぎず、2027年後半に予定されている新型ブームへの交換とテスト結果が順調なら、KC-46AもA-10に対する空中給油能力を獲得できるかもしれない。
ちなみに、国防総省が運営している米軍公式の写真ライブラリーでもKC-135の空中給油シーンは多数公開されているが、KC-46Aの空中給油シーンは非常に少なく特に夜間の空中給油シーンに関しては皆無だ。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Nicholas Monteleone