角田裕毅「思い知らされた」大事故が突き付けた課題と”マックス仕様”の行方
前戦エミリア・ロマーニャGPの予選で大クラッシュを喫したことを受け、角田裕毅(レッドブル)は、RB21に対する自身の理解不足を痛感したという。ただし、問題の所在は明確に把握しており、予選に向けたアプローチそのものを変える必要はないとも考えている。
ヴィルヌーヴ・シケインで発生したこのクラッシュにより、マシンは一時宙を舞い、全損に近いダメージを負ったが、幸い角田に怪我はなく、決勝ではピットレーンからスタート。バーチャル・セーフティーカー(VSC)の導入も追い風となり、10位入賞を果たした。
第8戦モナコGPの開幕を翌日に控えたパドックで角田は、予選でのアプローチ自体はレーシング・ブルズ時代から特に変えていないとし、イモラでのクラッシュは、VCARBと比べてセットアップ変更後の挙動変化が大きいRB21の特性を読み違えたことが原因だったと説明した。
「正直なところ、予選でのアプローチは、今回が初めてだったわけじゃないです。でも、気づいたらああいう形になってしまって」と角田は振り返る。
「ここ数年、同じアプローチで予選に臨んできましたが、VCARBでは1周でクラッシュしたことはなかったので、自分がこのクルマをどれだけ理解できていないのか、改めて思い知らされました」
「だからといってアプローチを変えるつもりはありませんが、セットアップを変更した際には、より慎重に進める必要があると感じました。このクルマは、以前のVCARB時代と比べてセットアップ変更による反応がかなり大きいです」
Courtesy Of Red Bull Content Pool
ボートでパドック入りする角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年5月22日(木) F1モナコGPプレビュー(モンテカルロ市街地コース)
一方で、チームメイトのマックス・フェルスタッペンはイモラでポールポジション争いを演じ、決勝ではマクラーレン勢を突き放して優勝を飾った。角田と対照的な結果となった背景には複数の要因があるが、その一つとしてマシンの仕様の違いが挙げられる。
角田はイモラで仕様が異なっていたことを認め、「(モナコでも)同じ仕様にはならないと思います。正直、この先の数戦もそうなるとはあまり期待していません」と明かしつつも、「自分のベストを尽くすだけです」と語り、与えられた条件の中で最善を尽くす姿勢を見せた。
仕様差というハンデを抱えながらも、角田は自らの成長と結果で自身の存在意義を示そうとしている。
「いずれにせよ、どこに正確な限界があるのかなど、まだクルマを完全には理解できておらず、イモラの予選では改めて、まだ学ばなきゃいけないことがたくさんあると気付かされました」と角田は語る。
「セットアップを変えるたびに、想像以上にクルマの挙動が変わるので、まずはそういった部分をしっかり掘り下げて、集中的に取り組んでいきたいと思います」
一般にクラッシュは、マシンに対するドライバーの自信を揺るがす要因となり得る。特にモンテカルロ市街地コースのような“ドライバーズサーキット”では、その影響が顕著に表れる。限界との距離感が勝負を左右するこの特異な舞台では、チームも純粋な性能より「扱いやすさ」に重きを置いたセットアップに注力する。
それでも角田は、「このサーキットは大好きです。ここ数年、特に去年はいい結果も出せたので、自信はあります」と前向きだ。
「ただ、今年はチームが違いますし、当然ながら以前と比べてクルマの挙動も少し違う部分があると思うので、例年以上に慎重にアプローチしなければならないかもしれません」
「とは言え、モナコでFP1からいきなり100%全開で走るドライバーはいませんし、僕としては自分自身に集中して、FP1から徐々に積み上げていき、予選で全てをまとめられるように頑張ります」