日米関税合意で世界の市場に楽観ムード、トランプ氏が「譲歩」の見方

世界の投資家は過去数カ月にわたって不確実性に見舞われてきた後、ようやく自信を取り戻しつつある。トランプ米大統領が貿易協定を締結し始めたことが背景にある。

  米国の対日関税合意が今月初めにトランプ氏が通告していたよりも低い税率にとどまったことを受けて、世界の株式市場は記録的な高値を更新。リスクに敏感な通貨が上昇し、債券は下落した。全体として、長引く交渉に終わりが見え始めたことで、貿易に関する最悪の懸念は過ぎ去ったとの楽観がさらに強まるとみられている。

  主要な貿易相手国である日本との合意は、関税を巡る不確実性の解消に向けた大きな一歩となる可能性がある。

  ラボバンクの外国為替戦略責任者、ジェーン・フォーリー氏は「全体的に今回の合意は、年初に見られた米国の景気後退やインフレを巡る懸念が市場で後退している動きを正当化する。リスクテーク意欲を支えるはずだ」と指摘。「欧州の貿易交渉担当者に対する圧力は強まるが、期限前にまだ何らかの成果を引き出せるとの期待も高まる」と述べた。

  トランプ大統領は、日本からの輸入品に一律で課す関税率を15%とすることで合意した。これには対日貿易赤字の最大要因である自動車も含まれる。別途締結されたフィリピンとの協定では関税率は19%で、先に結ばれたインドネシアと同水準。ベトナムの基準である20%を1ポイント下回った。東南アジア諸国の多くが同様の関税水準となる可能性がうかがえる。

  実効関税率は年初よりも依然として高い水準にあるものの、これまで示唆されていた厳しい水準を下回る。

  今回の合意が欧州での協定実現に道を開くとの期待から、23日の欧州株は上昇。ストックス欧州600指数は一時1.2%高と、1カ月ぶりの大幅な上げ。ポルシェやフォルクスワーゲン、ステランティスなどの自動車メーカーがけん引した。

  米国市場へのエクスポージャーが大きい医薬品や建設といった他業種の株価も堅調。米10年国債利回りは6営業日ぶりに上昇した。

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  IG証券のマーケットアナリスト、ファビアン・イップ氏は日本との合意について、現在進行している欧州との通商交渉にとっての先例になる可能性があると予想。欧州や中国との今後の展開を巡り、世界の市場に一定の楽観をもたらすとの見方を示した。

  「トランプ氏はベトナムやインドネシア、今回の日本など、いくつかの主要な貿易相手国に対して一定の譲歩をしているように見受けられる」とイップ氏。「従って、今回の合意は世界の市場にとってかなり有意なものになるだろう」と続けた。

  ドイツ銀行のジム・リード氏は「こうしたより前向きな関税のニュースが全体として、8月1日の関税大幅引き上げに対する投資家懸念の緩和に大きく寄与した」と顧客向けリポートで指摘。「しかしもちろん、欧州連合(EU)に対する30%、カナダへの35%、ブラジルの50%など複数の国・地域に対する高関税の脅威はまだ残っている」と警鐘も鳴らした。

原題:The More Deals Trump Gets, The More Confidence Markets Gain (1)(抜粋)

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