中国が新たな措置を連発 東シナ海・西太平洋で対日圧力行使か #エキスパートトピ
中国で日本に関連すると見られる新たな措置や世論工作が進んでいる。東シナ海や西太平洋で今後、大きな動きが起きる可能性があり、警戒が必要である。
中国の習近平政権は昨年11月以降、高市早苗政権を「新型軍国主義」と批判してきた。しかし政治的にはまだ明確な勝利が得られていない。来年秋の党大会での政権継続を確かにするには、国民を説得できるだけの成果が欲しいところである。そこに5月末、日比両国が海洋境界画定の交渉入りを発表した。中国は日本への圧力拡大を正当化する好機到来とばかり、今月に入って一連の措置を連発している。
ココがポイント
中国は7月2日、日比の「国際法違反」を糾弾する文書を公表。4日、海警局が台湾東側で「常態化した法執行パトロール」を表明出典:益尾知佐子 2026/7/5(日)
習近平は「空席だった軍規律検査委員会書記と空軍司令員を任命」「来年の党大会まで(人事をめぐる)軍内部の競争が激しく展開」出典:中央日報日本語版 2026/7/6(月)
中露が合同軍事演習実施へ…太平洋で「連合巡航」も、昨年の演習では「第三国を標的にしたものではない」と説明、今年は言及なし出典:産経新聞:産経ニュース 2026/7/5(日)
「尖閣諸島周辺での日本の継続的な挑発や装備拡張は......日本の軍国主義的傾向の復活と呼応しあい悪循環を形成している」出典:Global Times(中国・環球時報) 2026/7/5(日)
エキスパートの補足・見解
中国は日比合意で中国の権益が損なわれたとして、6月にも台湾の東方海域(中国では「以東海域」)で海警・交通運輸部・自然資源部の多部門連携行動をとっていた。今月に入り、この動きが次のように加速している。
7月1日 習近平が中国共産党建党105周年で記念スピーチ。「勇気をもって歴史的使命を担い、常に戦略的主導権を握り続けよ」と言及。その後、国内ではスピーチの学習キャンペーン。
2日 中国が日比の「国際法違反」を糾弾する文書を公表。
3日 習近平が新たに上将2名を任命。2名は実質的に、次の党大会で中央軍事委員への昇格を想定した試験採用期間に入った。
4日 中国海警が台湾以東海域で「常態化した法執行パトロール」の実施を発表。太平洋への出口確保か。
5日 中ロが共同で軍事演習と海上合同パトロールを発表。中国の「環球時報」などが日本を批判・嘲笑する記事を次々と掲載。(なお、上記記事には曲解が多く、例えば海上保安庁が3-40ミリ砲を装備したのは新型軍国主義の表れとするが、中国海警船には76ミリ砲が搭載されている。)今後、海上保安庁に「懲罰」を与えるための世論工作か。
米中関係が一時休戦状態にある今、日本には高度な警戒が不可欠である。
専門は現代中国の対外政策、国際関係論。東京大学総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。小倉高校在学中にアメリカに、東京大学教養学部在学中に中国に交換留学してサバイバル力を磨く。日本国際問題研究所研究員、エズラ・F・ヴォーゲル教授研究助手、早稲田大学講師などを経て現職。ハーバード大学イェンチン研究所協働研究学者、中国社会科学院・外交学院訪問学者などを歴任。単著に『中国の行動原理──国内潮流が決める国際関係』、『中国政治外交の転換点──改革開放と「独立自主の対外政策」』、共著に『中国外交史』、訳書にエズラ・F・ヴォーゲル『日中関係史』など。好きなものは国境。