国立が大歓声に包まれた90+3分、鬼木監督の粋な計らい…鹿島DF関川郁万が左膝負傷から10か月ぶり復帰「全てが報われた瞬間だなと」

10か月ぶり復帰のDF関川郁万

[3.18 J1百年構想リーグ第6節 町田 0-3 鹿島 MUFG]

 鹿島アントラーズの背番号5がピッチ脇に立った瞬間、深紅に染まった国立競技場のアウェーゴール裏から盛大なチャントが巻き起こった。「10か月、苦しい時とか辛い時、いろんなことがあったけど、全てが報われた瞬間だなと本当に思いました」。試合後、報道陣の前に立ったDF関川郁万は、感慨を噛み締めながらゆっくりと言葉を紡いだ。

 関川は主力を務めていたシーズン序盤の昨年5月3日、J1第14節の町田戦で左膝複合靱帯損傷という重傷を負い、それから長いリハビリ生活を過ごしてきた。復帰戦となったのは奇しくも10か月前と同じ町田戦。実は今季、メルスタでのホーム町田戦も同じ5月3日に第14節として組まれていたというなか、一足早い国立競技場で運命的なカムバックとなった。 「今年の日程が出た時から5月3日に去年と同じようなシチュエーションで試合ができるというのを見た瞬間から運命だなと思いましたし、今日の町田戦で復帰できたのもまた運命みたいな感じではありました。自分が出られるような状況を作ってくれた選手、監督に感謝したいなと思います」(関川)

 関川が投入されたのはFWチャヴリッチのダメ押しゴールが決まり、3-0とした直後の後半アディショナルタイム3分。敵地国立をまるでホームのような雰囲気に包み込んだ鹿島サポーターの前で、長いリハビリを乗り越えてきた25歳の復帰戦を用意するという鬼木達監督の粋な計らいだった。

「郁万に関しては復帰してからもなかなか出場のチャンスがなかったですけど、いつかどこかで必ず使いたいという思いがあった。できればホームゲームでと思っていたけど、それでもこういう素晴らしい舞台をサポーターが用意してくれましたたし、選手たちがそういう環境を作ってくれたので自分も自信を持って出すことができました」(鬼木監督)  そう関川の起用を振り返った鬼木監督は「自分もケガが多かった選手でした」と切り出しつつ、厳しいケガを乗り越える選手の心境を慮った。 「(復帰の)嬉しさと、苦しい中で復帰してきたという思いがあると思う。選手たちは復帰した後にゲームに絡めない悔しさというものが難しい中で、それは(安西)幸輝も一緒ですけど、そういう思いで今も過ごしていると思う。チームみんなでサポートし合いながら、競争し合いながらやっていければなと思っている。非常にサポーターに囲まれた、良い企画だったかなと思います」(鬼木監督)

 指揮官の労いのメッセージはピッチの上でも表現されていた。関川を投入する際、鬼木監督は両手を全開に使ってアウェーサポーターを煽り、チャントを先導。その結果、得点シーンにも勝るとも劣らない大声量が響く形となったが、その思いはMF三竿健斗を通じて関川の耳にも届いていたという。

「久々の試合すぎて、今までも本当に何回かしか途中出場がなかったのでどういう入り方をしたら良いのかわからないという緊張もありながら、後から健斗くんから『鬼さんがチャントを煽ってくれていたよ』というのを聞いて、そこでもう一つボルテージが上がったような感じがして、すごく嬉しかったですね」(関川)  長い離脱の中では「本当に心が折れそうになった時もあった」という関川。その時期の支えとなっていたのはサポーターの声の支えだった。 「優勝が決まった時もそうでしたけど、幸輝くんと師岡と去年、長期離脱をして、優勝が決まった時に3人のチャントを歌ってくれたりして……。心が折れそうになる時もありましたし、でも10月、11月、12月とホームゲームが1試合ずつしかなかった時、その一つの試合を自分はすごく楽しみにしていましたし、自分がもっと恩返しできるように鹿島でプレーしていけたらなと思っていました」  最高の雰囲気の中で迎えた完全復活への第一歩。しばらくは再発防止へ細心の注意を払いながら、チームの助けになっていく構えだ。 「やっぱりサッカーにはスタメン、ベンチ、ベンチ外、いろんな立場がありますし、まだ100%で前のプレーをできるかと言われたら、そこまで自信を持ってできるとは言えない。自分の置かれた立場でスタメンの選手を気持ちよく送り出すとか、練習からバチバチやり合うとか、自分が置かれた立場でやっていきたいなと思います」 (取材・文 竹内達也)●Jリーグ百年構想リーグ特集▶サッカーの大人気ポッドキャスト!ヤーレンズのボケサカは毎週金曜配信

関連記事: