「生き残っていくために」 FA選手&助っ人加入で危機感…23歳が認める"現在地"と序列

■ 日本ハム 2ー1 西武 (28日・ベルーナドーム)

 西武の23歳の期待株が、意外な適性を実証している。育成出身でプロ6年目を迎えた長谷川信哉外野手である。28日に本拠地ベルーナドームで行われた日本ハム戦には「2番・一塁」でスタメン出場。初回に左翼席中段へ今季1号ソロを放った。

 初回の第1打席では、日本ハム先発の左腕・細野晴希投手が初球に外角高めへ投じた148キロのストレートを一閃。この長打力が魅力の1つであることは間違いない。

 一方、想定以上の適性を見せているのが、今季から就くようになった一塁の守備だ。1-1の同点で迎えた7回、2死一、二塁の場面で、日本ハム・田宮裕涼捕手が放った一、二塁間のゴロを逆シングルで好捕。一塁ベースカバーの渡邉勇太朗投手へのトスもタイミングばっちりで、ピンチを脱した。いまや、一塁手としての守備力はチーム随一との評価が定着しつつあり、西口文也監督は「守備ではずっといいプレーをしてくれている」とうなずく。とても“ぶっつけ本番”で始めたようには見えない。

 長谷川はプロ入り当初から底知れない潜在能力をうかがわせ、期待されてきた。2020年育成ドラフト2位で福井・敦賀気比高から西武入り。当初は内野登録で二塁、遊撃、三塁を守っていた。2年目の7月には早くも支配下登録を勝ち取り、1軍デビューも果たした。

 一昨年からは、俊足や強肩を活かすため外野登録に変更。そして昨季は自己最多の132試合に出場し、初めて規定打席数もクリアした。ただ、打率はパ・リーグで規定打席以上の22選手中、最下位の.225。6本塁打36打点9盗塁でレギュラーの座を固めるには至らず。今季はDeNAからFAで桑原将志外野手、新外国人のアレクサンダー・カナリオ外野手、林安可外野手らが加入し、厳しい立場に追い込まれていた。

「ネビンに代走が出た時に守備固めができればチームの役に立てる」

 ところが、チームの4番で昨季一塁手としてゴールデン・グラブ賞を受賞したタイラー・ネビン内野手が、2月の宮崎・キャンプ中に背中を痛めた。いったん復帰を果たすも、オープン戦中に左脇腹痛を発症し、開幕1軍が絶望的に。キャンプ中に黒田哲史内野守備走塁コーチから「(一塁守備も)あるかもしれない」とほのめかされていた長谷川は3月7日、ヤクルトとのオープン戦の途中から、プロ入り後ほとんど就いたことのなかった一塁の守備に“ぶっつけ”で回り、そこから本格的に練習を始めたのだった。

 3月27日の今季開幕戦には「2番・一塁」でスタメン出場。28日現在、一塁手としてはチーム最多の12試合で先発している(他に中堅で3試合、右翼で2試合スタメン)。

 そんな経緯でも抜群の守備力を発揮できるのは、もともとセンスがあったからだろうが、地道な努力も継続している。一塁手にとって特に難しいのは、他の内野手からの送球が微妙なショートバウンドになった場合、いかにミットで上手くすくい上げるかだが、長谷川はナイターの試合前、“早出”でグラウンドに現れ、黒田コーチが三遊間付近からノックバットで放つショートバウンドの打球を、送球に見立てて捕る練習を特訓を繰り返している。

 もっとも、戦線離脱中のネビンが今月24日の2軍戦で一塁手として実戦復帰しており、1軍合流も近い。そうなれば、長谷川の一塁手としての出場機会は減少せざるをえない。それでも本人は「(一塁守備は)捕るだけなら大丈夫かなと思っています。確かに序列的にはネビンが上になると思いますが、ネビンに代走が出た時に守備固めでファーストを守れれば、チームの役に立てる。自分が1軍で生き残っていくためにも、そういう術が必要かなと思います」と意欲的だ。

 今季、外野の競争が激化していることも「いい見本が増えている」と前向きにとらえている。特に実績のある桑原を「ライナー性の打球が多い。自分も、理想はフェンスオーバーだと思っていますが、レフト線や左中間、右中間に打って、長打力やOPS(出塁率+長打率)を上げていきたいです」と見習う。

 当面はネビン復帰後も、今月22日に桑原が左ふくらはぎの肉離れで離脱した外野の一角で、スタメンの座を維持したいところだ。“定位置”を求める期待株の闘いはまだまだ続く。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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