全固体電池は依然として“先物”か コスト10倍の壁を前に、中国メーカーが“賭けに出る”背景
このところ中国電池メーカーや自動車メーカーが全固体電池の開発状況を相次いで発表したが、量産の時間軸は後退傾向にある。 ・欣旺達電子(サンオーダ)子会社の欣旺達動力科技(Sunwoda EVB)は2025年10月、全固体電池「欣・碧霄」を発表した。エネルギー密度は一般的な三元電池が250~300Wh/kgなのに対し、400Wh/kgに達する。年内に0.2GWhのパイロット製造ラインを設ける計画だが、経営陣は「最短でも、小ロットの生産が可能になるのは2030年後半」と慎重な見方を示した。 ・自動車大手の奇瑞汽車(Chery Automobile)は自社で開発した全固体電池モジュール「犀牛S」を発表した。電池セルのエネルギー密度は600Wh/kg、航続距離は1300kmとしている。しかし当初2026年に予定していた車両への搭載は延期され、27年に実装検証することになった。 業界大手の見方はもっとシビアだ。車載電池世界最大手の寧徳時代(CATL)は、2027年に実現できるのは小規模量産にとどまり、本格的な量産は2030年以降になると繰り返し強調してきた。曾毓群会長は過去にも、全固体電池の開発進行度を技術成熟度レベル(TRL)で示すなら、9段階中の4段階にしか至っていないと語っている。欣旺達電子も、2027年に実用化という見通しはあまりに楽観的であり、小規模生産が可能になるのは2030年以降と見ている。
全固体電池の量産はまだ先のこととはいえ、改めて注目度が高まったのには理由がある。 下克上のチャンス:準大手の電池メーカーが、新たな技術アプローチを足掛かりに逆転を狙っている。全固体電池はまったく新しい技術体系のため、産業構造を再編し、CATLを中心とする業界の構図を変えることが期待できる。 自動車メーカーの自立: 電池内製化を加速させ、サプライヤーへの過度な依存を脱却する狙いがある。 ユーザーの期待:相次ぐ電気自動車(EV)の発火事故を背景に、安全性に対する消費者の懸念が大きくなっており、より安全な電池を望む声が高まっている。 総じて言えば、材料工学や製造プロセスの課題、そしてコスト構造を冷静に分析する限り、全固体電池はいまだ「未来」の技術である。現在の熱狂は、産業界のパワーバランスを再構築したい関係者の思惑による部分が大きく、市場のニーズを即座に満たす段階には至っていない。 (翻訳・36Kr Japan編集部)