ドイツ軍の再軍備、2026年夏までの1年半で約17.7兆円の装備調達を承認

ドイツは欧州最強の通常軍を構築するため、2041年までに4,002億ユーロ=約73兆円を防衛装備品調達へ投じる予定で、2025年は829.8億ユーロ=15.3兆円の装備調達を承認し、2026年も議会の夏季休会前までに判明しているだけで推定130億ユーロ=約2.4兆円の装備調達が承認された。

参考:Haushaltsausschuss bewilligt 16 Beschaffungsgroßprojekte der Bundeswehr 参考:Milliarden für die Ukraine und milde Töne zum Abschluss

2025年2月の選挙で勝利したメルツ氏は「米国からの独立達成が優先事項になる」「米国が信頼できる同盟国でなくなる最悪のシナリオに備えなければならない」と訴え、キリスト教民主・社会同盟と社会民主党は国防・インフラ整備のため「債務制限からの国防支出除外」「総額5,000億ユーロの特別インフラ基金設立」で合意し、ドイツ連邦議会も憲法改正を可決して歴史的規模の財政パッケージが成立した。

出典:Dirk Vorderstraße/CC BY 2.0

正式に首相に就任したメルツ氏は2025年5月の議会演説で「連邦政府はドイツ軍が欧州最強の通常軍になるため資金を全て供給する。これは欧州で最も人口が多く、経済的に最も強力なドイツにとって相応しい措置だ。我々のパートナーらも強力なドイツに期待し、実際にこれを要求してきている」「我々の目標は武力を行使する必要がないほど強いドイツや欧州を実現することだ」と語り、ドイツは非常に厳しい財政規律を緩和するため憲法改正(GDP比1.0%を超える国防支出を債務制限外として扱う例外規定)によって、事実上「トリプルA格付けのドイツ国債で市場から資金を無制限に調達できる」と言われている。

市場から資金を無制限に調達できるという表現は「厳しい財政規律を守ってきたお陰で債務対GDP比率は60%前半台」「そのため国防投資の資金を借入で調達できる財政的余地が他の欧州諸国と比べて圧倒的に高い」という意味で、本当に市場から資金を無制限に調達できる訳ではないが、こうした財政的裏付けを背景に4,002億ユーロ=約73兆円を2041年までに防衛装備品調達へ投じる予定だ。

出典:KNDS Deutschland

ドイツでは2,500万ユーロを越える装備品の調達契約については議会の予算委員会から事前承認を得る必要があり、2025年に計103件の調達提案が承認され、その総額は829.8億ユーロ=15.3兆円に達したが、今年も議会は夏季休会前までに計60件の調達提案を承認し、そのうち金額が判明している承認された提案分のみでも推定130億ユーロ=約2.4兆円になるが、この数字は60件の合計ではないのであくまで下限値でしかない。

2025年から2026年7月に承認された総額は推定960億ユーロ=約17.7兆円となるが、これでも予定されている総投資から見れば1/4に過ぎず、日本の新規装備品等の購入費は2025年度が推定1.8兆円、2026年度が推定2兆円なので、大雑把に比較してもドイツの再軍備に向けた本気さが浮き彫りになる数字と言える。

出典:Президент України

ちなみにドイツは夏季休会前までの推定130億ユーロとは別に、2026年分のウクライナ支援として大砲、ドローン、装甲車両などを供給するための115億ユーロ=2.1兆円を予算に計上済みで、ドイツは日本の新規装備品等の購入費とほぼ同額のウクライナ支援を行いながら、ドイツ軍の再軍備に向けた防衛装備品調達を進めており、厳しい財政規律を緩和したドイツの資金調達能力は本当に凄まじく、この資金の大半が流れ込むドイツや欧州の防衛産業界は空前の好景気に湧いている。

そして、これだけの借入を行ってもドイツの債務対GDP比率は80%を超えない可能性が高く、だからこそ「他の欧州諸国と比べて異次元の資金調達能力だ」と言われるのだろう。

関連記事:ドイツが通常弾薬の生産能力で米国を上回る、米国の砲弾増産は破綻 関連記事:ドイツは2039年までに欧州最強の通常軍を構築、即応体制は46万人増強 関連記事:独議会が新たな防衛装備調達契約を承認、1年間の承認額が15兆円に到達 関連記事:ドイツの防衛装備調達が本格化、年内にEagle Vを3,000輌発注する見込み 関連記事:ドイツの防衛装備調達が本格化、年内にRCH-155を200輌以上発注する見込み 関連記事:ドローン迎撃に対応したAPS搭載のLeopard2A8、ドイツ軍に初納入 関連記事:欧州最強を目指すドイツ、ボクサー5,000輌とPatria3,500輌の調達を準備中 関連記事:ドイツは2026年度に約8.2兆円、2041年までに約69兆円を防衛装備品調達に投資 関連記事:メルツ政権が調達促進法を承認、ドイツ軍は資金に加え調達ルールの柔軟性も確保 関連記事:メルツ新首相、ドイツ軍を欧州最強にするため必要な資金を全て出す

※アイキャッチ画像の出典:Bundeswehr

関連記事: