米司法長官、トランプ氏とロシアの関係めぐる大陪審審理を命令

画像提供, Reuters

画像説明, ボンディ司法長官とトランプ大統領(今年6月、ホワイトハウス)

アメリカのパム・ボンディ司法長官は4日、ロシアによる米大統領選介入をめぐる疑惑について、司法手続きに着手するよう、検察に命じた。ドナルド・トランプ米大統領は、自分に有利になるようロシアが選挙介入したとされる疑惑について、政敵による中傷工作だとかねて主張していた。

BBCがアメリカで提携するCBSニュースによると、ボンディ長官は連邦検察官に対し、起訴の可能性を探るよう指示したという。ただし、どのような罪状が想定されているのか、誰が起訴される可能性があるのかは、明らかになっていない。

タルシ・ギャバード米国家情報長官は7月、民主党のバラク・オバマ元大統領とその国家安全保障チームが「数年にわたるクーデター」をトランプ氏に対して仕掛けたと主張し、その内容は虚偽だと民主党が断定した機密解除済みの報告書を公表した。

ギャバード氏は、2016年大統領選でのロシアによる干渉に関する情報が、オバマ政権によって政治利用され、トランプ氏をロシアと不当に結びつけるために使われたと主張。これを受けて、トランプ氏はオバマ氏が「反逆罪」を犯したと非難していた。

トランプ氏らによるこうした主張について、オバマ氏の報道官は「荒唐無稽」だと反応していた。

しかし、ギャバード長官は7月、この問題を司法省に付託し、起訴の可能性を検討するよう求めた。CBSによると、この要請を受けたボンディ長官は4日、証拠を大陪審に提示するよう匿名の連邦検察官に指示したという。

大陪審とは、一般市民から選ばれた陪審員が、犯罪について起訴できるだけの証拠があるかどうかを判断する制度。

どの元政府高官が、大陪審の審理対象となるのかは明らかにされていない。

両氏はかねて不正行為を否定し、逆に、トランプ氏が司法制度をゆがめていると非難している。

トランプ氏の第1期目、政権の司法省は、大統領が2016年大統領選の結果を自分に有利にするためロシアと共謀したかどうかを捜査し続けた。

2016年大統領選に関する別の司法省捜査の付録が7月末に機密解除されたことを受け、ロシア疑惑に関する議論が再燃した。

ジョン・ダーラム特別検察官が率いた捜査の報告付録は29ページにわたるもので、2016年3月に米情報機関の情報源が作成したメモを引用している。そこには、同年の民主党大統領候補だったヒラリー・クリントン氏が、トランプ氏をロシアの工作員として中傷する計画を承認したと記されていた。

ダーラム検察官はさらに、ロシア情報機関と関係のあるハッカーが、リベラル系資金提供者ジョージ・ソロス氏の非営利団体で働く人物から入手したかもしれない、「本物に見える、もしくは本物だと主張する」メールを報告書で引用している。

そのうちの1通は、ソロス氏の慈善団体「オープン・ソサエティ財団」のレナード・ベナルド上級副会長が送信したとされるもので、クリントン氏の外交政策顧問ジュリアナ・スミス氏に言及しているとされる。

2016年7月26日付のそのメールには、「ジュリーは、プーチンとトランプを悪者に仕立てるための長期戦になると言っている。今は党大会後の支持率上昇に役立つ。その後は、FBIがさらに火に油を注ぐことになる」と書かれている。

政治的な中傷活動そのものは違法ではない。しかし、トランプ氏の支持者らは、このメールがもし本物ならば、連邦捜査官がその計画に関与していた可能性を示すものだと主張している。ただし、ダーラム特別検察官は、FBIによる陰謀の証拠は見つからなかったと結論した。

付録によると、ベナルド氏は「自分が記憶している限りでは」そのメールを自分が書いたとは思えないと、ダーラム検察官に話した。ただし、文面の一部は自分が使いそうな言葉遣いだとも述べたという。

ダーラム検察官は、ジュリアナ・スミス氏からも事情聴取していた。スミス氏は、そのようなメールをベナルド氏から受け取った記憶はないと述べたという。

ダーラム氏は付録の中で、これらのメールが本物かどうか、あるいはロシアのスパイが改ざんしたかどうか、判断を示していない。

2023年に公表されたダーラム氏の本報告書(全306ページ)は、トランプ陣営に対するFBIの最初の捜査について、「分析的な緻密(ちみつ)性」を欠き、「未分析かつ裏付けのない情報」に依存していたと批判している。

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