内部告発した人の悲惨な末路。仕事を干され勤務時間は「1日37分」、退職金9割返納…勇気ある通報者に下る“会社の報復”(SPA!)
外資系製薬会社の日本法人・アレクシオンファーマの小林まる氏(仮名・女性・60歳)が不正に気づいたのは、’13年。同社に中途入社した直後のことだった。 「前任者に同行した医療機関で耳を疑いました。自社の難病治療薬が、別の疾患にも効果があるように営業トークをしていたんです。患者の命に関わるのに……許せなかった」 会社は「適応外」の患者にも治療薬・ソリリスを使うよう、医師に不適切な宣伝をしていたのだ。その結果、多くの患者が命を落とした。小林氏はすぐに会社(日本法人)に内部通報したが、不正は止まらず、米国親会社に通報する。第三者機関の弁護士による調査が始まり、事態は好転するかに見えた。 「私も聴取されましたが、不適切な宣伝は調査の対象外。それどころか、私のあら探しばかりしてきたのです。聴取は2年も続き、弁護士事務所に呼び出されたときは罪人扱いで何時間も缶詰めにされて。不正についていくら説明しても聞く耳を持たず、絶望しました。帰り道の駅のホームで、飛び込みそうになる自分を抑えるのに必死でした」 内部通報は不正を止めるどころか、報復を招いた。’17年、小林氏はついに厚労省への公益通報に踏み切る。職員との最後の面談でのことだ。 「『行政が動けば、不利益を被る可能性がある』と言われたけど、公益通報者保護法があるので心配はしなかった」 ’18年、変化が訪れる。業界紙が不正を報じ、厚労省は会社を行政指導。’19年、会社は「使用上の注意」を改訂し、ようやく不正が止まった。 ところがその直後、小林氏に災難が降りかかる。 「配置転換で生きがいだった仕事を取り上げられて……。手当がなくなり、収入も減った。その後、管理職から一般職に格下げされ、給料も減額されました」 「配置転換は報復であり無効」として、会社を訴えた。 「驚くことに、会社の代理人は、私を聴取した“第三者機関”のはずの大手弁護士事務所でした。訴えも『報復と認めるに足る十分な証拠がない』と退けられました。でも、被害者が通報と報復の因果関係を立証するのは、“悪魔の証明”でほぼ不可能。しかも、会社はこの裁判中に1人だけの部署を作り、私に在宅勤務を命じた。仕事は外注先からのメールを転送するだけになり、一日あたりの平均勤務時間はわずか37分……。精神的にキツかったですね」 ’24年には“仕事干し”はパワハラだと再び会社を訴えるも敗訴し、控訴中だが“仕事干し”は続いている。 「それでも会社を辞めないのは、自分の行動は正しいと信じているから。ただ、厚労省職員の言葉は痛感してます。まさか保護法がこれほど守ってくれないとは……。でも、それを知らないでよかった。知っていたら、通報を躊躇していたかもしれない」 12月施行の改正公益通報者保護法では、①通報と報復の因果関係の立証責任は、会社側が負う。②通報を理由とした解雇、懲戒処分に刑事罰が科されるなど、通報者保護を大幅に強化。だが、小林氏が受けたような配置転換や嫌がらせは、野放しのままだ。 アレクシオンファーマに「通報を理由とした配置転換なのか」を問うと、期限までに回答はなかった。