読み書きが苦手だった少年が語る、成長マインドセット(TED)

「何をやってもダメだ」と思ってしまう日ってありませんか?

そんな人におすすめのTEDトークを紹介します。

タイトルは、The Mindset of a Champion(チャンピオンのマインドセット)

小学5年生の、Carson Byblow (カーソン・バイブロー)のトークです。

チャンピオンのマインドセットは、成長マインドセット(Growth Mindset)であり、能力や知識は努力と経験によって伸ばせる考え方です。

チャンピオンのマインドセット

収録は2018年3月。6分48秒。英語の字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDトークの説明はこちらをどうぞ⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

とても読むことが苦手だった少年とは思えない素晴らしいプレゼンですね。

努力の人、マイケル・ジョーダン

マイケル・ジョーダンはこう言いました。

「9,000本以上のシュートを外し、約300試合に敗れ、勝利を決める最後のシュートを26回任されて失敗した。

何度も何度も何度も失敗した。だから私は成功したのだ。」

マイケル・ジョーダンは世界で最も有名なバスケットボール選手のひとりですが、最初からスターだったわけではありません。

背が低いしあまりうまくなかったので、高校のバスケットボールチームには選ばれませんでした。

そこであきらめることもできたはずですが、彼は上達するために続けるというマインドセット(考え方)を持っていました。

ジョーダンはほとんどの人がまだ寝ている時間から毎日練習をしていたのです。

その結果、翌年にはチームに選ばれただけでなく、史上最高のプレイヤー、真のチャンピオンへと成長しました。

ここで浮かんでくる疑問は、「僕たちもチャンピオンのマインドセットを身につけることができるのだろうか?」です。

2つあるマインドセット

マインドセットは、僕たちの考え方を表す言葉です。

マインドセットには2つのタイプがあります。ひとつは「成長マインドセット」、もうひとつは「固定マインドセット」です。

成長マインドセットは、「自分は上達できる」「もっと良くなれる」と信じている考え方です。

このようなマインドセットを持つ人は、困難を恐れず、状況が難しくなってもあきらめずに続けます。努力を通して学ぶことを知っていて、批判からも学びます。さらに、うまくいっている人に対して嫉妬を感じることはなく、むしろ刺激を受けます。

マイケル・ジョーダンもそのひとりですが、もう一人、成長マインドセットを持つ人物として、俳優のドウェイン・ジョンソン(ザ・ロック)がいます。

彼はキャリアの初期にカナダのフットボールリーグから外されました。そこで辞めることもできましたが、その後大変な努力をし、多くの困難に立ち向かい、今では超がつくほど有名な映画スターになっています。僕のお気に入りのひとりです。

求められるのは成長マインドセットの人

コーチやプロのスカウトが選手を見るとき、単に技術のある人を探しているわけではない、ということを知っていましたか?

彼らが求めているのは、「学ぶ意欲がある人」「指導を受け入れられる人」、そして「練習で100%努力をする人」です。つまり、成長マインドセットを持った人を求めています。

逆に、すでに自分は十分うまいと思い込み、学ぶ必要はない、指導を受け入れようとしない人は、望まれていません。こうした人たちは固定マインドセットを持っているとされます。

固定マインドセットは、成長マインドセットとは真逆の考え方です。

自分は生まれつき得意だ、もしくは、逆に不得意だと思い込み、学ぼうとしません。

挑戦を恐れ、すぐにあきらめたり、自分を守る態度をとったりします。

フィードバックを受けると、それを批判だと感じ、うまくやっている人に対しては脅威を感じてしまいます。

読むことが苦手だった

僕がどちらのマインドセットを持っていると思いますか?

それをお話しするために、ひとつエピソードを紹介します。

実は、僕にとって読むことは、ずっと難しいことでした。正直言って今でも苦手だと思います。

幼稚園から小学4年生まで、読解力はいつも学年平均より少し下でした。

だから、毎晩、上達するために両親に音読を聞いてもらっていました。

でもそれは、僕にとって一日の中で一番イヤな時間でした。

読めばたくさん間違えるんです。

単語を読み間違えたり、そこにない言葉を勝手に入れたり、実際にある単語を飛ばして読んでしまったり、句読点を無視したり。

でも、そんなときにママやパパが直そうとすると、僕は怒りました。

「違うよ!」と反論したり、とても感情的になったりしました。

できないとすごく感情的になった

これは、友だちや先生との間でも、ほかの教科や活動でも同じでした。

僕は「すべてのことを最初からできるべきだ」と思っていて、できないとすごく落ち込んでいたんです。

先生が教えてくれることも、「すぐに理解できるはずだ」と思い込んでいました。

実際は、学んだり読んだりしていることの中には、簡単じゃないものもあったのに。

うまくできないと、僕は感情的になりました。

頭の中にネガティブな言葉が浮かんできます。

「お前はダメだ」「何もできない」「こんなの簡単なはずだろ」

気づくと、先生や友だちの前で涙が出てきました。

心の中では「いやだ、いやだ、いやだ、お願いだからやめて」と思っていました。

自分の感情をコントロールできなくなっていたんです。

これは、問題のはじまりにすぎません。

僕は感情を抑えられなくなると、人の話を聞かなくなり、考えることもやめてしまいます。

そして、周りの人にとって扱いにくい存在になってしまうんです。

ようやくその場から逃れたあとは、もうぐったりして、とても疲れました。

これは健全な状態ではないし、僕がなりたい自分でもありません。

「どうしてこんなふうに感じるんだろう?」「なぜこんなにも感情が強く出てしまうんだろう?」

そんな疑問を持つようになりました。

そして、今年、小学5年生になって初めて、その答えを自分なりに見つけることができました。

成長マインドセットに変えることにした

僕は成長マインドセットと固定マインドセットという考え方を学びました。

そして今、自分の固定マインドセットを、成長マインドセットに変える方法を学んでいるところです。

つまり、チャンピオンのマインドセットを持つことを目指しているんです。

僕は、人は誰でも両方のマインドセットを持っていると思います。

実際、僕自身がそうです。

例えば、サッカーやバスケットボール、新しい環境への対応、新しい言葉を学ぶことには、僕は成長マインドセットで取り組んでいます。

そして、固定マインドセットを成長マインドセットに変えることもできると思っています。

僕らもチャンピオンのマインドセットを持てるようになるんです。

まあ、マイケル・ジョーダンみたいなチャンピオンにはなれないかもしれないけど、それぞれの人が、自分なりのチャンピオンにはなれると思うんです。

そのためには、ちょっとだけ助けが必要なときもあるかもしれません。

まだできないだけ

僕はお父さんと、キャロル・ドゥエックさんの書いた『マインドセット』という本を読みました。

キャロル・ドゥエックさんは、心理学の教授であり研究者で、成長マインドセットと固定マインドセットという考え方を提唱した人です。

この本を読んで、僕は「固定マインドセットになるのは、自分だけじゃないんだ」とわかりました。

でも、僕が今までで一番役に立ったアドバイスをしてくれたのは、担任の先生とスクールカウンセラーでした。

そのアドバイスは、たった3文字の小さな言葉でした。

それは「yet(まだ)」という言葉です。

先生たちは、いつも文の最後に「yet」をつけなさい、と教えてくれました。

「できない」→「まだできない」

「わからない」→「まだわからない」

この「yet(まだ)」という言葉があるだけで、「ちょっと努力すれば、理解できるんだ」という気持ちになれます。

今でも、固定マインドセットに引っ張られそうになることがあります。

でも、今はなぜ自分がイライラしたり、落ち込んだりするのかわかるようになりました。

時々固定マインドセットにとらわれてしまうなら、変わることができると思ってください。僕がその証拠です。

このスピーチを書くのも、本当に大変でした。でも、毎日、昨日より少しずつうまくできました。

だから、僕は今ここに立って、こう言えるんです。

「僕は勝ちつつある」

なぜなら、今この場所に、皆さんの前で立って話しているからです。

//// 抄訳ここまで ////

成長マインドセットに関するプレゼン

自分の能力を自分で見限ることの恐ろしさ、できると信じることの素晴らしさ(TED) キャロル・ドゥエック自身のプレゼンです。

上手になりたいと思っていることをきっちり上達させる方法(TED)

グリット:成功のカギは、やり抜く力(TED)

信じる力、マインドセットと成功の関係とは?(TED)

マインドセット(ものの見方)を変えて人生の流れを変えよう(TED)

今度こそやるぞ、と思うのにそうできない3つの理由(TED)

ダイエットしないで健康になる方法(TED)~生活習慣を変えよう。

カーソンがお父さんと読んだ Mindset の翻訳版。

あえて成長マインドセットでいこう

人間は現状維持を好むので、挑戦を強いる成長マインドセットより、固定マインドセットになりがちだと思います。

また、幼少期に親や周囲の人が、自分や誰かに、「賢いね」「才能があるね」と言っているのを聞いて育つと、できるかどうかは生まれつきのものだという価値観を持ちます。

実際、私たちは、プロセスよりも、わかりやすい結果に対して、ほめたりけなしたりするものです。

でも、自己成長につながるのは、断然、成長マインドセットの方です。

もし、現状に満足していなかったり、もっとここはこうしたいということがあるなら、成長マインドセットを採用してください。

カーソンのように、「まだ」という言葉をつけてもいいですし、結果ではなくプロセスに目を向けたり、できたことに目を向けたり、新しいことに挑戦するのを楽しんだりするといいでしょう。

心理学者のキャロル・ドゥエックの研究によれば、「能力は努力によって伸ばせる」と信じる人は、挑戦を恐れず、困難に直面しても粘り強く取り組む傾向があります。

成長マインドセットは仕事や学業に役立つだけでなく、困難なことがつきものの人生を生きるうえでも強い味方になってくれます。

挑戦を続けると、新しい学びや経験が増え、成長を実感できるので、より楽しい毎日になりますよ。

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