”ラブホ問題”の小川晶前市長が再選 批判に大きく振れた女性たちが擁護に回った理由
男性部下とラブホテルを利用していたことが発覚し、辞職した前橋市の小川晶前市長(43)が出直し市長選で再選した。カギを握ったのは女性有権者たちだった。 【写真】再選が決まり、笑顔をみせる小川晶氏 * * * 「私は失敗をしてしまって迷惑をかけた。完璧なリーダーではなかったかもしれない。でも、誰よりも失敗することのつらさを知っている。助け合う社会の大切さを知っている。そんなリーダーになれると思っています」 1月11日、前橋市の「けやきウォーク前橋」前の県道。涙ながらに訴える小川氏に、大きな拍手が湧いた。「勝負をかける」(選対幹部)とした選挙戦最終日の街頭集会。男女500人近くが耳を傾け、涙を流す女性の姿もあった。 ■「たたき方がミソジニー」 選挙戦で小川氏の陣営が特に力を入れたのは、女性票対策だった。ラブホテル問題の発覚当初は「批判」に大きく振れた女性票を取り戻すべく、女性の支援者や市議がチームを結成。女性を集めた集会や「許す」を打ち出したビラ作成など、女性を意識した発信を強化した。同時に、「一人で懸命に謝っている姿が見た人の心に響く」として、SNSでは、一人で深々と頭を下げる様子や握手して涙ぐむ表情など「一人」を押し出す戦略も展開した。 問題発覚以降、小川氏周辺では、過去の男性政治家の不倫問題と比べての批判の量の多さから「たたき方がミソジニー(女性への制裁感情)だ」などの不満の声は根強かった。選対本部の女性部長は「日本はまだまだ男性中心の社会。女性はよくやっていれば当たり前、失敗したら女のくせに、とたたかれる。小川さんのことが(心に)響く女性は多くいると思う」と語った。
■年配の女性が「拒否」→「応援」に 陣営の狙いは当たった。女性からの反響は大きく、小川氏も「これまでより女性が真剣に応援してくれる」と話し、選対幹部も「子育て世代など女性からの応援が多い。特に年配の女性は、当初は拒否感が強かったが、ここに来て応援してくれる方が増えた。もう許してあげようよ、と冷静になったのではないか」と手応えを語っていた。 初当選した前回市長選から、子ども・子育て施策を掲げ、就任後は学校給食費の無償化を速やかに実現。女性有権者からは、そうした実績を評価する声も多かった。 1歳の長女のベビーカーを押しながら小川氏と握手した40代の女性は、「(問題を)気にしていないわけじゃないけどそれ以上に市長としてがんばってくれると思う」。小中学生3人の子どもがいる40代の女性も給食費無償化や学校体育館のエアコン設置などを挙げ、「女性目線で子育て世帯の強みになってくれた。続けて欲しい」と話した。 ■小川氏を見ようと県外から 批判から擁護に回った女性たちに加え、選挙中は小川氏を一目見ようと東京や栃木など県外から足を運ぶ人も少なくなかった。小川氏に写真撮影やサインを求める長い列ができるなど注目度は高く、投票率は47%と前回の39%を大きく上回った。 ただ、問題発覚当初から取材をしてきたが、小川氏は市民間の分断や市政停滞など影響の大きさや自身の責任は正面から認めず、自分の主張を繰り返すばかりで、対応の稚拙さが目についた。それが市議会や地元経済界などとの緊張の高まりを招き、今もくすぶっている。 再選を果たした小川氏だが、投票した有権者の半数は他の候補を選んでいる。その結果が示すように今も払拭されていない批判と、内外から集まった大きな関心を信頼につなげられるか。今後、厳しく問われることになる。 (朝日新聞記者・中村真理)
中村真理