「愛国無罪」ならぬ「反基地無罪」の風潮 辺野古転覆2カ月 沖縄八重山日報の仲新城記者
沖縄県名護市辺野古沖で船2隻が転覆し、平和学習中の同志社国際高(京都府)2年の女子生徒ら2人が死亡した事故から2カ月が過ぎた。なぜ抗議活動を巡る安全対策は軽視されてきたのか。沖縄での米軍基地反対運動の実相を長年取材してきた沖縄八重山日報論説主幹、仲新城誠氏に事故の背景などを聞いた。
抗議活動を放置
――抗議船の転覆事故から2カ月となる。沖縄で長年、基地反対運動を取材してきた立場から、今回の事故をどうみているか
辺野古沖で抗議船転覆事故はなぜ起きたのか考えたい。事故原因は単に危険な海域への出航を決めた船長の判断ミスではない。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の洋上見学を「平和学習」と称する同志社国際高校のあきれた教育プログラムのせいだけでもない。あえて言えば、辺野古移設に対する危険な抗議活動を長年放置し、あまつさえ正当化してきた沖縄社会の構造そのものが問われている。
海に飛び込み溺死も
――今回の事故は基地反対運動の歴史の中で氷山の一角なのか
事故当日の夜、会見に臨んだヘリ基地反対協議会の幹部ら=3月16日夜、沖縄県名護市(大竹直樹撮影)実は辺野古移設の抗議活動に絡む事故の死者は、今回の抗議船転覆事故も含めると、計4人に達する。過去にも2人の死者が出ている。平成26年には、海上での抗議活動に参加していた男性が海に飛び込み、溺れて死亡した。
令和6年には、辺野古移設の資材搬送に使われている名護市安和桟橋で、トラックの前に出た抗議活動の女性を止めようとした警備員がそのままひかれ死亡、女性も重傷を負った。
地元住民も支持せず
――名護漁協は抗議船転覆事故後、市内の漁港を管理する名護市に対し「安全性に重大な疑義が生じている団体や船舶による利用を漫然と認め続けることは、漁港管理上も極めて問題が大きい」として、反対派に漁港を使わせないよう求める要請書を提出した。
名護漁協によると、過去にも抗議船と漁船が衝突したり、抗議活動するカヌーが漁船につかまったりするトラブルがあった。過激な抗議活動は地元住民からも支持されていない。このように海上、陸上で危険な抗議活動が繰り返されているにもかかわらず、沖縄主要メディアは、基地反対運動のあり方を一切批判していない。むしろ辺野古移設工事を性急に進めようとする国に責任があるという反対派の主張に同調している。
大義名分あれば批判されず
――抗議活動で安全対策が軽視される背景には何があるのか
「県民大会」であいさつする沖縄県の玉城デニー知事=5月16日、同県北谷町(大竹直樹撮影)中国で過去の反日デモが暴徒化した際、デモ参加者の違法行為を正当化する「愛国無罪」という言葉がクローズアップされた。愛国心から出た行動であれば、たとえ違法行為であっても無罪というのだ。基地反対の大義名分さえあれば、過激な抗議活動であっても何の批判も受けない沖縄の風潮は、中国の「愛国無罪」をもじって「反基地無罪」と皮肉られることがある。基地反対運動への批判をタブー視するこの風潮が最大の問題だと考える。この風潮こそ、抗議活動参加者の安全管理に対する感覚をまひさせ、幾人もの死者を出す事故につながっているのではないか。
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仲新城氏による辺野古沖転覆事故を巡る論考は6月末発売予定の『紅(あか)い沖縄認知戦』(産経新聞出版)に収録されます。