人生最初の1000日の糖制限が生涯にわたる心血管代謝疾患のリスク低下と関連 英国の大規模研究

受胎から2歳ごろまで、いわゆる「人生の最初の1000日」の栄養の重要性を示唆する新たなエビデンスが報告された。英国において砂糖や菓子の配給制が行われていた時期に生まれた人と、その制度が廃止された後に生まれた人の健康状態を比較した自然実験の結果であり、前者の群で心血管疾患のリスクが有意に低いことが示されたという。

人生の最初の1000日の栄養

受胎から2歳ごろまでの1000日間は生物学的感受性が最も高い時期であり、この時期の母親および乳幼児の食生活、病原体への曝露、社会経済的環境が、その後の健康状態に永続的な影響を及ぼすという理解が広がっている。とくに心血管代謝疾患のリスクとの関連が強固であることが示唆されており、この時期への介入は成人後の疾患管理よりも費用対効果が高いことも示されている。

世界保健機関(WHO)は乳児の栄養について、6カ月までは母乳育児とし、その後、適切な離乳食をもちいながら、2歳まで母乳育児を継続することを推奨している。母乳中の糖の含有量は母親の食事の影響を受けないが、離乳食の開始とともに母親の食生活の影響を受け始める。また、胎児期には母親の栄養次第で過剰な糖摂取に伴う血管内皮機能低下などが生じることが、動物実験では明らかになっている。

このように人生の最初の1000日の栄養の重要性に関する知見が蓄積されてきている一方で、現代では多くの先進諸国の母親および乳幼児が添加糖を多量に摂取している。

英国では1942年から1953年まで砂糖と菓子が配給制だった

ところで、英国では第二次世界大戦中の1942年7月に、砂糖と菓子の配給制が実施された。これにより、成人1人あたりの砂糖摂取量は40g未満、5歳未満の幼児は15g未満となり、現在の食事ガイドラインの推奨に一致する程度となっていた。さらに注目すべきこととして、2歳未満の子どもは砂糖や菓子の配給の対象に含まれていなかった。

この配給制度は戦後の1953年9月に終了。その後、英国民の砂糖摂取量は急増した。ただし、砂糖以外の摂取量には大きな変化がなかった。これにより、胎児期から乳幼児期に砂糖摂取が制限されていた人とそうでない人のその後の健康状態を比較するという、絶好の自然実験が可能となった。

砂糖配給制度下で育った人は、心血管疾患の発症や心血管死のリスクが低い

以上を背景として実施されたこの研究は、英国の一般住民対象の大規模疫学研究である「UKバイオバング」のデータを用いて行われた。解析対象は、UKバイオバング参加者のうち、1951年10月~1956年3月に生まれ、研究参加時点で心血管疾患の既往、多胎出産、養子縁組、英国外での出産に該当しない6万3,433人(平均年齢54.6±1.6歳、女性56.9%)。このうち4万63人は配給制度のある時代に人生最初の1000日を過ごし、2万3,370人は同制度廃止後に育っていた。

主要評価項目は、リンクされた医療記録を用いて確認された、心血管疾患、心筋梗塞、心不全、心房細動、脳卒中の発症、および心血管死とし、その他、心臓MRI検査のデータがある対象者については左室駆出率などについても比較した。

すべての主要評価項目について砂糖供給制度下で育った群が低リスク

解析に際しては、年齢と性別を調整した「モデル1」、さらに人種、出生地、出生月、食品の価格(消費者物価指数で調整)、家族歴(両親の心血管疾患、糖尿病、高血圧)、各アウトカムの遺伝的リスクスコア、出産前後の母親の喫煙、乳児期の母乳育児、調査年を調整した「モデル2」、モデル2と同様の交絡因子を調整し、ゴンペルツ分布に基づくパラメトリックハザードモデル(時間推移によるリスクの指数関数的な変化を仮定したモデル)である「モデル3」という3通りの解析が行われた。

その結果、主要評価項目の多くについて、配給制度下で人生の最初の1000日を過ごした群のほうが有意に低リスクであることが示された。とくにモデル3では以下に記すように、すべてが有意に低リスクだった。心血管疾患はハザード比(HR)0.80(95%CI;0.73~0.90)、心筋梗塞はHR0.75(0.63~0.90)、心不全HR0.74(0.59~0.95)、心房細動HR0.76(0.66~0.92)、脳卒中HR0.69(0.53~0.89)、心血管死HR0.73(0.54~0.98)。

副次的に評価された心臓MRI検査データについては、左室駆出率(54.9±6.8 vs 54.6±6.2%、p<0.001)、左心室一回拍出量係数(46.7±11.4>

媒介分析からは、砂糖制限が心血管疾患に及ぼす影響のうち、2型糖尿病の発症が23.9%を媒介し、高血圧の発症が19.9%を媒介していて、糖尿病と高血圧の発症で31.1%を媒介することが示された。それに対して、出生体重の寄与はわずかに2.2%にとどまっていた。

人生最初の1000日間の糖分制限は心臓に良い

論文の結論は、「人生最初の1000日間に糖分制限を受けた人は、成人期の心血管疾患リスクが低く、心臓指標もわずかに良好であったことから、幼少期の糖分制限は長期的な心血管疾患予防に有益であることが示唆された」と総括されている。

本論文に関連してジャーナル発行元のBMJからプレスリリースが出ている。そのなかで、本研究が観察研究であるため因果関係について確固たる結論を出すことはできないこと、また論文著者らが詳細な個々の食事データが不足していることや結果に影響を与えた可能性のある想起バイアスなど、いくつかの限界を認めていることを指摘している。

しかし同時に論文著者らは、この大規模で綿密に設計された研究により、異なる曝露期間の影響を個別に評価し、砂糖の制限と心血管疾患の転帰を結びつける可能性のある経路を探ることができたと述べているという。

プレスリリース

Early life sugar restriction linked to lasting heart benefits in adulthood(BMJ)

文献情報

原典論文のタイトルは、「Exposure to sugar rationing in first 1000 days after conception and long term cardiovascular outcomes: natural experiment study」。〔BMJ. 2025 Oct 22:391:e083890〕 原文はこちら(BMJ Publishing Group)

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スポーツ栄養Web編集部

0.001)、左心室一回拍出量係数(46.7±11.4>

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今回は、「Frontiers in Sports and Active Living」に本年2月掲載された論文に着目する。同誌はスポーツ科学関連の論文を多く掲載しており、本コーナーでもこれまでに同誌掲載論文を数多く紹介してきている。そんななか今回取り上げるのは、健康的とされていて、時にその活動が礼賛されることもあるスポーツについて負の側面に焦点をあてて考察した、やや異色の論文。

論文のタイトルは「Game over: dissecting the overlooked health harms of modern sports」であり、現代スポーツのゲームオーバーを避けるために、いくつかの問題を投げかけていている。全体として栄養との直接的な関連は薄いが、現在のスポーツを取り巻く一面を掘り下げた内容であり、その一部の要旨のみを抜粋して紹介する。なお、論文の著者は、米国のハーバード大学やパレスチナのガザ・イスラーム大学などの、医学、疫学、生命倫理、社会医学などの研究者。

イントロダクション

組織化されたスポーツに参加するアスリートの鍛え抜かれた肉体イメージは人々の注目を集め、競技は単にスリリングなゲームではなく集団のwellbeingを高めるものとも捉えられる傾向があり、公衆衛生施策に活用されてきている。これに対して著者らは、このような傾向が現代スポーツの負の側面を覆い隠してしまいかねないと主張している。負の側面として、例えば、健康被害さえも美化することによる生物学的なダメージのリスク、あるいはアスリートやスポーツ産業にかかわる一部の労働者からの搾取といった社会的課題が存在しているという。

著者らは本論文の目的を、スポーツ全体を否定したり悪者扱いしたりすることではなく、むしろ、スポーツが真に健康促進につながるための条件と、容認することのできない生理学的または社会的な課題に焦点を当てることだとしている。

身体活動による健康への影響と、スポーツによる健康への影響を区別する必要性

早歩きや自転車通勤あるいは家事なども含め、これらの習慣的な身体活動は、ヒトの健康に対して最も強力でコストの低い決定因子の一つと言え、それを証明した数々のエビデンスが存在する。さらに習慣的な身体活動のメリットは、心理学的、社会学的な領域にも及び、自尊心の維持や社会的なつながりの強化、回復力の向上などとの関連が示されている。

一方、組織的なスポーツも一般的には健康増進につながると考えられており、アスリートにおいて健康リスクが低いことも示唆されている。しかし、それらの知見は商業化されたスポーツシステムやエリートスポーツの参加者ではなく、低強度から中強度の運動を行うレクリエーションアスリート対象の研究から得られたものであることが多い。

こうした違いは「スポーツ=健康」という概念に疑問を投げかけている。身体活動が過度の競争、階層構造、絶え間ない評価と結びついたとき、その健康上のメリットは損なわれる可能性がある。2019年に報告されたエリートスポーツ領域でのレビューでは、勝利のためなら手段を選ばないという風潮があることが示されている。例えば、怪我をしたままプレーを続けることを高く評価したり、さらには痛みを競技への献身の証として称賛したりするとった文化が根付いていると指摘されている。

グローバルスポーツはアスリートや労働者からの搾取を助長する可能性

現代の産業保健の視点からは、労働者の雇用に伴い被雇用者の健康にプラスの影響が期待される。しかし、そのような考え方が、高度にメディア化され雇用者に大きな利潤を生むスポーツの世界にまで及ぶことはほとんどない。例えば米国では長年、大学生アスリートは公正な賃金、社会保障、健康保険なしで活動し、数十億ドルのメディア収入を生み出すことを余儀なくされてきた。2021年になり、一部のアスリートは氏名や肖像権を収益化できるようになったが、大半の選手は無給のままである。

アスリート以外に、例えば砂漠の酷暑の中でワールドカップのスタジアムを建設する移民の存在も指摘できる。2022年FIFAワールドカップ・カタール大会では、交渉力の最も弱い人々が、多くの健康リスクを伴う環境で労働に従事した。このような負荷は個人のみでなく、家庭やコミュニティーに浸透し、将来の世代へ引き継がれていく可能性もある。

スポーツと米国帝国主義、そして健康

現代の米国の帝国主義(imperialism)は征服を常態化させ、身体的影響を覆い隠す文化の流れを拡散することで維持されている。例えばイラクで働く医師たちは、2003年の米軍作戦中に投下された爆弾に起因する爆発による負傷を負う子どもたちを、現在も治療し続けている。外国の植民地支配とそれに伴う暴力的な搾取から、予測可能な形で生じるパターン化された傷害プロファイル、トラウマ、栄養失調、感染症、有害物質への曝露、絶望が報告されてきている。

しばしば見過ごされていることは、こうした傷害を助長する文化的メカニズムの存在である。現代の観戦型スポーツはこの仕組みの中核を担うことがあり、武力による暴力が避けられないものであるとの理解、もしくはそれが正当化されるような感情的な誘導に援用されることがある。ことに米国においては2001年9月11日以降、プロスポーツ界と国防総省の協調が顕著となり、現在のイスラエルによるガザ侵攻を支持するために、スポーツ界を動員しようとする動きもある。

2025年6月時点でイスラエルは785人のパレスチナ人アスリートとスポーツ関係者を殺害し、288のスポーツ施設を破壊した。その一方で米国のスポーツ専門放送局(ESPN)やNBAはアリーナを青と白のグラフィックで(注:イスラエル国旗をイメージし)ライトアップし、パレスチナでの停戦を求める声をかき消した。国家が支援するスポーツ、アスリート、チームが、国家の正当性を拡散するメカニズムとして機能している。

エンディング

スポーツにかかわるスタッフの一部は、アスリートのパフォーマンスよりもアスリートやその関係者の健康を優先することの重要性を認識するのに適した立場にいるだろう。そのような立場にある人は、アスリートが痛みを耐えて、あたかも自分の体が自分のものではなくコーチのものであるかのように振る舞うことを変化させる働きかけができるだろう。スポーツにかかわる労働者からの搾取について話し合うことができるだろう。

猛暑下で暑熱指数にかかわらず進められたスタジアムの建設に従事し命を落とす移民の存在を無視して競技を称賛したり、ハーフタイムショーでガザ攻撃を正当化しながらチームスピリットを称えたりといったことをさらに続けることは、学術的・職業的怠慢と言わざるを得ない。21世紀にふさわしいスポーツ倫理は、だれかの犠牲のうえで成り立つものであってはならない。

スポーツ倫理は、ドーピングや脳震盪などの問題にとどまらず、労働者の権利、労働環境基準、スポンサーシップのガバナンス、そして非軍事化を、健康の第一義的な決定要因として扱うべきだと我々は主張する。我々の課題は、スポーツの高揚感が、他者の目に見えない労働、傷ついた身体、そして気づかれることのない葬儀に依存しない文化を醸成することである。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Game over: dissecting the overlooked health harms of modern sports」。〔Review Front Sports Act Living. 2026 Feb 18:8:1753432〕 原文はこちら(Frontiers Media)

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スポーツ栄養Web編集部


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健常な段階からエンド・オブ・ライフまで、経時的に利用可能な新たなフレイルティ評価票が、国立長寿医療研究センターなどによって開発された。保健・医療・介護分野の専門職者の利用を想定しているが、一般での利用も含めて、非営利目的であれば許可を得る必要なく、ダウンロードし使用可能だという。同センターのサイトにプレスリリースが掲載された。

発表の概要

国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの研究グループは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)長寿科学研究開発事業の助成を受け、鹿児島大学、大阪大学の研究者らとともに、健常からエンド・オブ・ライフまで経時的に内在的能力※1も評価できる新しいフレイルティ評価票(frailty-intrinsic capacity index)「FR-IC Index(フリックインデックス)」を開発した。保健・医療・介護分野の専門職者が、高齢者の健康状態を多職種の観点から、総合的かつ簡易に評価するために作成されたもの。特別な許可などは必要なく、非営利目的であれば一般を含め、誰でも利用できる。

背景:フレイルティは誰でも進行する可能性があり、健常な段階からの評価が大切

フレイルティ(Frailty)※2とは、加齢に伴い心身の機能が低下し、疾患や生活機能障害が増加することにより要介護状態や死亡などのリスクが増した状態。フレイルティは加齢に伴い、誰でも進行する可能性があり、フレイルティが進行すると自立した生活が困難になることもある。人生100年時代を最期まで充実して過ごすためには、健常の頃からフレイルティの評価を行い、適切な対策を講じることが重要とされる。

一方、近年ではフレイルティの評価だけでなく、心身機能の保持に焦点を当てた「内在的能力(Intrinsic capacity)」の評価も、高齢期のヘルスケアにおいて重要であることが世界保健機関(WHO)より示されている。その人らしく幸せな高齢期を過ごすためには、心身機能低下や健康障害の程度を把握するだけでなく、こころの健康を含む内在的能力を総合的に評価することが大切。そして、個人の持ち得る能力を活かしたフレイルティ予防対策を展開することが望まれる。

新しいフレイルティ評価票の開発

以上を背景として研究班は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)長寿科学研究開発事業(2024から2025年度)の助成を受け、健常からエンド・オブ・ライフまで経時的に利用可能な、新しいフレイルティ評価票(frailty-intrinsic capacity index:FR-IC Index)を開発した。

この評価票はフレイルティの程度に加えて、内在的能力の評価も可能。開発にあたり、保健・医療・介護分野の多職種の専門家だけでなく、誰でも利用可能な内容とすることを目指した。定期的に利用することで、個人の健康状態を経時的に評価することができる。

「利用のてびき」も公開されており、ICOPE(Integrated Care for Older People:高齢者のための包括的ケア)に基づき、本人が保持する内在的能力に着目した介入方法も解説されている。

フレイルティ評価票「FR-IC Index(フリックインデックス)」

詳細・ダウンロードはこちら

研究者らは、「フレイルティ評価票『FR-IC Index』を活用し、ご自身や家族、患者や被介護者等のフレイルティの程度とともに、内在的能力を把握することを勧める本評価票が日本全国で広く活用され、フレイルティの進行抑制を含む包括的ケアの展開につながることを期待している」としている。

プレスリリース

健常からエンド・オブ・ライフまで経時的に内在的能力も評価できる新しいフレイルティ評価票(frailty-intrinsic capacity index:FR-IC Index(フリックインデックス))を開発(国立長寿医療研究センター)

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スポーツ栄養Web編集部


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イングランド・プレミアリーグの選手や関係者を対象に、スポーツ栄養士が成功を収めるために重要だと考えることを調査した結果が報告された。解析により、三つのテーマが特定されたという。

プロサッカーの文化の中で、スポーツ栄養士はどのように活動していくべきか?

プロのサッカー界においてスポーツ栄養の位置づけは既に確立されている。しかし、男子プロサッカー特有の文化の中で、スポーツ栄養士がどのように活動していくべきかということに関して、十分な知見は得られていない。この現状を背景として、今回取り上げる論文の著者らは、イングランド・プレミアリーグの選手とスタッフを対象とする半構造化インタビューを実施した。

なお、論文中では「スポーツ栄養士」ではなく「パフォーマンス栄養士(performance nutritionist)」という言葉が使われている。スポーツ栄養士が競技成績に加えてアスリートの健康も配慮するのに対して、パフォーマンス栄養士といった場合は競技成績に特化するというニュアンスの違いがあるようだが、ここでは国内で定着しているスポーツ栄養士という言葉に置き換えて紹介していく。

選手、スタッフ、計14名に対し半構造化インタビュー

半構造化インタビューは2024年8~12月に実施された。対象は、イングランド・プレミアリーグの単一のクラブと契約していた選手またはスタッフ、計14名。内訳は、選手とコーチが各4名、スポーツ科学者、理学療法士が各2名、医師、シェフが各1名。機密性確保のため、個人の詳細な情報は伏せられているが、インタビューにおいて、プレミアリーグのほかに、セリエA、ブンデスリーガ、リーグ・アン、トルコ・スュペル・リグ、オーストラリアAリーグ、スコティッシュ・プレミアシップ、リーガ・ポルトガルなど、さまざまなチームやリーグにわたるプロとしての経験が語られていた。

インタビュアーはスポーツ栄養士として5年の経験があり、プロサッカーに精通している1名が担当。質問内容は事前のパイロット研究を経て調整された。インタビューの時間は9~48分の範囲で平均23分だった。

浮かび上がった三つのトピック

インタビュー後の分析プロセスを通じて、以下三つのトピックが特定された。

(1) 成功するスポーツ栄養士は、ゲームのルールを理解していなければならない、(2) 優秀なスポーツ栄養士は十分な専門知識だけでなく、人間関係を構築する能力も備えていなければならない、(3) スポーツ栄養士の成功は資本を蓄積する能力に依存し、ハビトゥスによって形成される。

これらについて、論文内に記されているインタビュー回答者のコメントを中心に紹介する。

成功するスポーツ栄養士は、ゲームのルールを理解していなければならない

プロサッカーの環境は、コーチ、選手、スポーツ科学チームや医療チームなど、さまざまな経験をもつさまざまなメンバーから成り立っている。先行研究では、コーチが支配的な影響力を持つ立場にあり、コーチの決定が選手の食事習慣を大きく左右することが示されている。よってスポーツ栄養士がこの状況で効果を発揮するためには、まずマネージメントスタッフの栄養に関する視点を理解することが不可欠である。あるコーチは次のように説明した。「最初にアドバイスしたいのは、常にマネージャーの考え方を理解する必要があるということだ。例えば、栄養を重視しないマネージャーがいる場合、強くなるのは難しいだろう」。

また、ある選手の例が示すように、硬直的または権威的なコミュニケーションスタイルを採用することは逆効果となる可能性がある。「選手はだれでも非常に強い自尊心をもっていると思う。スポーツ選手はみなそうだろうが、サッカーではそれがより必要とされる。もし選手に対して『こうしなければダメ!』などと言ったりしたら逆効果になる。選手は『いや、自分のやり方でやる。あなたはサッカー選手ではない。あなたの言うことは聞けない』と言うのではないか」。

プロサッカー界特有の文化を理解することの重要性は、シェフや理学療法士も強調した。あるシェフは、「我々は地中海食を導入しようと取り組んだ。しかし当時、チーム中の選手の国籍は19カ国に及んでいた。結局その多くに受け入れられなかった」と述べた。ある選手は体組成モニタリングの根強い習慣について、「起源はよくわからないが、サッカー界には体重や体組成に対するある種の執着があるように思う」と語り、スポーツ科学者は「過去にゲーム中の集中力を低下させないためにカフェインを禁止した例があるが、それはおそらく良くないことだ。選手とスタッフとの間で口論になり、選手は結局カフェインを摂取するだろう」と述べた。

優秀なパフォーマンス栄養士は、十分な専門知識と人間関係構築能力が必要

あるコーチは、「それぞれの状況で何が必要なのかを正確に理解しておくことが重要だ。全員がプレー経験を持つ必要はないが、ストレスや肉体的な負荷がかかった状況下で、体に必要な栄養補給が実際にどのようなものかを理解しておくことが大切であり、それがすべてとは言わないが、自分のやり方を後輩に伝えるうえで役立つだろう」と回答した。また、スポーツ科学者は、「クラブ内のあらゆる取り組みについて概略を理解しておくことは、栄養サポートをすすめる上で重要だと思う。例えば、選手にサプリメントを支給したり食事量を調整したりする場合、GPSデータやジムでの筋力測定データなどの文脈で説明することで、なぜそのプランを提案しているのかを具体的に示すことができる」とした。

学際的な認識の欠如、とくに選手に課せられる身体的および戦術的な要求に関する認識の欠如は、潜在的に有害であると認識されていた。理学療法士も、「スポーツ栄養士はリハビリテーションの状況を常に把握しておく必要がある」と述べている。

このほか、医師からは「過去には選手を喜ばせようとして、医療チームとしての倫理観を損なう同僚がいた。選手にこっそり甘い食べ物を渡すような行為は、その人物の評判を著しく損ない、チーム全体の倫理観を揺るがすものだ。それは本当にチームを弱体化させる行為であり、プロ意識に欠けるものだ」というコメントがあった。

スポーツ栄養士の成功は資本を蓄積する能力に依存し、ハビトゥスによって形成される

ハビトゥス(habitus)とは、個人が社会生活の中で無意識に形成された行動様式である。スポーツ栄養士にとって、プロサッカーの規範と期待に沿ったハビトゥスをもつことが、信頼を得て複雑な環境を効果的に乗り切るために必要とされる資質を獲得するために、不可欠であると考えられていた。例えばあるコーチは、「私がこれまで一緒に仕事をしてきた最高の栄養士は、選手が適切なコンディションを保ち、適切な栄養素と食事を摂ることに本当に情熱を注いでいる」と語り、ある選手は「誰かが自分の仕事に情熱を持っていると感じたら、一緒に仕事をしたくなるものだ。なぜなら、そのような人は最高の自分になるために、あらゆる努力を惜しまないことを知っているからだ」と語った。

別のコーチは、主体性の欠如をマイナス特性として挙げ、選手とのかかわりが欠けている栄養士を批判した。「積極性がなく、情報を提供したり必要なものを支給したりしない。なぜなら、選手にやらせようとしても、やってくれないからだ。選手にしっかり指示を出さなければならない」と述べた。

エリートサッカー環境で主要な関係者と協力する際には、適応力と柔軟性が不可欠な資質であることが明らかになった。他者の好み、性格、ニーズに合わせてアプローチを調整する能力は、スタッフと選手双方との生産的な関係を構築し維持するうえで中心的な役割を果たすと一貫して強調された。

理学療法士は、とくに強い個性を持つ人々が集まるハイパフォーマンス環境においては、頑固で妥協を許さない姿勢を避けることの重要性を強調した。「柔軟性に欠ける人、非常に頑固で融通の利かない考えをもつ人は、最終的に問題を抱えることになると思う」。同様にある選手は、選手のフィードバックに基づいて栄養プランを調整することの重要性を強調した。食事プランは各選手の独自の好みや耐性に合わせて調整する必要があるという指摘だ。別の選手は「万人向け」のアプローチに注意を促し、「そのようなアプローチは一部の選手にとっては全く達成不可能になる可能性がある」と述べた。

文献情報

原典論文のタイトルは、「The Rules of the Game: Towards a Theory of Practice for Performance Nutritionists in Professional Soccer Using Bourdieu’s Concepts of Habitus, Capital and Field」。〔Sports Med. 2026 Mar 8〕 原文はこちら(Springer Nature)

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スポーツ栄養Web編集部


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女性アスリートのトライアド(三主徴)とスポーツにおける相対的エネルギー不足(RED-S)に関する研究の進歩を、書誌計量学的に分析した報告を紹介する。2015年以降に論文発表数が増加してきており、とくに中国と米国の貢献が大きいという。米国の研究者らの報告。

トライアド、RED-S関連の査読済み論文を網羅的に収集して解析

女性アスリートのトライアドやRED-Sが、エネルギー不足を基盤としつつ、生理学、医学、心理学、社会学など多くの学問系統にわたる病態として形成されているとの理解が深まり、近年、さまざまな領域で研究が行われるようになってきた。今回紹介する論文では、それらの研究論文を対象に書誌計量学的な分析を行い、報告論文数の推移、報告者の国籍、研究者の国際間協力関係、発表ジャーナルなどの特徴を明らかにしている。

Web of Science Core CollectionおよびPubMedデータベースを用いて、査読済みの論文を検索。検索キーワードとして、Female Athlete Triad、female athlete triad syndrome、RED-S、relative energy deficiency in sportなどを用いた。現在入手可能な研究を網羅的に収集するため、発行日や言語に関する制限は設けなかった。

研究の国際ネットワークと研究拠点

この領域の国際研究において、中国はネットワークの中心的な位置づけとなる主要発表国であった。2番目は米国であり、多くの国々とのつながりを持つ主要なグループを形成していた。その他の重要な研究発表国として、韓国、英国、カナダ、欧州諸国が挙げられた。オーストラリア、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オランダなどは、発表論文数は少ないが、データセット内の他国との連携が一定程度認められた。

ネットワーク内では、いくつかの研究機関が中心的な役割を担っていた。米国のハーバード大学、スタンフォード大学、ペンシルベニア州立大学、ボストン小児病院などはネットワークの規模が大きく、相互接続が密であった。アジアにおいては中国の上海交通大学、中山大学、重慶医科大学、南方医科大学、韓国のカトリック大学、全南大学校などの大学が、重要な拠点として挙げられた。

全体的にこれらのネットワークは、女性アスリートのトライアドとRED-Sに関する研究が学術機関や医療機関に集中していて、複数の国や地域にまたがる協力関係が確立され存在することを示している。

論文掲載ジャーナルの傾向

「Medicine and Science in Sports and Exercise」は、この領域で最も多くの論文を掲載しており、アスリートの健康状態やエネルギーレベルに関する研究にとって最も重要なジャーナルと言える。そのほかには、「British Journal of Sports Medicine」、「Nutrients」、「Journal of Endodontics」、「Medicine Science in Sports and Exercise」などが多くの論文を掲載しており、これらを合わせると、女性アスリートのトライアドとRED-Sに関する論文全体の相当の部分を占める。一方でリストの下位にあたる一部の学術誌は掲載論文数が少ないが、これはトライアドやRED-Sの研究において、新たな、またはより専門的な研究領域が存在することを示唆していると考えられる。

全体として、トライアド、RED-S関連の論文の多くはスポーツ医学や運動科学の専門誌に掲載されており、その他の文献はより一般的な生物医学や栄養学の専門誌に掲載されている。

国別の比較および代表的な研究者

トライアド、RED-S関連の論文を最も多く報告している国は中国であり、米国が僅差でそれに続いた。また、韓国、日本、インド、英国なども比較的多くの論文を報告している。その他の多くの国々の貢献もみられる。全体として、女性アスリートのトライアドとRED-Sに関する研究は世界的な取り組みと言えるが、出版活動の大部分は比較的限られた数の国に集中していることが明らかである。

著者別に執筆論文数の上位をみると、最も多くの論文を著しているのは米国ペンシルベニア州立大学の運動生理学者であり、月経機能障害や骨密度の低下など、身体活動を行う女性におけるエネルギー不足の生理学的影響に焦点を当てた報告が多かった。

研究資金のサポート機関

トライアド、RED-S関連の研究に、多くの機関が資金を提供していることがわかった。しかし、論文の件数全体に占める資金提供を受けた研究の割合はごくわずかである。

そのなかで、中国国家自然科学基金(National Natural Science Foundation of China;NSFC)は明らかに最大の資金提供元であり、サポートした研究論文数において、他のいかなる資金提供元をもはるかに凌駕している。

NSFCのほかには、米国保健福祉省と韓国研究財団が主要な資金提供機関として挙げられ、日本学術振興会(Japan Society for the Promotion of Science;JSPS)もまた、東アジアにおけるこの領域の研究への継続的な支援を示す重要な資金提供機関として際立ってる。

発表言語、発行の時期

女性アスリートのトライアドとRED-Sに関する研究報告の言語は、圧倒的に英語が多かった。2番目に多い言語は中国語で、次いでドイツ語、そしてフランス語であった。報告数は少ないながら、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、日本語なども用いられている。

全体の論文数は2010年代後半から2020年代前半にかけて増加し続け、とくにここ数年で最大となっている。報告数は年によって若干のばらつきがあるものの、全体的な傾向としてはこの分野への関心の高まりと、学術研究への強い取り組みがみてとれる。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Evolution of Research on the Female Athlete Triad and Relative Energy Deficiency in Sport" (RED-S)」。〔Orthop Rev (Pavia). 2026 Feb 18:18:157624〕 原文はこちら(Open Medical Publishing)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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スポーツ栄養Web編集部


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エリート女性アスリートを対象に行われた研究報告のシステマティックレビューとメタ解析の結果、最大2割程度の選手が臨床レベルの不安、抑うつ、摂食障害を経験している可能性のあることが報告された。著者らは、各競技団体が女性アスリートの潜在的な精神疾患のリスクに対して、より積極的に認識すべきだとしている。

メタ解析で、エリートレベルの女性アスリートの不安、抑うつ、摂食障害の頻度を検討

女性アスリートは男性アスリートよりも不安症、うつ病、摂食障害などの精神疾患のリスクが高いことが報告されてきている。しかし今回紹介する論文の著者によると、エリート女性アスリートの不安や抑うつ、摂食障害リスクに関するシステマティックレビューやメタ解析は限られているという。定量的に行ったレビューの報告は2019年の1報のみであり、睡眠障害や、アルコール乱用、および「不安/うつ」などの有病率を推測しているものの、女性と男性が区別されておらず、さらに不安とうつをひとまとめにしている点が、現在の疾患理解では課題が残るとしている。

不安と抑うつは併存することが多いとはいえ、両者は異なる病状であって、介入も異なることから、両者を区別し、かつ性別を女性に特化した研究報告を対象とする定量的なレビューが求められるという背景の下、著者らは新たにPRISMA(システマティックレビューとメタ解析のための優先報告事項)に基づく解析を実施した。

文献検索について

文献検索には、PubMed、Web of Scienceなどの3種類の文献データベースを用い、それぞれのスタートから2025年5月21日までに収載された論文を対象とした。

包括基準は、エリートレベルの女性アスリートの不安、抑うつ、摂食障害のリスクを精度検証済みの評価指標を用いて検討した報告とした。研究対象に男性または非エリートレベルのアスリートが含まれている報告も、エリート女性アスリートのみのデータを抽出可能な場合は適格とした。一方、全文を入手できない報告、英語以外の論文は除外した。

一次検索で7,022報がヒットし重複削除後の4,231報を対象に、2名の研究者がタイトルと要約に基づくスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は討議により解決した。579報が全文精査の対象とし、適格と判断されたもののうち本研究の解析に必要なデータが示されていない報告については責任著者に連絡をとり、データの提供を求めた。最終的に122件の研究報告がシステマティックレビューの対象、そのうち106件がメタ解析の対象として抽出された。

抽出された研究報告の特徴

122件の研究の約3分の1(42件、34.4%)は米国からの報告だった。日本からの報告は1件だった。研究デザインは大半(93.4%)が横断研究であり、サンプルサイズは9~3,839人の範囲で、合計2万7,051人だった。アスリートが行っている競技については、複数の競技アスリートを対象にした研究が多く、64.8%を占めていた。単独の競技アスリートを対象に行った研究の中では、サッカーが9件と最多であり、体操4件、フィギュアスケート3件、水泳3件などだった。

不安リスクを調査したものが41件、抑うつリスクは58件、摂食障害リスクは72件で調査されていた。全研究で合計29種類の評価指標が用いられており、不安の評価には全般性不安障害スケール(The 7-item Generalized Anxiety Disorder;GAD-7)が最多の29件であって、計5種類の指標が用いられていた。抑うつの評価には12種類の指標が用いられており、最多は患者健康質問票(Patient Health Questionnaire-9;PHQ-9)の21件だった。摂食障害の評価にも12種類の指標が用いられており、最多は摂食態度テスト(Eating Attitudes Test-26;EAT-26)の34件だった。

メタ解析による不安、抑うつ、摂食障害の有病率

不安の有病率は19.4%

不安症状のメタ解析の対象は、37件(7,580人)とされた。臨床レベルの不安症状の有病率は1~59%の間に分布しており、全体として19.4%(95%CI;15.4~23.7)となった。研究間の異質性が高かった(I2=94%)。

抑うつの有病率は18.7%

抑うつ症状のメタ解析の対象は、56件(1万5,870人)とされた。臨床レベルの抑うつ症状の有病率は1~57%の間に分布しており、全体として18.7%(95%CI;15.9~21.7)となった。研究間の異質性が高かった(I2=94%)。

摂食障害の有病率は18.6%

摂食障害症状のメタ解析の対象は、57件(9,888人)とされた。臨床レベルの摂食障害症状の有病率は0~89%の間に分布しており、全体として18.6%(95%CI;15.0~22.6)となった。研究間の異質性が高かった(I2=95%)。

エリート女性アスリートのメンタルヘルスに及ぼす因子の研究と環境整備が課題

著者らは本研究を、エリート女性アスリートにおける不安、抑うつ、および摂食障害の臨床的に重要な症状の有病率をシステマティックレビューとメタ解析により推計した、初の研究だとしている。また、本研究に近い手法で推計された一般女性における不安、抑うつ、摂食障害の有病率は、それぞれ7.3%、7.8%、5.7%とのことだ。

この乖離を根拠として著者らは、「我々の研究結果は、エリート女性アスリートにおける不安、抑うつ、および摂食障害のレベルが一般人口と比較して高いことを示唆している」と結論づけるとともに、「この結果が示唆するところは、女性スポーツのあらゆる関係者にとって重要であり、エリート女性アスリートの精神疾患の特定、管理、および治療に特化した施策と介入に重点を置く必要性を強調している」と付言。さらに、「これらの有病率が明らかになった今、今後の研究では、これらリスクを引き起こしている可能性のある根本的なメカニズムの理解に焦点を当てるとともに、この集団特有のメンタルヘルスを育み、精神疾患に取り組む介入とスポーツ環境を構築することが望ましい」と提言している。

文献情報

原題は、「Prevalence of clinically significant symptoms of anxiety, depression and disordered eating in elite female athletes: A systematic review and meta-analysis」。〔Psychol Sport Exerc. 2026 Feb 17:85:103090〕 原文はこちら(Elsevier)

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スポーツ栄養Web編集部


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生活習慣病リスクを抱えている対象者への指導は、管理栄養士の主要な業務の一つだが、その指導スキルがどの程度のレベルに到達しているのか、気になることはないだろうか。そのような不安の解消の一助となるツールが開発された。自分自身のスキルを評価できるチェック表であり、その信頼性・妥当性が予備的研究で支持されたという。帝京大学大学院公衆衛生学研究科および栄養サポートネットワーク合同会社の安達美佐氏らによる研究によるもので、「日本公衆衛生雑誌」に論文が掲載された。

管理栄養士のスキルアップをサポートするツールが求められている

管理栄養士は、栄養指導はもちろんながら、運動、睡眠、禁煙など多岐にわたる介入を行う。これらは現在、栄養管理の国際的な基準である「Nutrition Care Process(NCP,栄養ケアプロセス)」に基づき行われるようになってきている。安達氏らは既に、NCPに基づく生活改善プログラム(structured individual-based lifestyle education;SILE)を提案し、その有用性を報告している(DOI: 10.1186/1471-2458-13-467DOI: 10.1017/S1368980016001920)。しかしその一方で、管理栄養士のスキル向上を目的としたツールは乏しい。

これを背景に同氏らは新たに、管理栄養士が指導スキルの自己達成度を評価しその向上を目指すための「スキルチェック表」を開発。さらにその信頼性や妥当性を予備的に検討した。

スキルチェック表の概要

スキルチェック表の開発は、安達氏を含む3人の管理栄養士が合議により開発した。

全体の構成は、「介入方針の決定(達成目標の設定)」関連が4項目、「栄養アセスメント(問題点の抽出)」関連が8項目、「栄養診断(優先する問題点の決定)」関連が4項目、「栄養介入(行動目標の設定)」関連が5項目、「栄養モニタリング・評価」関連が5項目で、計26項目。その他の身体計測値や生化学データ、既往歴、服薬状況などは基本的に把握すべきことであるため含めなかった。

このスキルチェック表の利用法は、日常業務において直近の数週間に担当した複数の対象者への生活習慣改善指導全体を念頭に、管理栄養士自身が各項目を「1. ほぼ全症例で実施」、「2. 約半数で実施」、「3. 実施例が少ない」の3段階で評価するというもの(詳細は論文参照〈DOI: 10.11236/jph.25-135〉)。

スキルチェック表の信頼性や妥当性を予備的に検討

開発されたチェック表の検証のための研究には、日常的に薬局に勤務し栄養管理業務に携わる薬局、医療機関、保健指導事業従事者で、栄養指導経験が5年未満の管理栄養士25名が参加。ベースライン時点と、その後2週間ごとに計7回の自己評価を行った。また、ベースライン時と12週間経過後の2時点で、異なる背景をもつ3症例を用いた栄養指導のロールプレイングを実施。その様子を撮影した動画を栄養指導の経験のある3名の管理栄養士(経験年数の平均15.7年)が評価した。

データ欠落のあった1名を除外し、24名を解析対象と、主要評価指標は『スキルチェック表』に基づく栄養スキルスコア(100点換算)とした。

栄養スキルスコアの再現性、内的一貫性

再現性は、別途実施した管理栄養士30人を対象とする調査のうち、1週間間隔で2回回答が得られた21人で検討され、ICCは0.986(95%CI: 0.973~0.999)であった。補助的に算出したSpearmanの順位相関係数も0.689(P<0.001)であった。また、ベースライン時点の栄養スキルのスコアは、Cronbachのαが0.907であり、高い内的一貫性が確認された。

構成概念妥当性

管理栄養士の経験年数別群(3年未満/3年以上)とスキル評価者群の3群で比較したところ、平均スコアは58.0、78.8、98.7で、経験年数が長い群ほど高い傾向がみられた。ただし、管理栄養士同士の群間差は有意ではなく、両群はいずれもスキル評価者群より有意に低かった-。

栄養管理スキルへの介入効果

ベースライン時点と12週間後を比較すると、自己評価・第三者評価のいずれでも栄養スキルスコアは有意に上昇した。もっとも、対照群を置かない前後比較であるため、この変化がツール使用そのものによる効果かどうかは今後の検証が必要である。第三者評価の評価者間信頼性(ICC(2,1))は、ベースライン0.512、最終時点0.758で、最終時点では良好な水準に達した。

アンケート調査による参加者の主観的評価

上記の客観的指標による検討のほかに、ベースライン時点と12週間後の最終時点に行ったアンケート調査の結果に基づき、研究参加者の主観的な評価の変化を検討した。

その結果、ベースライン調査では「ほとんどの症例でNCP(栄養ケアプロセス)に沿って実施している」と回答した割合が25.0%であったものが、最終調査では58.3%となっていた。また、「栄養相談で効果があったのか実感が持てない」との回答は、83.3%から45.8%となっていた。

今後は教育や研修での実装が課題

以上の結果に基づき著者らは、「我々が開発した本ツールは、管理栄養士の自己評価を通じて自らのスキル向上を支援する可能性が示された。研究参加者に薬局勤務者が多かったことは限界点ではあるが、薬局栄養士の役割は今後も拡大していくと見込まれており、本研究は先駆的試みと位置づけられる」と総括している。

なお、今後の展開としては、「医療機関に勤務している管理栄養士などへの適用や大規模研究による有効性の検証を通じて、教育・研修への実装を目指していきたい」と述べている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「管理栄養士の生活習慣改善指導スキル向上を目指したスキルチェック表の開発と予備的検討」。〔日本公衆衛生雑誌 J-STAGE早期公開(2026年3月26日)〕 原文はこちら(J-STAGE)

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スポーツ栄養Web編集部


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食塩含有量の多い食品を減らし、食塩摂取量の多い人を減らすことによる、高血圧患者数や高血圧医療費への影響をシミュレーションした結果が報告された。人口減少の影響も加わるため患者数や医療費は今後減少していくと予測されるが、より強力な減塩施策の推進によってそのスピードの加速も見込めるという。聖路加国際大学大学院公衆衛生学研究科の西信雄氏らの研究によるもので、論文が「Nutrients」に掲載された。

より一層の減塩に向けた個人と社会の取り組みの推進

食塩の摂りすぎが血圧を高め、心血管疾患・腎疾患のリスクを高めることは広く知られている。それにもかかわらず、近年の日本人の食塩摂取量はほぼ横ばいであり、高血圧の有病率も高止まりしている。

個人へ減塩を呼び掛けるという従来型の公衆衛生施策が行き詰まっている現状において、世の中に流通している食品の食塩含有量を減らすという社会的な取り組みの必要性が指摘されるようになってきており、減塩調味料などが徐々に増えてきている。このような変化を背景に西氏らは、このような取り組みが将来的に高血圧患者数や高血圧医療費へどのような影響を与えるかシミュレーションした。

減塩施策を3倍速で進めると、2040年に食塩摂取量6.9gも視野に

シミュレーションには、2012~23年の「国民健康・栄養調査」や、高血圧有病率が高い40~79歳の人口の推移、外来医療費などのデータを用いた。

2012年時点の食塩摂取量、食塩含有量が多い食品、患者数、医療費

2012年の40~79歳の人口は男性3,160万人、女性3,320万人、食塩摂取量は10.1gだった。世の中に流通している食品の点数を1,000品目と仮定し、そのうちの10%(100品目)が、食塩含有量の少ない食品、その他の90%(900品目)を食塩含有量の多い食品と位置づけたうえで、2012年の国民1人あたりの食塩摂取量が10.4±4.2gと報告されていることから、食塩含有量の少ない食品は1日量として食塩含有量が6gのもの、食塩含有量の多い食品は同14gのものと仮定した。なお、40~79歳の人口のうち48.7%は食塩摂取量が比較的少ない群であり、10万人あたり5万1,313人が食塩摂取量の多い群と推定された。

2012年の高血圧有病者数は、男性1,460万人、女性1,050万人であり、外来医療費は同順に5,319億円、5,078億円だった。なお、後述の外来医療費の変化の予測に際しては、患者あたりのコストが2012~19年と同等の水準で推移するものとして算出した。また、高血圧の合併症として生じる心腎疾患などの医療費は含めずに算出した。

食塩含有量が多い食品から少ない食品への切り替えの推進、患者数の減少のシナリオ

各種のデータを参照した検討により、世の中に流通している食品の食塩含有量が年に4%の係数で低下し、食塩摂取量の多い人が年に7.86%の係数で減少すると推測された。この推測に人口の減少や移動を加味し、2026年、および2040年には以下のように変化すると予測された。

2026年

食塩含有量の多い食品
676品目
食塩摂取量の多い人
4万5,415人(40~79歳10万人あたり)
食塩摂取量
9.6g
高血圧有病者数
男性980万人、女性750万人
外来医療費
男性3,775億円、女性3,738億円

2040年

食塩含有量の多い食品
483品目
食塩摂取量の多い人
3万4,322人(40~79歳10万人あたり)
食塩摂取量
8.7g
高血圧有病者数
男性630万人、女性520万人
外来医療費
男性2,443億円、女性2,598億円

2012年から2040年の変化

食塩含有量の多い食品
-46.3%
食塩摂取量の多い人
-33.1%
食塩摂取量
-13.9%
高血圧有病者数
男性-56.8%、女性-50.5%
外来医療費
男性-54.1%、女性-48.8%

減塩施策推進によるブースト効果

次に、食品の食塩含有量や食塩摂取量の多い人の減少速度が3倍に加速した場合の2040年の状況がシミュレーションされた。

食品の食塩含有量の減少が2040年まで3倍速で進行した場合

食塩含有量の多い食品
242品目〔ブースト効果-50.0%〕
食塩摂取量の多い人
3万793人(40~79歳10万人あたり)〔ブースト効果-10.3%〕
食塩摂取量
8.5g〔ブースト効果-3.2%〕
高血圧有病者数
男性630万人、女性520万人〔ブースト効果-0.3%、-1.0%〕
外来医療費
男性2,437億円、女性2,574億円〔ブースト効果-0.2%、-0.9%〕

食塩摂取量の多い人の減少が2040年まで3倍速で進行した場合

食塩含有量の多い食品
459品目〔ブースト効果-5.1%〕
食塩摂取量の多い人
1万6,652人(40~79歳10万人あたり)〔ブースト効果-51.5%〕
食塩摂取量
7.3g〔ブースト効果-16.2%〕
高血圧有病者数
男性620万人、女性490万人〔ブースト効果-1.7%、-6.6%〕
外来医療費
男性2,406億円、女性2,437億円〔ブースト効果-1.5%、-6.2%〕

食品の食塩含有量と食塩摂取量の多い人の減少がともに2040年まで3倍速で進行した場合

食塩含有量の多い食品
201品目〔ブースト効果-58.5%〕
食塩摂取量の多い人
1万639人(40~79歳10万人あたり)〔ブースト効果-69.0%〕
食塩摂取量
6.9g〔ブースト効果-21.7%〕
高血圧有病者数
男性620万人、女性480万人〔ブースト効果-2.3%、-8.8%〕
外来医療費
男性2,393億円、女性2,383億円〔ブースト効果-2.0%、-8.3%〕

心腎疾患も考慮するなら、さらに大きな医療経済的インパクトが期待される

上記のほか、都道府県別のデータに基づくシミュレーションも行われ、全国データのシミュレーションとほぼ同様の傾向が予測された。2012年の食塩摂取量は、沖縄県の8.3g/日から岩手県の11.7g/日の範囲に分布し、2040年にはそれぞれ6.9g/日、10.3g/日に低下すると予測された。

著者らは、高血圧に伴う心血管疾患・腎疾患等の医療費を考慮していないため、減塩施策の推進による医療費へのインパクトが過小評価されていることなどの留意点を挙げたうえで「食塩含有量の多い食品を46.3%削減し、食塩摂取量の多い人を33.1%減少させることで、平均摂取量は10.1g/日から8.7g/日へと13.9%減少するものと推計された。さらに、2040年までに食塩摂取量が6.9g/日へと減少した場合、高血圧の有病者数および外来医療費が男性ではそれぞれ2.3%および2.0%減少し、女性ではそれぞれ8.8%および8.3%減少するというブースト効果が見込まれる」と結論づけている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Impact of Salt Reduction on Medical Expenditure for Hypertension in Japan: National and Subnational Simulation Models」。〔Nutrients. 2026 Mar 16;18(6):933〕 原文はこちら(MDPI)

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スポーツ栄養Web編集部


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コーヒーに含まれるポリフェノール成分「カフェ酸」がヒト大腸がん細胞の増殖を強く抑制することが明らかになった。京都府立医科大学、関西医科大学の研究グループの研究によるものであり、論文が「Scientific Reports」に掲載されるとともに、プレスリリースが発行された。ケミカルバイオロジーの手法により、カフェ酸が大腸がんの予後不良に関わるリボソームタンパク質RPS5に直接結合することで、がんの増殖を制御するのだという。研究者らは、コーヒーの摂取と大腸がんのリスク低下との関連を示す疫学研究の背景にある分子メカニズムの一端を説明する成果だとしている。

研究の概要:疫学研究で示されていたメカニズムを解明

京都府立医科大学と関西医科大学の研究グループは、コーヒーに含まれるポリフェノール成分「カフェ酸(caffeic acid)」が、ヒト大腸がん細胞の増殖を抑制する分子メカニズムを解明した。

この研究では、ナノ磁性ビーズを用いたケミカルバイオロジーの手法によって、カフェ酸がヒト大腸がん細胞において直接結合するタンパク質を探索。その結果、リボソームタンパク質S5(RPS5)がカフェ酸の結合タンパク質であることを同定した。またスーパーコンピューターを用いた分子動力学シミュレーションにより、カフェ酸がRPS5の特定の結合部位に安定して結合する可能性が示された。さらに、カフェ酸はRPS5と結合することで、大腸がん細胞の細胞周期進行に重要な役割を果たすサイクリンD1の発現を抑制し、大腸がん細胞の増殖を抑えるという新規メカニズムを解明した。

本研究成果は、コーヒー摂取と大腸がんリスク低下との関連を示す疫学研究の背景にある分子メカニズムを理解するうえで、重要な知見を提供するものと考えられる。

論文概要:カフェ酸はRPS5に直接結合し機能を阻害して大腸がん細胞の増殖を抑える

研究の背景:コーヒーのポリフェノールの一種「カフェ酸」に注目

大腸がんは世界的に患者数が増加している主要ながんの一つであり、生活習慣や食事との関連が指摘されている。近年、多くの疫学研究においてコーヒー摂取と大腸がん発症リスクの低下との関連が報告されているが、コーヒーに含まれるどの成分が、どのような分子メカニズムでがんを抑制するのかについては、十分には解明されていなかった。

コーヒーにはクロロゲン酸などのポリフェノールが豊富に含まれているが、これらは腸内で加水分解され、カフェ酸※1として存在することが知られている(図1)。本研究では、このカフェ酸に着目し、大腸がん細胞に対する作用を分子レベルで解析した。

図1 コーヒーに含まれるポリフェノール、カフェ酸の化学構造式

(出典:京都府立医科大学)

研究の内容:カフェ酸がヒト大腸がん細胞のコロニー形成を抑制する

研究グループはまず、ヒト大腸がん細胞にカフェ酸を添加すると、がん細胞のコロニー形成が著しく抑制されることを確認した(図2)。

図2

左:2種のヒト大腸がん細胞(HCT-15、HCT116)が紫色に染色されている。 右:カフェ酸の投与により、がん細胞はほぼ消滅した。

(出典:京都府立医科大学)

次に、カフェ酸を固定化したナノ磁性ビーズを用いた解析(図3)により、カフェ酸と結合するタンパク質を探索したところ、大腸がん患者の予後不良と関連することが知られているRPS5(ribosomal protein S5)※2を同定した。

図3 ナノ磁性ビーズを用いたカフェ酸の結合タンパク質の同定方法

(出典:京都府立医科大学)

スーパーコンピューターを用いた分子動力学シミュレーションにおいても、カフェ酸はRPS5に安定的に結合していることが示された(図4)。

図4 スーパーコンピューターを用いたカフェ酸とRPS5の結合様式の解析

緑:RPS5、水色:カフェ酸。

(出典:京都府立医科大学)

RNAシーケンスによる網羅的遺伝子発現解析およびRNA干渉法によりRPS5の発現を抑制すると、がん細胞の細胞周期がG1期で停止することがわかった。さらに、カフェ酸処理やRPS5の発現抑制は、細胞周期進行に重要なタンパク質、サイクリンD1※3の発現を抑制することが明らかとなった。さらなる解析の結果、RPS5は転写後制御を介してサイクリンD1の発現を調節している可能性が示された。

以上の結果から、カフェ酸はRPS5に直接結合することでRPS5の機能を阻害し、サイクリンD1の発現を抑制することにより、大腸がん細胞の増殖を抑えるという新しい分子メカニズムが示された(図5)。

図5 カフェ酸による大腸がんの新規抑制メカニズム

(出典:京都府立医科大学)

今後の展開と社会的意義

本研究は、コーヒーに含まれるポリフェノール成分「カフェ酸」の新しい分子標的RPS5を同定し、「カフェ酸」が大腸がん細胞の増殖を抑える新しい分子メカニズムの一端を明らかにした。これまで疫学研究では、コーヒー摂取と大腸がんリスク低下との関連の背景にある分子レベルの仕組みは十分に解明されていなかった。本研究は、その一部を説明する可能性のある知見を示した。

また近年、本来メッセンジャーRNAの翻訳を司るRPS5のようなリボソームタンパク質が、翻訳以外の機能を持ち、がんの発生や進展に関与することが注目されているが、本研究はその新たな例を示すとともに、大腸がんの予防や治療に、RPS5-サイクリンD1経路が新しい標的となる可能性を示唆している。今後、カフェ酸の構造を基にした誘導体の開発や、RPS5を標的とした新しいがん予防・治療戦略の開発につながることが期待される。

一方で、コーヒーにはカフェインなどのさまざまな成分が含まれており、体質によってはコーヒーがあわない人もいる。また、本研究は主に細胞実験による基礎研究であり、コーヒーの摂取量と大腸がん予防効果の直接的な関係を示したものではない。研究者らは、「健康のためにといってコーヒーを極端に多く摂取することは推奨されず、日常の食生活の中で適量を楽しむことが大切だと考えている」と述べている。

プレスリリース

【論文掲載】コーヒーの成分が大腸がん細胞の増殖を抑制~ポリフェノール「カフェ酸」の新しい分子標的RPS5を発見~(京都府立医科大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Caffeic acid suppresses cyclin D1 expression by directly binding to ribosomal protein S5 in colorectal cancer cells」。〔Sci Rep. 2026 Mar 5〕 原文はこちら(Springer Nature)

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スポーツ栄養Web編集部


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日々トレーニングを重ね、より強いカラダを目指すアスリートたち。ただ、バスケットボールやハンドボール、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールなど、高強度の運動を行いながら、カラダづくりを進める選手にとって「たくさん食べないといけないのに食べられない」「食べても筋肉がつかない…」など、栄養の悩みは尽きません。

今回、スポーツシーンにおけるアミノ酸の機能性について科学的に学べる情報サイト『アミノ酸スポーツ栄養科学ラボ』(味の素株式会社)で、食べられない悩みに応える、アミノ酸活用の栄養戦略をテーマにしたコンテンツが公開されましたのでご紹介します。「食べなければ強くなれない」とわかっていても、実際には食べられないーーそんなジレンマを抱えるアスリートに向けた実践的なヒントが詰まっています。

詳細はこちら▶「食べたいのに食べられない」アスリートへ―カラダづくりを効率化する、アミノ酸という選択―

「食べたいのに食べられない」現場のリアル

競技力向上を目指すうえで、十分な栄養摂取が不可欠であることは言うまでもありません。しかし現場では、「食べること自体がつらい」という声が多く聞かれます。特に運動後は食欲が低下しやすく、必要量に届かない状態が慢性的に続いてしまうケースもあります。この“食べられない問題”は、筋肉量の増加や回復を妨げる要因となり、パフォーマンスにも影響を及ぼします。では、なぜ運動後に食欲が落ちるのか。そして、どうすれば無理なく栄養を補給できるのかーーその答えを、運動・栄養戦略の研究と現場指導に長年取り組んできた、東海大学 健康学部 健康マネジメント学科の安田純先生に解説いただきました。

プロテインだけでは解決できない理由とは

栄養補給というと、プロテインを積極的に取り入れている方も多いでしょう。しかし、「たんぱく質を、とにかく多く摂る」という考え方だけでは、かえって逆効果になることもあります。胃腸への負担や消化の問題により、食欲低下を助長してしまう可能性もあるのです。本コンテンツでは、こうした見落とされがちなポイントに着目し、「なぜうまくいかないのか」を丁寧に解説。普段の指導やサポートの中で感じていた違和感が、理論的に整理される内容となっており、現場に関わる方にとって新たな気づきにつながるはずです。

胃腸への負担を軽減しながら、カラダづくりを効率化するアミノ酸の活用

では、食べられない状況でも、どうすれば必要な栄養を確保できるのでしょうか。本コンテンツで提示されているのが、「効率よく届ける」という発想です。その具体策として紹介されているのがアミノ酸の活用。消化を必要とせず、スムーズに体内へ取り込める特性を活かすことで、食欲が低下している状態でも無理なく栄養補給を行うことが可能になります。また、ロイシンを高配合した必須アミノ酸であれば、少量の摂取でも、ホエイプロテインと比較して筋肉の合成に差がなかったと報告されています。こうした知見から、アミノ酸は、無理なく、少量で効率よく、カラダづくりをサポートできると考えられます。

たんぱく質を多く摂ることだけが正解ではない。そんな新たな気づきを得られる今回の内容は、選手はもちろん、スポーツ栄養士やトレーナー、指導者、保護者の方にもぜひ知っていただきたいテーマ。記事と動画の両方で学び、現場に活かしていただければ幸いです。詳細は、『アミノ酸スポーツ栄養科学ラボ』の該当記事をご覧ください。

【インタビュー動画】アミノ酸で効率的なカラダづくりー食べられなくなる理由は…アミノ酸を用いた栄養戦略―(アミノ酸スポーツ栄養科学ラボ)

アミノ酸スポーツ栄養科学ラボとは

同サイトはアミノ酸の基礎情報とともに、カラダづくりの基本となる食事や栄養に関する情報、筋肉づくりやパフォーマンスアップの方法論、各競技のプロ指導者による現場のノウハウも豊富に蓄積されており、スポーツシーンにおけるアミノ酸の機能性を科学的に学べる情報サイトとして、アスリートとその指導者たちに広く活用されています。

関連情報

アミノ酸スポーツ栄養科学ラボ(味の素株式会社)

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スポーツ栄養WEB編集部


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エリートレベルの女性トレイルランニング選手の血液検査値と、骨密度や骨塩量との関連を横断的に調査した結果が報告された。卵胞刺激ホルモンの保護的作用、カルシウムや甲状腺ホルモンの部位特異的な保護的作用が示唆されたという。また血清マグネシウムは意外なことに、各部位の骨密度や骨塩量と負の相関がみられ、著者らは慢性的なストレスによる骨からのミネラル動員の影響ではないかと考察している。

トレイルランニングの競技特異的な骨への負担

持久系アスリート、とくに女性持久系アスリートは、高度の代謝的要求によって内分泌環境(ホルモンバランス)や骨代謝に影響が現れることが少なくない。高い負荷の運動は一般的に、大腿骨頸部などの皮質骨が豊富な部位の骨形成を促進するとされているが、エネルギー需要が満たされていない場合やホルモンバランスが乱れている場合には、そのようなメリットが打ち消され、さらに骨脆弱性を来すことがある。

なかでもトレイルランニングは、下り坂を含む整地されていない自然環境での走行に伴い特定の部位に高負荷がかかり、部位特異的な変化が生じるリスクがあると考えられる。また、女性トレイルランナーは運動習慣のない一般女性よりは踵骨の骨密度が高いものの、他の持久系女性アスリートより低いという報告もある。とはいえ、女性トレイルランナーの骨の状態を血液バイオマーカーと関連づけて検討した研究はほとんどみられない。

これらを背景として、この論文の研究では、スペインのエリートレベルの女性トレイルランナーを対象に、血液検査値と骨関連指標との関連の横断的な解析が行われた。

国際レベルの女性トレイルランナー35人を対象とする横断的解析

この研究の対象は、スペイン登山スポーツ連盟の協力を得て募集された、同国の代表レベルのエリート女性トレイルランナー35人。適格条件として、国際大会での競技経験があり、前年のシーズンにおいて国際トレイルランニング協会(International Trail Running Association;ITRA)のパフォーマンス指数(ITRAスコア)が付与されているアスリートとされた。一方、体組成に影響を及ぼし得るサプリメントの利用者や、体内のインプラント留置、神経性食欲不振症の既往に該当する場合などは除外された。

主な特徴は、年齢33.7±7.5歳、BMI 19.9±1.3、競技歴7.91±5.2年、トレーニング量12.9±3.7時間/週、競技レベル(ITRAスコア)656.9±63.6(同スコア600以上は国際レベルと見なされる)であり、初経年齢は13.4±2.0歳だった。なお、13人に月経異常がみられ、10人は複合ホルモン避妊薬を使用しており、12人は同薬を使用せず正常月経だった。ただしこの3群間に血液検査値や骨指標に有意差はなかったことから、全体を一つのコホートとして解析された。

採血や骨密度等の測定は、プレシーズン中に48時間の運動禁止、8時間以上の絶食期間をおいて8~10時に行われた。正常月経者については卵胞期初期(月経後3~4日)のタイミングで行った。骨密度と骨塩量の評価には二重エネルギーX線吸収測定(dual-energy X-ray absorptiometry;DXA)法を用いて経験豊富な1人の研究者がすべて測定した。

血液検査データの傾向

血液検査では、尿素窒素(BUN)が全アスリートで基準範囲を逸脱して上昇していた。ただし、クレアチニンを含め、グルコース、ナトリウム、カリウム、塩化物、マグネシウム、カルシウムなどの他の生物学的指標の大半は基準範囲内だった。

内分泌プロファイルでは逸脱が広範囲にわたり、臨床的に有意な項目も認められた。ビタミンD低値が68.6%に認められ、最も一般的な不足状態であった。また、甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン〈T3〉)低下が48.6%、黄体形成ホルモン(LH)低下が28.6%に認められた。

肝酵素と代謝プロファイルでは97.1%で乳酸脱水素酵素(LDH)の上昇、60.0%にクレアチンキナーゼ(CK)の上昇、40.0%に総コレステロールの上昇が認められた。その他の肝酵素マーカーは概ね基準範囲内にとどまっていた。

血球関連では好中球数低下が全員に認められた。また、31.4%でリンパ球数が高く、37.1%で単球数が増加していた。そのほかに、48.6%でフェリチン低値、28.6%でトランスフェリン低値、17.2%で血清鉄レベル低値が観察された。

全体として、代謝、ホルモン、および免疫プロファイルに特異的な逸脱が示された。

体組成および骨密度と骨塩量の傾向

体脂肪率は18.9±3.4%であり、内臓脂肪面積は3.0±3.9cm2とわずかだった。また全身の骨塩量は2,206.286±246.702g、骨密度は1.096±0.094だった。 骨減少症や骨粗鬆症に該当する割合:

骨密度のTスコアが-1.0~-2.5標準偏差であり臨床的に「骨減少症」と判定される選手の割合は、全身で評価した場合は5.7%だが、腰椎(L1~L4)の評価では48.6%に及んだ。また、大腿骨頸部では17.1%、全大腿骨では22.9%だった。

骨密度のTスコアが-2.5標準偏差以下であり臨床的に「骨粗鬆症」と判定される選手も、腰椎で評価した場合は11.4%存在した。その他の部位での評価で骨粗鬆症に該当する選手はいなかった。なお、骨塩量のZスコアで評価した場合も、腰椎の骨塩量が2.0標準偏差以下の選手が17.1%存在した。

血液検査データと骨塩量・骨密度の相関

血液検査データと骨塩量・骨密度の相関を検討すると、以下のように多くの有意な相関が認められた。

マグネシウムは、腰椎の骨塩量(r=-0.56、p=0.001)、骨密度(r=-0.57、p=0.001)と負の相関を示し、また体幹や全身の骨指標とも有意な負の相関を認めた。カルシウムは、腰椎の骨塩量(r=-0.40、p=0.02)のほか、体幹の骨密度、全身の骨塩量などと負の相関を示した。トリヨードサイロニン(T3)は、腰椎の骨密度(r=0.51、p=0.002)や骨塩量(r=0.40、p=0.02)のほか、体幹の骨指標とも有意に正相関した。

そのほか、BUNと大腿骨頸部骨塩量の正相関(r=0.36、p=0.03)、血糖値と大腿骨頸部骨塩量の負の相関(r=-0.38、p=0.03)なども認められた。

女性トレイルランナーの骨の健康状態のモニタリングには、腰椎での評価が重要か

次に、多変量解析にて、全身および部位別の骨指標に有意な関連のある血液検査データを抽出した。

腰椎

腰椎の骨指標と一貫した関連のある血液検査値として、マグネシウムが負の関連(骨塩量β=-0.52、骨密度β=-0.35)、卵胞刺激ホルモン(FSH)が正の関連(βが同順に0.29、0.53)が抽出された。有意に関連するその他の因子として、骨塩量についてはカルシウムが負の相関など、骨密度についてはT3と正の相関などがみられた。

大腿骨頸部

マグネシウムは一貫して負の関連因子として抽出された(骨塩量、骨密度ともにβ=-0.34)。FSHは骨塩量のみと正の関連、血糖値は骨塩量のみと負の関連があった。

体幹

マグネシウムは一貫して負の関連因子として抽出された(骨塩量β=-0.50、骨密度β=-0.44)。カルシウムは骨密度と負の関連、FSHは骨密度と性の関連があった。

全身

マグネシウムは一貫して負の関連因子として抽出された(骨塩量β=-0.37、骨密度β=-0.45)。また、カルシウムも同様に、骨塩量・骨密度ともに負の関連があった。反対にFSHは骨塩量・骨密度ともに正の関連があった。BUNは骨密度と正の関連があった。

マグネシウム、FSH、甲状腺ホルモンが重要な関連因子

著者らは本研究を「エリート女性トレイルランナーという特殊なサンプルにおいて、高強度持久力トレーニングによって生じる可能性のある血液学的および骨密度測定上の不均衡に関する新たな知見を提供する、初の研究である」としている。横断研究のため因果関係の推論が制限されること、サンプルサイズが小さいことなどを限界点として挙げたうえで、結論は以下のようにまとめられている。

「我々の研究結果は、骨格の健康状態における顕著な局所的差異を強調している。大腿骨領域などの荷重のかかる皮質部位は高強度トレーニングに対して耐性があるように見えるが、腰椎は著しい脆弱性が認められ、この集団における骨の健康状態をモニタリングするための重要な部位であることを示している。また、マグネシウム、FSH、甲状腺ホルモンが重要な関連因子として特定された。これらの知見は、骨格の完全性を維持するうえで、ミネラル恒常性とホルモンバランスの間に潜在的な相互関連性があることを示唆している」。

アスリートでは、血清ミネラルが正常であっても骨では枯渇していることがある

なお、論文の考察において著者らは、本研究で認められた血液検査値と骨指標の関連のメカニズムについて、「動的な骨代謝回転バイオマーカーをみていないため裏付けのない推測ではあるが」と断ったうえで、以下のようにまとめている。

まず、BUNが大腿骨頸部の骨塩量と正相関したことは、荷重のかかる部位でのコラーゲン合成を支えるタンパク質代謝の影響が考えられるという。血糖値と大腿骨頸部の骨指標との負の関連は、マトリクスの完全性を損なう終末糖化産物の影響に言及している。

マグネシウムが多くの骨指標と比較的大きな負の関連を示したことについては、慢性的な身体的ストレスまたはエネルギー不足の下では、骨格は細胞外マグネシウムレベルを維持するための動的な交換可能なプールとして機能し、運動誘発性のマグネシウム損失(発汗、腎排泄など)に応じて骨マトリクスから動員されている状態を見ているのではないと仮説を述べている。

これらの考察とともに、「アスリートでは、ミネラルなどの正常な血清レベルが栄養の適切さではなく、逆説的に骨のプールの枯渇を反映している可能性があることを強調している」と付け加えている。

なお、研究参加者全員にBUNの上昇がみられた点については、「トレーニング負荷とタンパク質ターンオーバーの加速を反映していると考えられる。この集団ではタンパク質が二次的なエネルギー源として利用されやすいこと、および、遠心性筋損傷により窒素性老廃物が増加する」と述べ、クレアチニンが正常であることなどから腎障害の可能性を否定している。

文献情報

原題のタイトルは、「Relationships Between Hematological Variables and Bone Metabolism in Elite Female Trail Runners」。〔Healthcare (Basel). 2026 Jan 13;14(2):200〕 原文はこちら(MDPI)

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スポーツ栄養Web編集部


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妊娠期の葉酸不足が子の肝臓・筋肉への異所性脂肪の蓄積を促進することがわかった。九州大学、福岡歯科大学などの研究グループの研究によるものであり、論文が「Diabetes Research and Clinical Practice」に掲載されるとともに、プレスリリースが発行された。妊娠中に追加摂取が推奨されている葉酸が子どもの代謝に与える長期的影響についてはこれまで未解明だった。研究者らは、本研究は妊娠母体の葉酸不足が子どもの脂肪蓄積に及ぼす影響とそのメカニズムを初めて証明し、妊娠中の栄養管理による次世代の生活習慣病予防が期待される知見としている。

研究の概要:妊娠中の葉酸不足の影響は神経管閉鎖障害だけでない

葉酸は神経管閉鎖障害※1の予防に不可欠な栄養素として知られており、日本でも現在、妊婦前から妊娠中にかけて、食事に加えて1日あたり約0.4mgの追加摂取が推奨されている。しかし、妊娠中の葉酸レベルが、子どもの将来の肥満や代謝疾患リスクにどのような影響を及ぼすかについてはわかっていなかった。

九州大学大学院歯学研究院OBT研究センター、福岡歯科大学口腔医学研究センターの研究グループは、シンガポール国立大学、国立台湾大学との国際共同研究により、妊娠中の母親の血中葉酸濃度が低いほど成長後の子どもに肥満が生じやすく、さらに肝臓や筋肉に脂肪が蓄積しやすくなることを初めて明らかにした。

肝臓や筋肉に脂肪がたまる「異所性脂肪」は、インスリンの効きが悪くなるなど、さまざまなエネルギー代謝異常の原因となることが知られている。研究チームは、妊娠母体の葉酸不足による産仔の異所性脂肪蓄積の仕組みも明らかにした。

葉酸は「一炭素代謝※2」と呼ばれる重要な代謝経路に関わっている。この経路は、アミノ酸の一つであるメチオニンの代謝や、体内のエネルギー利用システムに深く関係しており、とくに肝臓で活発に働いている。妊娠中に母体の葉酸が不足すると、産仔の脂肪組織だけでなく、肝臓や筋肉においても一炭素代謝に重要な役割を担うAmd1(アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ1)遺伝子の発現が低下していた。その結果、脂肪酸を代謝してエネルギーに変えるβ酸化がうまく働かなくなり、各組織で脂肪が燃焼しにくい状態になることがわかった。

図1

妊娠中に葉酸が不足すると、子どもの成熟後に肥満や異所性脂肪蓄積(脂肪肝、脂肪筋)が生じた。これには、肝臓や骨格筋におけるAmd1遺伝子の発現低下による脂肪酸の代謝効率低下が関与していた。

(出典:九州大学)

さらに本研究では、シンガポールの出生コホート(GUSTO:Growing Up in Singapore Towards healthy Outcomes※3)のデータを解析した。

その結果、妊娠26週目の母親の血中葉酸濃度が低いほど、子どもが6歳になった時点で肝臓や筋肉に蓄積している脂肪量が多いことが確認された。なお、これらの母親のほとんどは、妊娠中に葉酸サプリメントを摂取していた。つまり、妊娠中に摂取する葉酸の量だけでなく、実際の血中葉酸濃度を適切に維持することが重要である可能性が示された。

研究者らは、「これまで病気の原因は主に遺伝や出生後の環境にあると考えられていたが、出生前(妊娠母体)の環境因子も、病気の発症に影響を及ぼすことが証明された。今回の研究では、妊娠母体の一つの栄養素が不足するだけで、子どもが脂肪を溜め込みやすくなることがわかった。妊娠前あるいは妊娠中の栄養管理の重要性を医療関係者のみならず、多くの方々に知っていただきたい」とコメントしている。

プレスリリース

妊娠期の葉酸不足が子の肝臓・筋肉への異所性脂肪蓄積を促進−将来の肥満・糖尿病予防に期待−(九州大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Low maternal folic acid during pregnancy exacerbates ectopic fat accumulation in the liver and muscle of male offspring」。〔Diabetes Res Clin Pract. 2026 Mar:233:113161〕 原文はこちら(Elsevier)

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スポーツ栄養Web編集部


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スポーツ庁は、令和7年度の「スポーツの実施状況等に関する世論調査」および「障害児・者のスポーツライフに関する調査研究」の結果を公表した。前者からは、1週間あたりの運動・スポーツ実施時間は69分であり、性・年齢層で大きな差があって、とくに性別肝の差は過去最大となったことが報告された。また後者では、障害者の週1日以上のスポーツ実施率は20歳以上で35.0%、7~19歳で38.3%であると報告されている。

令和7年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」

スポーツ実施率の推移と性・年齢層別のスポーツ実施率

  • 20歳以上の週1日以上のスポーツ実施率は、51.7%となり、令和4年以降ほぼ横ばいで、平成29年と比較しても同程度。
  • 男女別では、男性が55.0%、女性が48.8%で、男性より女性の実施率が低い状態が続いており、かつ男女の差が拡大し、男女差は過去最大。また、男女差は、学生期~40代にかけて大きい。
  • 年代別では、20~50代の子育て・働き盛り世代で引き続き低い傾向。

図1 20歳以上のスポーツ実施率の推移

【調査方法について】本調査は昭和54年度から概ね3年ごとに実施してきた「体力・スポーツに関する世論調査」(平成27年度のみ「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」)を踏襲するものであるが、調査方法に関しては平成28年度より調査員による個別面接聴取(標本数3,000人)からWEBアンケート調査(令和3年度まで:20,000人を対象、令和4年度から:40,000人を対象)に変更している。 ※第3期スポーツ基本計画(R5年度~8年度)においては、「成人のスポーツ実施率」は「20歳以上のスポーツ実施率」を用いて評価することとしている。

※運動・スポーツ種目については、スポーツの捉え方に関するその時々の状況を踏まえて検討をしている。

(出典:スポーツ庁)

図2 性年代別スポーツ実施率(週1日以上)

運動・スポーツの実施時間

  • 20歳以上の1週間あたりの運動・スポーツ実施時間の中央値は、69.0分(男性90.0分、女性59.8分)。
  • 性・年齢層別にみると、男女ともに20~50代の子育て・働き盛り世代と、60代以上の世代で大きな差があり、とくに20~50代女性の運動・スポーツ実施時間が1週間あたり30~40分程度と顕著に短く、同世代の男性と比べても半分程度にとどまっている。

図3 運動・スポーツの実施時間(男性:左図、女性:右図)

令和7年度「障害児・者のスポーツライフに関する調査研究」

障害者の運動・スポーツの実施率について

過去1年間に運動・スポーツを行った日数についての調査結果より、実施頻度が週1日以上の実施者の割合について、20歳以上と7~19歳に分けて集計した。その結果、20歳以上では35.0%、7~19歳では38.3%であった。令和6年度と比較すると、週1日以上の実施率は、20歳以上は増加、7~19歳は横ばいとなった。

図4 障がい児・者の運動・スポーツの実施率の推移

(出典:スポーツ庁)

運動・スポーツに対する関心

20歳以上の回答者について、過去1年間の運動・スポーツへの取り組みについて実施頻度別にみると、週1日以上の実施者では「満足している」が41.2%と最も多く、次いで「もっと行いたい」が23.1%であった。

週1日未満の実施者で最も多かったのは「関心はない」が43.4%、次いで「行いたいと思うができない」が28.2%であった。1年間に1日も運動・スポーツを行っていない者では「関心はない」が73.6%と最も多く、次いで「行いたいと思うができない」が24.7%であった。

図5 現在の運動・スポーツ等の取り組み(n=2,603)

(出典:スポーツ庁)

運動・スポーツの実施の障壁

本調査において「障害のあるあなたご自身の運動・スポーツの取り組みについて障壁となっているものは何ですか」という質問も行っている。この20歳以上の回答状況を、スポーツ実施の頻度や運動・スポーツへの関心により二つの層について確認したところ、以下のとおりであった。

図5 過去1年間での運動・スポーツの実施頻度が「週1日未満」の実施者のうち「運動・スポーツを行いたいと思うができない」者の障壁(n=176)

(出典:スポーツ庁)

図6 過去1年間に1日も運動・スポーツを実施しなかった「非実施者」のうち「特に運動・スポーツに関心はない」者の障壁(n=637)

(出典:スポーツ庁)

関連情報

令和7年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」 の結果を公表します(スポーツ庁) 令和7年度「障害児・者のスポーツライフに関する調査研究」の調査結果について(スポーツ庁)

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暑さにより身体活動やエネルギー消費量は平均的に低下するが、身体活動が維持されている人ほど水の代謝回転量も増えていることがわかった。東北大学の研究グループの研究によるものであり、論文が「Scientific Reports」に掲載されるとともに、同大学のサイトにプレスリリースが発行された。研究者らは、猛暑が増える社会において高齢者の適切な水分補給の目安づくりにつながる重要な成果としている。

発表のポイント

  • 体内の水の動きを高精度で測定できる国際標準法「二重標識水法※1」を用い、日常生活の中で調べた。
  • 平均気温29°Cの夏では、高齢者の体内の水の代謝回転量※2が春より約640mL/日増加した。
  • 暑さにより身体活動やエネルギー消費量は平均的に低下するが、身体活動が維持されている人ほど水の代謝回転量も増えていることがわかった。
  • 猛暑が増える社会において、高齢者の適切な水分補給の目安づくりにつながる重要な成果である。

研究の概要:高齢者の熱中症対策を新たな視点で着目

近年、気候変動の影響で猛暑日が増加している。とくに高齢者は暑さに弱く、適切な水分補給が重要。しかし、暑い環境において自由に生活を送る場合、体内の水がどの程度代謝されているのかは十分にわかっていなかった。

東北大学の研究グループは、京都府亀岡市に住む65歳以上の高齢者26人を対象とし、春(平均19°C)と夏(平均29°C、最高35°C)で体内の水の代謝を比較した。その結果、夏には体内の水の代謝回転量が1日あたり約640mL増加することが明らかになった。一方で身体活動やエネルギー消費量は平均的に減少していたが、夏の身体活動が維持されている人ほど水の代謝回転も増えるという関連がみられた。

本成果は、暑熱環境下における高齢者の水分管理の重要性を示している。

詳細な説明:自由な生活環境下での暑熱環境での水の代謝を探る

研究の背景:高齢者は脱水症になりやすい――その理由は?

気候変動に伴う地球温暖化により、世界各地で猛暑日や長期間の高温が増えている。こうした暑さは、心臓や呼吸器の病気などの健康リスクを高めることが知られている。とくに高齢者は暑さに弱く、体温をうまく調節できなくなることや、発汗機能の低下などが起こりやすいとされている。

実際に、猛暑による死亡の割合は65歳以上で高いことが報告されている。そのため、温暖化を抑える取り組みだけでなく、暑さに備える対策も重要。しかし、自由に生活できる環境下において、気温の変化によって高齢者の体内で水がどの程度代謝されているのか、また実際の水分摂取量がどのように変わるのかは十分に明らかになっていなかった。

研究の取り組み:春と夏の2回にわたり二重標識水法で代謝を検討

本研究グループは、水分摂取量、エネルギー摂取量・消費量、身体活動量を測定し、季節の違いによって体内の水の代謝がどのように変化するかを調べた。

京都府亀岡市に在住する65歳以上の高齢者26人を対象に、春と夏の2回にわたり調査を実施した。体内の水の代謝やエネルギー消費量を正確に測定できる二重標識水法を用い、2週間にわたり日常生活下で測定した。

その結果、体内の水の代謝回転量は夏に約640mL/日増加することが明らかにされ、エネルギー消費量は約149kcal/日減少することが明らかとなった(図1)。とくに、体内の水の代謝回転量は、暑い夏に全体として増加するだけでなく、身体活動量の維持に水の代謝回転の増加が必要であることがわかり(図2)、暑熱環境下では身体活動と水分代謝が密接に関連していることが示された。

図1 高齢者における春と夏の水の代謝回転と身体活動の比較

春(平均19°C)と夏(平均29°C)における体内の水の代謝回転量と身体活動量を比較したもの。夏には水の代謝回転量が増加する一方で、身体活動量は低下する傾向がみられた。

(出典:東北大学)

図2 高齢者における春と夏の水の代謝回転と身体活動との関連

春と比べて夏にどれだけ水の代謝回転量が変化したかと、身体活動量の変化との関係を示している。夏に水の代謝回転が増えた人ほど、身体活動も維持または増加している傾向がみられた。

(出典:東北大学)

今後の展開:身体活動量や体格差を踏まえた水分摂取の目安づくりへ

本研究により、猛暑環境下で高齢者の体内の水代謝が大きく変化することが明らかになった。とくに水の代謝回転量は身体活動量と関連しており、暑さの中で活動量が増えた人ほど水の代謝回転量も増えることが示された。今後は、より大規模な研究を通じて、個人の身体活動量や体格の違いを踏まえた水分摂取の目安づくりにつなげていくことが期待される。

また、これまでの研究では高齢者の身体活動量が体力や健康状態と関連することが示されている。猛暑が増える社会においては、暑さ対策と同時に身体活動を安全に維持する方法を検討することが重要。本成果は、高齢者の健康を守るための水分管理と身体活動戦略の両面に科学的根拠を与えるものとして活用されることが見込まれる。

プレスリリース

暑さで1日の水の代謝回転はどう変わる? -高齢者の水代謝を二重標識水法で解明-(東北大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Hydration, water requirements, and energy balance from spring to summer in free-living older adults: a doubly labelled water study」。〔Sci Rep. 2026 Feb 19;16(1):9872〕 原文はこちら(Springer Nature)

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スポーツ栄養Web編集部


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歯科医院の外来での栄養指導と口腔機能トレーニングによって、患者の食生活の多様性と口腔機能が有意に改善したという、縦断研究の結果が報告された。あかま歯科クリニック(福岡県)の赤間愛美氏、九州歯科大学摂食嚥下リハビリテーション学分野の藤井航氏らによる論文が、「Annals of Geriatric Medicine and Research」に掲載された。著者らは、歯科医院が地域在住高齢者のフレイル予防に貢献できるのではないかと述べている。

地域の歯科医院はフレイル予防の拠点になり得る

高齢者人口の増加を背景に、フレイルの予防が緊急性の高い社会的課題となっている。フレイルの主要な原因の一つは栄養不良であり、より多くの一般生活者が、食生活をフレイル予防に適したものへ改めることが期待される。しかし、ふだんの生活においてフレイル予防のための食事の摂り方を習得できる機会は多くない。

一方、適切な食生活の実現には、口腔機能が良好に保たれている必要がある。口腔機能の低下はオーラルフレイルとして位置付けられており、それが全身性フレイルのリスクを押し上げることも示されている。そして、地域の歯科医院を受診する患者の多くは、オーラルフレイル好発年齢である。以上より、地域在住高齢者の歯科受診は、フレイルに対する予防的介入を行う良い機会とみることが可能である。

赤間氏らはこのような状況を背景として、歯科医院の外来患者を対象に口腔機能トレーニングとともに栄養介入を行い、食事摂取状況や口腔機能、体組成にどのような変化が生じるかを縦断的に検討した。

歯科医院の外来患者に指導介入を行い、約1年間での変化を検討

この研究には、2023年4月~2024年8月に福岡市直方市内の歯科医院(単一施設)の外来患者から、同意の得られた50歳以上の患者103人が参加。追跡不能となった患者などを除外し74人(男性25人〈72.1±10.5歳〉、女性49人〈72.4±9.1歳〉)を解析対象とした。

研究参加時点(ベースライン)で口腔機能および食生活の多様性を評価後、栄養士・管理栄養士による栄養指導と、歯科衛生士による口腔機能トレーニングを実施。その後、3~4か月に1回の定期フォローアップ診療時にも指導を行い、約1年後に再度、口腔機能および食生活の多様性を評価した。

ベースラインの口腔機能

口腔機能について、日本老年歯科医学会による「口腔機能低下症」の診断基準に基づき、口腔衛生状態、口腔乾燥、咬合力、舌口唇運動機能、舌圧、咀嚼機能、嚥下機能の7項目を測定した。7項目中3項目以上が該当した場合を「口腔機能低下症」と診断、解析対象者の54.1%が該当した。

ベースラインの食生活の多様性

食生活の多様性の評価は、食生活の多様性スコア(Dietary Variety Score;DVS)によった。DVSは、魚介類、肉類、卵、牛乳、大豆製品、緑黄色野菜、海藻類、果物、いも類、油脂類という10種類の食品群について、1週間の摂取頻度が「ほぼ毎日食べる」場合は1点、それ以外は0点として、合計10点にスコア化する。スコアが高いほど、多様性が高いことを意味する。食事記録は、食事記録アプリ(もぐもぐ日記〈森永乳業クリニコ〉)、またはアンケート用紙を使用した。

解析対象者のベースライン時点でのDVSは4.31±2.69点だった。

ベースラインの体組成

解析対象者のベースライン時点のBMIは、女性22.4±3.4、男性24.3±2.7だった。

体組成は、生体電気インピーダンス法により測定した。体脂肪率は、女性31.1±7.3%、男性25.6±5.2%、筋肉量は同順に19±2.4kg、27.8±3.7kgであり、性別による有意差が観察された。

1年後に口腔機能とともに食生活の多様性スコア(DVS)も改善

約1年後(310.4±146.5日後)、評価した7項目の口腔機能のすべてに改善傾向が認められ、舌圧などは有意に改善していた。また、口腔機能低下症の有病率は54.1%から24.3%へと有意に低下していた(p<0.01)。<>

さらに、DVSも、4.31±2.69点から5.93±2.56点へと有意に上昇していた(p<0.01)。食品群別にみた場合、大豆製品と緑黄色野菜を除く8種類の食品群はいずれも有意にスコアが上昇していた。<>

一方、体組成に関しては有意な変化が認められなかった。

歯科での栄養指導で地域住民の健康をサポート

結論として、「地域の歯科医院において栄養管理と口腔機能の双方を重視した介入を行うことが、高齢者の健康維持と改善に貢献し、健康寿命の延長に重要な役割を果たす可能性があることが示唆された」と総括されている。また、「歯科医院が歯科衛生士とともに栄養士を雇用することで、より専門的な栄養サポートが可能になり、地域住民の健康状態の改善にいっそう寄与できるのではないか」との考察も加えられている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Association between Dietary Variety, Oral Function, and Body Composition among Outpatients at a Community Dental Clinic」。〔Ann Geriatr Med Res. 2026 Mar;30(1):101-108〕 原文はこちら(Korean Geriatrics Society)

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0.01)。食品群別にみた場合、大豆製品と緑黄色野菜を除く8種類の食品群はいずれも有意にスコアが上昇していた。<>0.01)。<>

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厚生労働省はさきごろ、「令和6年国民健康・栄養調査報告」を公表した。糖尿病が強く疑われる人が1,100万人にのぼること、都道府県別のBMIや野菜摂取量、食塩摂取量、歩数などの平均値の最低四分位群と最高四分位群との間に有意差があることなどが報告されている。一部を抜粋して紹介する。

BMIや生活習慣に関する都道府県の状況

BMIおよび生活習慣の状況を都道府県別に年齢調整したうえで、四分位数で4群に分けて比較した結果、BMIや野菜摂取量、食塩摂取量、歩数、喫煙者率(男性)に、最低四分位群と最高四分位群との間に有意差が認められた。

表1 体格(BMI)および生活習慣に関する都道府県の状況

(出典:厚生労働省)

BMIが高い都道府県は上位から順に、男性は高知(24.9)、岩手、徳島、女性は長崎(24.1)、福島、宮城であり、反対に低いのは下位順に、男性は滋賀(23.1)、愛媛、島根、女性は大阪(21.2)、愛知、京都。

野菜摂取量が多い都道府県は上位から順に、男性は福島(356g/日)、長野、新潟、女性は長野(322g/日)、福島、宮城であり、反対に少ないのは下位順に、男性は和歌山(220g/日)、北海道、長崎、女性は和歌山(204g/日)、北海道、福岡。

食塩摂取量が多い都道府県は上位から順に、男性は山梨(11.7g/日)、秋田、茨城、女性は宮城(9.8g/日)、長野、秋田であり、反対に少ないのは下位順に、男性は和歌山(9.1g/日)、沖縄、高知、女性は千葉(7.8g/日)、沖縄、山口。

歩数が多い都道府県は上位から順に、男性は徳島(9,570歩/日)、埼玉、宮城、女性は神奈川(8,861歩/日)、京都、滋賀であり、反対に少ないのは下位順に、男性は長崎(7,377歩/日)、鹿児島、岩手、女性は秋田(5,234歩/日)、石川、沖縄。

男性の現喫煙者率が高い都道府県は上位から順に、北海道(34.6%)、長崎、茨城、反対に低いのは下位順に、愛媛(14.5%)、奈良、徳島。なお、女性については全体的に喫煙者率が低く、誤差が大きいため都道府県別の比較はされていない。

糖尿病が強く疑われる人、可能性を否定できない人の推計

糖尿病が強く疑われる人(HbA1c6.5%以上)は約1,100万人と推計され、平成9年以降増加が続いている。糖尿病の可能性を否定できない人(同6.0%以上6.5%未満)は約700万人と推計され、平成19年との比較では減少した。

図1 糖尿病が強く疑われる人、可能性を否定できない人の推計

(出典:厚生労働省)

BMI

BMI18.5以上25未満(65歳以上の高齢者は20超25未満)の割合は60.7%で、20~60歳代男性の肥満者(BMI25以上)は34.0%、40~60歳代女性の肥満者は20.2%。

一方、20~30歳代女性のやせ(同18.5未満)は16.6%、高齢者の低栄養傾向(同20以下)は19.5%。

栄養バランスのとれた食事

主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上の日がほぼ毎日の割合(毎日+週6日)は52.8%。性別では男性52.3%、女性53.2%であり、年齢層別では20歳代が最低。

図2 主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度

(出典:厚生労働省)

食塩摂取量

食塩摂取量は平均9.6gで、性別では男性10.5g、女性8.9g。

図3 食塩摂取量の平均値

(出典:厚生労働省)

野菜摂取量

野菜摂取量は平均258.7gで、性別では男性268.6g、女性250.3g。年齢層別では高年齢層で多い。

図4 野菜摂取量の平均値

(出典:厚生労働省)

果物摂取量

果物摂取量は平均78.1gで、性別では男性70.4g、女性84.7g。年齢層別では70歳以上で多い。

図5 果物摂取量の平均値

(出典:厚生労働省)

運動習慣

運動習慣のある人(1回30分以上の運動を週に2回以上、1年以上継続している人)の割合は34.6%であり、性別では男性38.5%、女性31.5%。年齢層別では30~40代で低い。

図6 運動習慣のある人の割合

(出典:厚生労働省)

歩数

歩数の平均は7,071歩で、性別では男性が7,763歩、女性6,495歩。

図7 歩数の平均値

(出典:厚生労働省)

睡眠時間

平均睡眠時間が6時間以上9時間未満(60歳以上では6時間以上8時間未満)の割合は56.0%で、性別では男性56.1%、女性55.9%。

図8 1日の平均睡眠時間

(出典:厚生労働省)

睡眠による休養

過去1カ月で、睡眠により休養が取れているのは79.6%で、性別では男性80.4%、女性78.9%。年齢層別では20~59歳で73.0%、60歳以上は86.1%。

図9 睡眠の状況

(出典:厚生労働省)

飲酒

生活習慣病(NCDs)のリスクを高める量の飲酒者は11.4%で、性別では男性13.9%、女性9.3%。年齢層別では男性の60歳代(21.6%)、女性の50歳代(18.4%)で高い。

なお、生活習慣病(NCDs)のリスクを高める量とは、純アルコール量として1日に男性は40g以上、女性は20g以上。

図10 生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している人の割合

(出典:厚生労働省)

喫煙

習慣的喫煙者は14.8%で、性別では男性24.5%、女性6.5%。男性は40~50歳代で高く3割を超えている。

習慣的喫煙者において、タバコの種類は紙巻きタバコが男性65.4%、女性60.0%、加熱式タバコは同順に41.4%、44.2%。

図11 現在習慣的に喫煙している人の割合

(出典:厚生労働省)

図12 現在習慣的に喫煙している人の割合の年次推移

(出典:厚生労働省)

詳細はこちら

令和6年国民健康・栄養調査報告(厚生労働省)

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スポーツ栄養Web編集部


Page 17

生体電気インピーダンス法で測定される位相角(PhA)やインピーダンス比(IR)が、投擲選手のパフォーマンスのマーカーとなり得ることを示すデータが報告された。国内の大学生選手対象横断調査の結果、世界陸連(World Athletics)のスコア(WAスコア)とPhAは正相関、IRは逆相関するという。岡山県立大学情報工学部の大下和茂氏、村井聡紀氏、九州共立大学スポーツ学部の疋田晃久氏、名頭薗亮太氏の研究であり、論文が「Physiological Reports」に掲載された。

生体電気インピーダンス法によるPhAやIRのスポーツ領域での意義

生体電気インピーダンス法(bioelectrical impedance analysis;BIA)は、体脂肪量などの体組成の評価ツールとして広く使われている。ただしBIAで測定できるのは体組成のみではなく、細胞膜や体内の水分の分布、筋肉の質などの評価も可能。

例えば、電流と電圧の位相差から算出される「位相角(phase angle;PhA)」は、細胞膜の機能や栄養状態を反映し、高値であるほど良好と判断される。また、高周波電流での抵抗と低周波電流での抵抗の比である「インピーダンス比(impedance ratio;IR)」は、体内の水分の分布や細胞の健康状態を反映し、低値であるほど良好と判断される。BIAによる体組成の評価結果が年齢や性別、身長などのパラメーターを用いて算出されるのに対して、PhAやIRは測定した実数そのものを評価に用いるという違いがあることからも、体組成関連指標とは異なる意味を有すると考えられている。

実際、PhAは既に高齢者診療などの臨床や研究の目的で用いられているほか、近年ではアスリートのパフォーマンスの予測や筋肉の質の評価に援用する研究がなされてきている。BIAは被曝がなく繰り返し施行でき、簡便で低コストであるという特徴も、これらの研究を後押ししている。

とはいえ、スポーツ領域でのPhAのエビデンスはまだ十分とは言えず、IRに関してはより少ない。以上を背景として著者らは今回、投擲選手のパフォーマンスをPhAやIRで予測可能かを検討した。なお、先行研究では、既存の体組成指標(体重や除脂肪体重など)は一定レベル以上の投擲選手の投擲選手のパフォーマンスと一貫した関連がみられず、競技レベルや種目などによって異なる結果が報告されてきているという。

位相角(PhA)やインピーダンス比(IR)は競技成績と相関

この研究は、国内の大学または大学院で投擲競技を行っている学生64人を対象とする横断研究として行われた。性別と年齢、種目の内訳は、男性が39人で19±1歳、やり投げ14人、円盤投げ13人、ハンマー投げ7人、砲丸投げ5人、女性は25人で19±1歳、やり投げ11人、円盤投げ5人、ハンマー投げ6人、砲丸投げ3人。競技レベルはMcKayらの定義に基づくと、Tier2(育成段階)またはTier3(国内レベル)であり、一部の選手はTier4(国際レベル)だった。

位相角(PhA)高値ほど競技成績良好、インピーダンス比(IR)高値ほど競技成績不良

競技成績は、WAスコアにより評価した。男性は832.9±105.7、女性は852.8±90.3だった。

一方、全身で評価した位相角(PhA)は同順に7.53±0.43°、6.47±0.37°、インピーダンス比(IR)は0.742±0.015、0.772±0.013だった。なお、BMIは28.9±4.2、26.0±3.1、除脂肪体重(fat-free mass;FFM)は、72.5±7.4kg、49.2±3.2kgだった。

これらの相関を性別に検討した結果、男性において、PhAはWAスコアと有意な正相関(r=0.454、p=0.004)、IRはWAスコアと有意な逆相関(r=-0.454、p=0.004)するという関連が認められた。また、FFMもWAスコアとの正相関が認められたが(r=0.338、p=0.035)、相関係数はPhAのほうが高値だった。BMIに関してはWAスコアとの有意な関連が認められなかった。

女性も同様に、PhAはWAスコアと有意な正相関(r=0.523、p=0.007)、IRはWAスコアと有意な逆相関(r=-0.491、p=0.013)が認められた。BMI、および男性では有意な相関のあったFFMは、女性では関連が非有意だった。

WAスコアの高値群と低値群で比較すると、PhAとIRに有意差

次に、WAスコアの中央値(男性は804、女性は851)に基づき、全体を性別ごとに二分したうえで、FFM、PhA、IRを比較。すると以下のように、いずれも群間に有意差が認められたが、効果量(Cohenのd)はFFMよりPhAやIRのほうが大きかった。

PhAとIRは投擲競技のパフォーマンスマーカーとなり得る

以上の結果に基づき論文の結論は、「国内の大学陸上競技投擲選手において、WAポイントとFFMの関連は男性のみ有意で女性は非有意だった。それに対してPhAとIRは性別にかかわらず、WAポイントとの有意な関連が示された。PhA、IRという筋肉の質も反映する指標は、投擲パフォーマンスの有用なマーカーとなり得るのではないか」と総括されている。

なお、研究の限界点として、BIAを施行した時期とWAポイントが最高値を示したタイミングが最大で半年ほどずれていたことが、解析結果に影響を及ぼした可能性のあること、および、対象がTier2、3中心であったことなどが挙げられ、さらなる研究が必要と述べている。また、「PhAやIRとWAポイントが有意に相関するとはいえ、相関係数は0.5前後で十分に高いとはいえず、投擲競技のパフォーマンスにはテクニカルな面も重要と考えられる」と付け加えられている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Phase angle, impedance ratio, and athletic performance of young adult Japanese track and field throwers」。〔Physiol Rep. 2026 Apr;14(7):e70835〕 原文はこちら(John Wiley & Sons)

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スポーツ栄養Web編集部


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持久性運動中の糖質摂取により、腸管血流が増加することで活動肢血流の増加が抑制されるという血流配分に変化が生じることが明らかとなった。県立広島大学地域創生学部地域創生学科の遠藤(山岡)雅子氏らがヒトを対象として実施した研究であり、その成果は米国生理学会発行ジャーナル「Journal of Applied Physiology」に論文が掲載された。心拍出量には有意な変化が認められず、糖質摂取がエネルギー基質の供給と活動肢血流の制約という、トレードオフをもたらす可能性が示唆された。

運動中の糖質摂取は腸管血流を増加させるのか、また、活動肢血流に影響を及ぼすのか?

持久系競技では、糖質摂取は主要なエネルギー供給のための戦略として用いられている。

しかし一方で、糖質摂取後には消化・吸収に伴い消化管への血流が増加することが知られている。この際、心拍出量が大きく変化しない場合、消化管への血流増加は他の部位への血流配分に影響を及ぼす可能性がある。

運動時には消化管血流は減少することが一般的であるが、糖質摂取によりその低下が緩和されることが報告されている。しかし、運動中における消化管と活動肢の血行動態を同時に評価したヒト対象研究はこれまで存在せず、この点は重要な研究課題として残されていた。遠藤(山岡)氏らはこの点を明らかにするため、以下の検討を行った。

12人を対象としたクロスオーバー試験により、運動中の糖質摂取が各部位への血流および心拍出量へ及ぼす影響を検討

この研究では、活動肢血流の評価を可能にするため、半臥位で膝伸展運動が可能なエルゴメーターを作成。血流量は、超音波ドップラー法により、消化管は上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;SMA)、活動肢は大腿動脈(femoral artery;FA)、非活動肢は上腕動脈(brachial artery;BA)で測定した。また、皮膚血流はレーザードップラー法により、前腕および胸部で測定した。

運動中にブドウ糖溶液を摂取する条件と水を摂取する条件のクロスオーバー法を採用。これにより2種類の飲料条件×3つの測定部位(SMA、FA、BA)となり、1人あたり計6回の試行を実施した。

事前の統計解析により、ブドウ糖溶液摂取によるSMA血流の差を検出するために必要なサンプルサイズは10と算出されたため、被験者数は12人(21.0±1.3歳、男女各6人、BMI:20.1±1.7)とした。対象者はいずれも健康で、正常血圧、非喫煙者であり、消化器疾患や心血管疾患、肥満の既往、および手術歴がなく、また薬剤やサプリメントも服用していなかった。

40分の持久性運動中、運動開始9~10分でブドウ糖溶液または水を摂取して比較

各試行は、同一曜日・同一時間帯に、標準化された朝食摂取3時間後に実施し、試行順序は無作為化した。前日からカフェインおよびアルコール摂取、激しい運動を禁止した。

運動強度は、無酸素性作業閾値とVO2peakの差の30%に設定し、回転数60回/分で40分間の膝伸展運動を実施した。運動開始約9分後にブドウ糖溶液または水を1分以内に摂取し、各部位の血流量、心拍出量、ガス交換諸量などを連続的に測定した。

ブドウ糖は50 gであり、味をマスクするために両条件ともに10 mLのレモン果汁を添加し、総量は300 mLとした。

ブドウ糖溶液の摂取により局所の血流配分は変化したが、心拍出量に条件間による有意差なし

水摂取条件では、摂取後に上腸間膜動脈(SMA)および大腿動脈(FA)血流に大きな変化は認めらなかった。一方、ブドウ糖溶液摂取条件では、摂取後にSMA血流は増加し、FA血流では運動に伴う増加が抑制された。上腕動脈(BA)と皮膚血流および心拍出量の増加に条件間の有意差はなかった。

詳細は以下のとおり。

上腸間膜動脈(SMA)血流の変化

運動開始前からブドウ糖溶液または水を摂取するまでは、SMA血流に条件間の差はなかった。ブドウ糖溶液摂取条件では摂取後にSMA血流が増加し始めたが、水摂取条件では摂取後に変化しなかった。運動開始25分後から、運動終了の10分後(観察を終えた時点)まで、連続して条件間に有意差が認められた。

運動中のSMA血管コンダクタンス(血流量を血圧で除した値で、血液の流れやすさの指標)は、ブドウ糖溶液摂取条件の方が摂取後に有意に高値だった(p=0.037)。

大腿動脈(FA)血流の変化

運動開始前からブドウ糖溶液または水を摂取するまでは、FA血流に条件間の差はなかった。ブドウ糖溶液摂取条件では摂取後にFA血流の運動に伴う増加が抑制されたが、水摂取条件では摂取後に変化しなかった。運動開始15分後から、運動終了まで連続して条件間の有意差が認められた。運動終了と同時に両条件ともFA血流は減少し、条件間の有意差は消失した。

運動中のFA血管コンダクタンスは、ブドウ糖摂取条件の方が摂取後に有意に低値だった(p=0.001)。

上腕動脈(BA)や皮膚血流の変化

BAや皮膚(前腕と胸部)血流はいずれも運動開始後に漸増し、運動終了により減少した。条件間で有意差が観察されたポイントはなかった。

心拍数、心拍出量、血圧の変化

心拍数、心拍出量、血圧はいずれも運動開始とともに上昇し、運動終了により低下した。条件間の有意差はなかった。

パフォーマンスへの影響を明確にするためには、さらなる検討が必要である

以上より、運動中の糖質溶液の摂取は、腸管血流を増加させる一方で活動肢血流の増加を抑制するといった血流配分の変化が認められた。また、この活動肢血流の抑制は心拍出量の増加によっては補償されないと考えられた。なお、論文では上記のほかに、胃排泄はブドウ糖溶液摂取条件で遅延すること、VO2やVCO2には有意差がないこと、血行動態への影響について性別による交互作用は認められないことなどが記されている。

著者らは本研究を、ヒトにおいて運動中の糖質摂取におけるSMAおよびFA血流を同一条件下で評価した初の報告とし、局所的な循環調節に関する理解を大きく前進させるものだとしている。一方、研究の限界点として半臥位での運動様式や運動時間の制約があり、実際の競技環境や疲労困憊に至る長時間運動とは異なることから「本研究の結果を競技パフォーマンスへ直接的に結びつけて解釈することには留意が必要である」としている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Effects of glucose ingestion on blood flow in the small intestine and exercising limbs during endurance exercise」。〔J Appl Physiol (1985). 2026 Apr 2〕 原文はこちら(American Physiological Society)

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家族人数が少ない家庭ほど子どもの食物アレルギーが多い傾向のあることが、エコチル調査※1から報告された。名古屋市⽴⼤学などの研究グループによる論文が「Allergy」に掲載されるとともに、同大学のサイトにプレスリリースが掲載された。

研究成果の概要

家族人数が少ない家庭ほど、子どもの食物アレルギーの割合が高い傾向があることが明らかになった(例えば2人世帯では6.4%、8人世帯では3.2%)。エコチル調査愛知ユニットセンターの研究グループが、エコチル調査の約7万人の出生コホートデータを解析したもの。

鶏卵やピーナッツなどのアレルゲン食品は、家族人数の少ない家庭ほど導入時期が遅い傾向がみられた。これらの食品は乳児期に早期導入することで食物アレルギーの発症リスクが低下することが報告されている。こうしたなか、本研究の結果は家庭環境と乳児期の食行動との関連を示唆するもので、近年増加している食物アレルギーの理解や予防に資する新たな知見となった。

研究のポイント

  1. エコチル調査で得られた約7万人の出生コホートデータを用いて、家族人数と小児食物アレルギーの関連を解析した。
  2. 家族人数が少ない家庭ほど4歳時の食物アレルギーの割合が高い傾向がみられた(2人世帯6.4%、8人世帯3.2%)。
  3. 鶏卵やピーナッツなどのアレルゲン食品は、家族人数の少ない家庭ほど導入が遅い傾向がみられた。さらに、兄弟姉妹の影響をできるだけ除くため、第1子のみの家庭を対象に解析したところ、祖父母や親族が同居する拡大家族世帯では導入が早い傾向がみられた。
  4. これらの食品は早期導入により食物アレルギーの発症リスクが低下することが報告されており、家庭環境と乳児期の食行動との関連が示唆された。
  5. 近年増加している食物アレルギーの背景を考えるうえで、少子化や核家族化などの家庭環境の変化に着目した新たな視点を示す知見といえる。

研究の背景

食物アレルギーは近年、世界的に増加しているアレルギー疾患の一つ。その原因は十分には解明されていない。これまで、家族人数が多いほどアレルギーが少ない現象は、乳幼児期の感染機会の違いによって説明される「衛生仮説」※3で議論されてきた。

一方で近年、乳児期の食事導入の時期や方法が食物アレルギーと関係することが報告されている。鶏卵やピーナッツなどの食品は、乳児期に早期導入することで食物アレルギーのリスクが低下する可能性が示されている。

しかし、家族人数などの家族構造が乳児期の食事導入とどのように関連するかは十分に検討されていない。そこで本研究では、エコチル調査の出生コホートデータを用いて、家族人数と小児食物アレルギーの関連を検討した。

研究の成果

本研究では、エコチル調査に参加した子どものうち、条件を満たした7万1,315人を対象に解析を行った。妊娠登録時の同居家族人数(児本人を除く)を家族人数として分類した。主要評価項目は、4歳時点の医師診断による食物アレルギーとした。また、1歳時点での卵やピーナッツなどの食品の導入時期を家族人数別に比較した。

その結果、家族人数が少ない家庭ほど、4歳時の食物アレルギーの割合が高い傾向がみられた(図1)。2人世帯では6.4%、8人世帯では3.2%だった。また、鶏卵やピーナッツなどのアレルゲン食品は、家族人数の少ない家庭ほど導入が遅い傾向がみられた(図2)。さらに、兄弟姉妹の影響をできるだけ除いて家庭環境との関連を検討するため、第1子のみの家庭を対象に家族構造別の食品導入時期を検討したところ、祖父母や親族が同居する拡大家族世帯では、核家族世帯と比べて鶏卵やピーナッツの導入が早い傾向がみられた(図3)。

なお、本研究は観察研究であり因果関係を示すものではない。

図1 家族人数と4歳時アレルギー疾患の有病割合

家族人数(本人を除く)別に、4歳時のアレルギー疾患の有病割合を示している。食物アレルギーでは、家族人数が少ない家庭ほど有病割合が高い傾向がみられた。一方、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息では明確な関連は確認されなかった。

(出典:名古屋市⽴⼤学)

図2 家族人数と鶏卵・ピーナッツの導入時期

家族人数(本人を除く)別に、鶏卵およびピーナッツの導入時期を示している。鶏卵やピーナッツは、家族人数の少ない家庭ほど導入が遅い傾向がみられた。乳児期の早期導入が食物アレルギー予防と関連すると報告されており、本研究では家庭環境と乳児期の食行動の関連が示唆された。(導入時期は生後6カ月以下、7〜8カ月、9〜10カ月、11〜12カ月、13カ月以上で分類。空白部分は1歳時点の調査で未摂取であった児を示している)

(出典:名古屋市⽴⼤学)

図3 家族構造と鶏卵・ピーナッツの導入時期(第1子家庭)

第1子のみの家庭を対象に、家族構造別に鶏卵およびピーナッツの導入時期を示している。家族構造は、(1)核家族(両親のみ)、(2)祖父母同居世帯、(3)叔父・叔母などを含む拡大家族世帯の3群に分類した。その結果、拡大家族世帯では、核家族と比べて鶏卵やピーナッツの導入が早い傾向がみられた。これらの結果は、家族構造の違いが乳児期の食事導入時期に関連している可能性を示している。

(出典:名古屋市⽴⼤学)

研究の意義と今後の展開

本研究は、家族人数と小児食物アレルギーの関連を大規模出生コホートで示した。少子化や核家族化が進む現代社会では、家庭環境や育児行動が大きく変化している。こうした変化が乳児期の食事導入と関係している可能性がある。

今後、家族人数などの家族構造と乳児期の食行動との関係をさらに解析することで、少子化社会における食物アレルギー増加の背景の理解が進むことが期待される。また、乳児期の食事導入に関する知見の蓄積は、食物アレルギー予防に役立つ情報につながると期待される。

補足

家族人数の定義

本研究では、妊娠登録時点で同居している家族人数(本人を除く)を家族人数として定義した。

乳児期の食事導入について

近年、鶏卵やピーナッツなどの食品は、乳児期に適切な時期に導入することで食物アレルギーの発症リスクが低下する可能性が報告されている。一方で、食事導入の時期や方法は個々の健康状態や医療的判断によって異なるため、実際の食事導入については医療専門職の助言に従うことが重要。

本研究の位置づけ

本研究は、家族人数や家族構成などの家族構造と乳児期の食行動との関連を、大規模出生コホートデータを用いて検討した研究。食物アレルギーの原因を直接示すものではない。

プレスリリース

家族人数が少ない家庭ほど子どもの食物アレルギーが多い傾向―エコチル調査7万人の出生コホート解析―(名古屋市⽴⼤学)

文献情報

原題のタイトルは、「Family Size and Food Allergy in Early Childhood: The Japan Environment and Children's Study」。〔Allergy. 2026 Mar 15〕 原文はこちら(John Wiley & Sons)

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自宅から徒歩1km圏内に生鮮食料品店が少ない高齢者は、外出頻度が低くてうつ傾向が強く、主観的健康感や手段的日常生活動作が低下しているといった関連を示すデータが報告された。千葉大学の研究グループによる論文が「Archives of Gerontology and Geriatrics」に掲載されるとともに、同大学のサイトにプレスリリースが掲載された。

研究の概要:生鮮食料品店は、単なる「買い物の場」にとどまらない

千葉大学予防医学センターの研究チームは、日常生活が自立している高齢者を追跡したデータを用いて、住まいの近くに生鮮食料品店(野菜・果物・肉・魚などを買える店)があるかどうかと、健康・ウェルビーイングとの関連を幅広い指標で検証した。その結果、徒歩1km圏内に生鮮食料品店が少ないと回答した高齢者は、主観的健康感、手段的日常生活動作※1、外出頻度が低く、うつ傾向と絶望感が高く、幸福感、生活満足度、地域への愛着が低かった。生鮮食料品店は、単なる買い物の場にとどまらず、暮らしの中にある生活の場として、高齢者の健康・ウェルビーイングを高める可能性が示唆される。

研究の背景:食料品店へのアクセスとウェルビーイングとの関連を包括的に検証

食料品店へのアクセスは、食生活だけでなく健康に影響を及ぼす重要な要因であることが知られている。とくに高齢者では、生鮮食料品店が多い地域に暮らしているだけで死亡や認知症発症の割合が低いことも示唆されている。一方で、ファストフード店の利用しやすさはBMI増加や心疾患リスクと関連するという報告もあり、健康への影響は一様ではない。しかし、これまで食料品店へのアクセスと、身体・心理・社会面を含むウェルビーイングを包括的に検証した研究はなかった。

そこで本研究では、日常生活が自立している65歳以上の高齢者を対象に、3時点(2013年、2016年、2019年)で測定した健康・ウェルビーイングに関する事前取得データ等を用いて、近隣の生鮮食料品店の多さと健康・ウェルビーイングとの関連をアウトカムワイド・スタディ※2と呼ばれる手法で多面的に検証した。

図1 生鮮食料品店と高齢者のウェルビーイングについての研究概要

(出典:千葉大学)

研究成果のポイント:評価した40指標のうち8指標に関連

本研究では、3時点の追跡調査に回答した高齢者3万4,181人を対象に分析を行った。アンケート調査では、「あなたの家から徒歩圏内(おおむね1km以内)に生鮮食料品(肉、魚、野菜、果物など)が手に入る商店・施設・移動販売はどのくらいありますか」という設問に、「たくさんある、ある程度ある、あまりない、まったくない、わからない」の中から回答してもらった。

その結果、生鮮食料品店がたくさんあると回答した人と比較して、少ないと回答した人では、健康・ウェルビーイングに関する7領域40指標のうち、5領域8指標に負の関連が認められた。具体的には、主観的健康感、手段的日常生活動作、外出頻度が低いこと、うつ傾向や絶望感が高く、幸福感、生活満足度、地域への愛着が低いことが示された。

表1 評価した7領域40指標の健康・ウェルビーイング指標
1. 身体的/主観的な健康
死亡、認知症、要支援・要介護認定、要介護2以上、残歯なし、主観的健康観、Body mass index (BMI)、手段的日常生活動作、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心臓病、脳卒中、呼吸器疾患
2. 健康行動
喫煙歴、飲酒歴、肉・魚の摂取頻度、野菜・果物の摂取頻度、歩行時間、外出頻度、健診受信
3. メンタルヘルス
うつ傾向、絶望感、孤独感
4. 心理的ウェルビーイング
幸福感、生活満足度、生きがい
5. 社会的ウェルビーイング
趣味、スポーツ、老人クラブ、学習・教養サークル、友人と会う頻度、1カ月以内に会った友達の数、情緒的サポート、手段的サポート
6. 人格と美徳
ボランティア、特技や経験を他者に伝える
7. ソーシャルキャピタル
地域への信用、互酬性、地域への愛着

今後の展望:因果関係の検証、具体的な提言へ

高齢者にとって暮らしの中にある生鮮食料品店の存在は、単なる食品購入の場にとどまらず、高齢者の健康・ウェルビーイングの醸成につながる生活の場である可能性が示された。これは、健康増進法に基づく国民健康づくりのための基本的方針「健康日本21」にて示された、「暮らしているだけで自然に健康になれる環境づくり」の一つとして、生鮮食料品店に注目する根拠となる新たな知見。そのため、食料品店が単に「食べ物を買う場」以上の役割を果たしていると考えられる。

今後、食料品店が不足している地域では、移動販売車や定期的な青空市場、地域バザーなど、その地域にあった「食品を手に入れ、人がつながる場所」を作ることが重要かもしれない。また、店舗の数や規模、店舗までの距離といった客観的なデータを活用した分析の実施が期待される。さらに研究者らは、「誰かと買い物に行くのか、他の用事と組み合わせているのかといった買い物行動パターンにも着目し、健康・ウェルビーイングへとつながるプロセスを検証(因果媒介分析)することで、より具体的な政策提言につなげていきたいと考えている」と記している。

プレスリリース

暮らしの中の生鮮食料品店が、高齢者のウェルビーイングに重要―約3万人の追跡データから検証―(千葉⼤学)

文献情報

原題のタイトルは、「Neighborhood food store and subsequent health and well-being of older adults in Japan: an outcome-wide study」。〔Arch Gerontol Geriatr. 2026 May:144:106186〕 原文はこちら(Elsevier)

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極端な暑さと寒さのいずれもが、小児のけいれんによる緊急入院リスクを高めることが、全国規模の調査から初めて示された。2011~19年のDPC入院データ、約11万6千件と日次気温データを統合解析した結果、日平均気温の極端な高温で1.17倍、極端な低温で1.22倍、入院リスクが増加するという。また、この影響は極端な気温が観測されてから0~1日以内にピークに達するとのことだ。東京科学大学の研究によるもので、「Pediatric Research」に掲載されるとともにプレスリリースが発行された。子どもが極端な気温に対してとくに脆弱である可能性が示され、著者らは「気候変動が進むなか、暑さ・寒さへの曝露対策や医療体制の備えの重要性を示唆する成果」としている。

研究の背景:ラグ効果を考慮しながら、全国規模のデータ解析

気温と小児けいれんの関連を検討したこれまでの多くの研究は、一部の都市に限定されていた。さらに、ラグ効果※1を考慮した日ごとの気温データと全国的な医療データを用いた分析は行われていなかった。

日本は年間を通じて多様な気象条件を有しており、さらに南北に細長い地理的特性をもつことから、このような研究にとってユニークな環境を提供すると考えられる。本研究では、全国規模の日次気温データと入院患者データを用いて、気温と小児けいれんによる緊急入院との関連を調査した。

研究成果:極度の暑さ・寒さの小児けいれんリスクへの影響は翌日にも有意

本研究では、DPCデータベース※2を用いて、2011~19年に発生した11万6,353件の小児けいれんによる緊急入院を解析した。

その結果、日平均気温の99パーセンタイルという極度の暑さでは、小児けいれんによる緊急入院の発生が1.17倍(95%信頼区間:1.05~1.30)であることがわかった(図1)。また、日平均気温の1パーセンタイルに相当する極度の寒さでは、小児けいれんによる緊急入院の発生が1.22倍(95%信頼区間:1.06~1.40)であることがわかった。

図1 12日間のラグ効果を考慮した日平均気温パーセンタイル※3と小児けいれんによる緊急入院のリスク

※3 日平均気温パーセンタイル:各地点の気温が過去の長期的なデータの中でどの位置にあるかを示す統計指標。

(出典:東京科学大学)

さらに、これらの緊急入院は、極度の気温が発生してから0~1日の急性期に多く発生していることがわかった(図2)。

図2 気温が観測された日からと小児けいれんによる緊急入院が起きるまでの日数ごとのリスク

(出典:東京科学大学)

社会的インパクト:子どもは極度の気温に対して脆弱

本研究により、子どもが極度の気温に対して脆弱であることが明らかになった。また、曝露を最小化するための適応策や、極度の気温が予測・観測された際の医療体制の備えが重要であることが強調された。

今後の展開:脱水や感染症との関連が想定され、その検証が必要

高温と小児のけいれんを結びつける可能性のあるメカニズムとしては、脱水や電解質バランスの乱れが考えられる。また、低温と小児のけいれんを結びつける可能性のあるメカニズムとしては、季節性のウイルス感染症が考えられる。

今後の研究では、気温と小児のけいれんの関連をより深く理解するため、水分摂取や感染症の状況についても検討することが求められる。

プレスリリース

極端な暑さ・寒さで小児けいれんの緊急入院リスクが上昇(東京科学大学)

文献情報

原典論文のタイトルは、「Ambient temperature and pediatric seizure hospitalization: A time-stratified analysis in a national dataset」。〔Pediatr Res. 2026 Mar 18〕 原文はこちら(Springer Nature)

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スポーツ栄養Web編集部


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心不全患者がタンパク質、アミノ酸を摂取することにより、身体機能が向上することを示す研究結果が報告された。金沢医科大学や信州大学の研究グループによるシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、「Circulation Reports」に論文が掲載されるとともにプレスリリースが発行された。タンパク質およびアミノ酸の摂取単独でも、運動療法併用と同等の効果が確認されたという。研究者らは、高齢者や運動療法が困難な人でも効果が期待されるとしている。

研究の概要:栄養介入のみで運動介入併用と同等の効果を期待できる可能性

金沢医科大学病院リハビリテーションセンターと、信州大学医学部保健学科基礎理学療法学の研究者を中心とする研究グループは、世界中で発表された過去の研究データを集めて統計的な分析・評価を行い、心不全患者に対するタンパク質やアミノ酸の摂取が身体機能(身体の動かしやすさ)に与える影響を検証した。

その結果、タンパク質およびアミノ酸を摂取することにより、心不全患者の身体機能の指標である6分間歩行距離が平均で35m延びることが明らかになった。この効果は、摂取単独でも、運動療法と組み合わせた場合でも、同等の改善がみられたことから、運動が十分にできない高齢患者にとって、運動療法を併用しなくても、適切な栄養補給が身体機能の維持・向上をサポートする実用的な選択肢となる可能性が見出された。

図1 研究の概要

(出典:信州大学)

研究の背景:運動介入が困難な心不全患者に栄養介入はどの程度有効?

心不全は世界で2,600万人以上が罹患しており、高齢化に伴いその有病率は上昇している。とくに高齢の心不全患者においては、疾患による炎症や食欲不振などから栄養状態が悪化し、筋肉が衰え心身が弱くなる「サルコペニア」や「フレイル」になりやすいことが問題となっている。これらの筋力低下は、身体機能の低下や生活の質(QOL)の悪化、さらには再入院や死亡のリスクを高める。

心不全の治療において運動療法が重要とされているが、高齢でフレイル状態の患者の中には十分な運動が難しい患者も多い。また、これまでの研究では結果が一貫していないため、明確な治療指針がない状況。その一方、筋肉の合成を促し、身体機能の維持・向上に役立つとされるタンパク質およびアミノ酸の摂取が、運動困難な患者のための代替手段として期待されている。

研究の成果:6分間歩行距離が有意に改善し、腎機能への影響は認められない

本研究では、合計744名の患者が参加した15件のランダム化比較試験を分析した。

主要評価項目(身体機能)の改善

主要な評価指標である6分間歩行距離は、摂取群で対照群に比べ平均35.3mの有意な改善を示した。

次に、この効果がどのような条件の人にも共通してみられるかを調べるため、さらに詳しい分析を行った結果、主に二つの大切なことがわかった。

(1)運動療法併用との比較

タンパク質およびアミノ酸を摂取するだけの人たちと、運動療法をしながら摂取する人たちを比べたが、効果にほとんど差はなかった。これは、運動と関係なく、摂取するだけでも身体機能の改善に役立つ可能性を示している。

(2)年齢層での比較

65歳以上の高齢患者と、65歳未満の比較的若い患者を比べたところ、どちらの年齢層でも同じように6分間歩行距離が大きく改善し、年齢に左右されないことがわかった。

副次評価項目(筋力、体組成、安全性)

筋力(握力)や、体組成(筋肉量や脂肪量)を測っても、タンパク質およびアミノ酸摂取による目立った改善は確認されなかった。

一方、腎臓の機能が損なわれることはなく、下痢や吐き気などの副作用の頻度に増加傾向を示さなかったため、このタンパク質およびアミノ酸の摂取による安全性に関して特段の問題は認められなかった。

効果・今後の展開

本研究は、タンパク質およびアミノ酸の摂取が心不全患者の身体機能(体の動かしやすさ)を向上させるための実用的な戦略となり得ることを示した。とくに、運動療法が難しい高齢の心不全患者に対して、身体機能の維持・向上をサポートする補完的な介入法として有用である可能性が示された。

今後は、タンパク質およびアミノ酸の摂取と運動療法の組み合わせが、筋力や体組成といった他の指標に与える影響について、さらなる研究が期待される。

プレスリリース

心不全患者さんの「身体の動かしやすさ」を改善! タンパク質・アミノ酸の摂取が身体機能の向上をサポート~運動が困難な高齢者にとって実用的な支援策に~(信州大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Protein and Amino Acid Supplementation on Physical Performance in Patients With Chronic Heart Failure - A Systematic Review and Meta-Analysis」。〔Circ Rep. 2025 Oct 31;8(1):39-47〕 原文はこちら(J-STAGE)

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スポーツ栄養Web編集部


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デイケアサービスを利用している高齢者を対象に、社会的フレイルの実態や食事・栄養状態などとの関連を調査した結果が報告された。社会的フレイルは筋肉量の少なさや同居家族の少なさと関連していることなどが示されている。高島平中央総合病院リハビリテーション科の山下司氏らの研究によるもので、論文が「Journal of Physical Therapy Science」に掲載された。食欲に関しては独居者のほうが良好であり、しかし筋肉量は少ないという。

社会的フレイルが課題となることの多いデイケアサービス利用者を対象に調査

フレイルは健常な状態と要介護状態の中間に位置し、介入によって可逆的な変化を期待できる段階とされる。フレイルは、身体的フレイル、心理的フレイル、そして社会的フレイルという三つに大別される。このうち身体的フレイルに関しては多くの知見が蓄積されてきているのに対して、社会的フレイルについては、リスクに影響を及ぼし得る因子が幅広く存在することもあり、いまだ実態の理解が十分進んでいない。しかし、身体的フレイルのリスク因子とされる栄養不良が、社会的フレイルにも関与しているとする報告が存在する。これらを背景として山下氏らは、デイケアサービスを利用している高齢者を対象として、社会的フレイルと食事摂取状況や体組成などとの関連を横断的に検討した。

なお、研究対象をデイケアサービス利用者としたことについて論文では、施設居住者を対象とした場合は身体的フレイルやサルコペニアが多くを占めることになり、地域社会への参加機会の多寡がリスクに強くかかわる社会的フレイルの調査には、デイケアサービス利用者のほうが適していると述べられている。

半数強が社会的フレイル、3分の1がプレ社会的フレイル

この研究は、徳島県に所在するデイケアセンター単施設で、2024年8~9月に実施された。徳島県は65歳以上の高齢者が人口の35.9%を占め、全国3位の高齢化率。また高齢の独居者も多いという特徴がある。

研究参加に同意した59人のうち、認知機能低下の兆候が認められる人や解析に必要なデータに欠落のある人などを除外すると48人になった。このうち男性が3人含まれていたが、サンプルサイズが小さすぎると判断し除外。45人の女性のみを解析対象とした。

社会的フレイルは、先行研究(DOI: 10.1016/j.jamda.2018.09.013)に基づき、(1)基本的社会ニーズの充足、(2)社会資源、(3)社会的行動や活動、(4)一般的資源という4項目を評価し、すべてが満たされている場合は「ロバスト(健常)」、1項目が満たされていない場合は「プレ社会的フレイル」、2項目以上満たされていない場合は「社会的フレイル」と判定した。その結果、5人(11.1%)がロバスト、15人(33.3%)がプレ社会的フレイル、25人(55.6%)が社会的フレイルと分類された。

社会的フレイルに該当するか否かでBMIは同等だが筋肉量などに有意差

各群の平均年齢は、ロバスト群が82.4歳、プレ社会的フレイル群が83.7歳、社会的フレイル群が85.0歳であり、有意差はなかった。また、BMIは同順に23.4、23.0、23.6であって、こちらも有意差はなかった。

社会的フレイル群に、筋肉量が少ない、処方薬が多い、同居者が少ないなどの特徴

一方、筋肉量や位相角(phase angle;PhA)などの体組成指標、同居者数、処方薬剤数などに、以下のような有意差が認められた。いずれも、ロバスト群、プレ社会的フレイル群、社会的フレイル群の順に示す(表1、表2、表3、表4)。

上記のほかに評価した、握力、骨格筋量指数(skeletal muscle mass index;SMI)、歩行速度、基礎代謝量、要介護度、および、簡易栄養状態評価尺表短縮版(Mini Nutritional Assessment Short-Form;MNA-SF)、日本人高齢者用簡易食欲評価質問票(Simplified Nutritional Appetite Questionnaire for Japanese Elderly;SNAQ-JE)のスコアに、群間の有意差はなかった。

食欲の有無では、骨格筋量指数(SMI)と同居者数に有意差

SNAQ-JEのスコアが15点未満を食欲の低下と定義すると、食欲低下者が23人、食欲正常が22人と、ほぼ半数ずつとなった。

この2群で比較した場合、食欲低下群は骨格筋量指数(SMI)が低く(5.96±0.32 vs 6.33±0.82kg/m2)、同居者数が多いという(中央値2〈四分位範囲2~3〉 vs 0〈0~2〉)、有意差が観察された。

BMI、位相角(PhA)、握力、基礎代謝量、処方薬数、要介護度、MNA-SFスコアには有意差がなかった。

この研究で明らかになったポイント

これらの結果に基づく考察から、著者らはいくつかのポイントを掲げている。

社会的フレイル該当者は独居者に多く、筋肉量が減少し筋肉の質が低下

まず、ロバスト、プレ社会的フレイル、社会的フレイルの3群のすべてで平均BMIは約23であり、基本的な特性にも大きな差は認められなかった。ただし、社会的フレイル群は筋肉量が少なくて同居家族が少なく、独居高齢者は身体機能が低下する傾向が確認された。

また、社会的フレイル群は位相角(PhA)がプレ社会的フレイルより低値だった。PhAは細胞膜機能を反映し、筋肉の質とも関連していることが報告されている。本研究において社会的フレイル群で観察されたPhAの低さは、社会的フレイルがサルコペニアのリスクとも関連している可能性を示唆するものと考えられた。

一方、ロバスト群との間にPhAの有意差は認められなかった。この点については、ロバスト群のサンプルサイズ(5人)が小さいためではないかと述べられている。

社会的フレイル該当者にはポリファーマシーが多い

社会的フレイル群は処方薬が多くポリファーマシー(多剤併用)の傾向が観察された。ポリファーマシーでは転倒等のリスクが上昇することが知られている。著者らは、それらのリスク抑制のために、デイケアサービスにおいても医療従事者間の連携を強化し、優先度が高くない薬剤を減らす工夫や、予防的な理学療法を奨励すべきとしている。

社会的フレイルは食欲低下とは関連していない

食欲に関しては、社会的フレイルとの有意な関連がみられなかった。むしろ社会的フレイルの該当者が多い独居者においては、食欲低下が少なかった。この理由としては、同居者がいても食事は一人で食べている高齢者の存在が想定されること、また、独居者は本人の好みで自由な食品を食べられることなどが考えられるという。

著者らは本研究に、男性が対象に含まれていないこと、サンプルサイズが十分とは言えないことなどの限界点があるとしたうえで、社会的フレイルに関する一層の研究の必要性を指摘している。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Social frailty and appetite status and their associations with physical, nutritional, and lifestyle factors in community-dwelling older women attending a day-care service」。〔J Phys Ther Sci. 2026 Apr;38(4):179-185〕 原文はこちら(J-STAGE)

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スポーツ栄養Web編集部


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サプリメント利用者の2割近くが摂取目安量を超えた量を摂取しているという実態が報告された。東邦大学の研究グループが二千人のサプリ利用者を対象に行った調査の結果であり、論文が「Interactive Journal of Medical Research」に掲載されるとともに、同大学のサイトにプレスリリースが掲載された。

東邦大学の研究グループは、サプリメントの購買履歴データを活用して、メーカーが提示する摂取目安量を超える摂取(以下、過剰摂取)の実態と、その関連要因を明らかにした。2,002人のサプリメント利用者のうち18.5%(371人)が1日あたりの摂取目安量を超えた量を摂取していた。さらに、この過剰摂取者371人のうち、食事摂取基準で「耐容上限量(UL)」が定められている栄養素を含む製品を使用していた297人について分析したところ、58%が少なくとも1種類の栄養素について、サプリメントからの摂取量が耐容上限量を超えていた。研究者らは、「本研究は、健康食品の安全な利用に向けた注意喚起や、表示・情報提供のあり方を検討するうえで役立つ可能性がある」としている。

発表のポイント

  • サプリメント利用者の18.5%(371/2,002人)が、メーカーの示す摂取目安量を超えてサプリメントを摂取していた。
  • 摂取目安量を超えた摂取(過剰摂取)は、年齢が50~64歳の範囲、有職(パートタイムまたはフルタイム勤務)、錠剤タイプ(とくに水溶性ビタミン単剤)の使用、6カ月以上の継続使用などと関連していた。
  • 耐容上限量(習慣的な摂取量の上限〈tolerable upper intake level;UL〉)が設定された栄養素を含む製品を摂取していた1,705人のうち、摂取目安量を超えていた人は17%(297/1,705人)で、そのうちの62%(184/297人)が、1種類以上の栄養素で耐容上限量を超過していた。

発表概要:日本人のサプリ利用者の利用実態が明らかに

サプリメントを含むいわゆる健康食品は健康維持や栄養補給の目的で広く利用される一方、摂取量が多くなると一部の栄養素で過剰摂取となり、健康リスクにつながる可能性がある。しかし、利用者がメーカーの示す摂取目安量を実際に守れているか、また摂取目安量を超えている場合に、その要因は何であるかについては、十分に検討されていなかった。

本研究では、購買履歴データを活用して対象者が購入したサプリメント製品を特定し、オンライン形式で摂取の実態を調査した。過去3カ月間に主要25製品のいずれかの購入歴があり、直近1カ月以内に使用、または定期的に使用している日本人成人2,002人(18~74歳)を対象に、自己申告の摂取量・頻度から1日摂取量を推定し、製品のメーカーが示す摂取目安量と比較した。さらに、多変量ロジスティック回帰分析により、過剰摂取と関連する社会人口学的要因・使用習慣を調べるとともに、サプリメント由来のビタミン・ミネラル摂取量が「日本人の食事摂取基準」に基づく耐容上限量を超えている人の割合を算出した。

その結果、過剰摂取はサプリメント利用者の18.5%(371/2,002人)に認められ、50~64歳の年齢(比較対照:34~49歳)、有職者であること(同:無職)、錠剤タイプの使用(同:液体タイプ)、とくに水溶性ビタミン単剤の使用(同:マルチビタミン・マルチミネラル)、6カ月以上の継続使用(同:3カ月未満)、意図的に推奨量より多く摂る行動(同:摂取目安量と同じ量を摂っていると認識している人)と有意に関連していた。

さらに、耐容上限量の定められた栄養素を含む製品を摂取していた1,705人に限ると、過剰摂取群297人のうち、62%(184人/297人)が、1種類以上の栄養素で耐容上限量を超える摂取をしており、健康食品の安全な利用に向けた情報提供の重要性が示唆された。

発表内容:習慣的なサプリ利用者約二千人を対象とする調査で課題を特定

背景:サプリの利用実態はあまり把握されていなかった

サプリメントを含む健康食品の利用は各国で増加しており、栄養補給に役立つ一方で、摂取量が多くなることで一部の栄養素の過剰摂取が起こり得る。欧米では製品ラベルに推奨目安量の表示が求められることが多いものの、サプリメント利用者がその摂取目安量を守っているか否かに関する研究は限られていた。さらに、これまでのサプリメントに関する研究では、製品名を自己申告で把握することが多く、製品の特定が難しくなることが課題だった。

目的:目安量を超える摂取の関連要因などを探索

本研究の目的は、以下の二つとした。

  • メーカーが示す摂取目安量を超えるサプリメントの摂取(過剰摂取)と関連する要因を明らかにすること。
  • サプリメントの過剰摂取が、耐容上限量の超過につながり得るかを把握すること。

方法:主要25製品の購入歴のある人を対象にオンライン調査

本横断研究は、2024年11~12月に、購買履歴情報を有するモニターを対象にして実施した。まず、2024年3~6月のモニター全体の購買履歴から、購入頻度の高い主要25製品を選定(図1-Step 1)。次に、過去3カ月間に主要25製品のいずれかの購入歴がある人を参加者の候補として選び(図1-Step 2)、オンライン質問票調査のリンクを送った。そして、スクリーニングの質問で、自分のために製品を購入していて、直近1カ月以内に使用、または定期的に使用していると回答した日本人成人を本調査の参加者とした(図1-Step 3)。

本調査では、購入・使用している製品について、1回あたりの摂取量と摂取頻度を含む、利用の習慣を尋ねた。回答した人の中から最終的に2,002人(18~74歳)(図1-Step 4)が解析対象者となった。

図1 調査のフレームワーク

(出典:東邦大学)

自己申告の1回あたり摂取量と摂取頻度から1日摂取量を推定し、メーカーが示す製品の摂取目安量と比較し、超過している者を過剰摂取群とし、まず、過剰摂取群と摂取目安量以下の群とで、対象者の特性を比較。そして、多変量ロジスティック回帰分析により、過剰摂取と関連する社会人口学的要因・使用習慣を調べた。さらに、サプリメント由来のビタミン・ミネラル摂取量が「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に基づく耐容上限量を超えている人の割合を算出した。

結果:18.5%が過剰摂取で、その6割は1種類以上の栄養素の耐容上限量を超過

サプリメント利用者のうち、18.5%(371/2,002人)が過剰摂取群に分類された。過剰摂取群は摂取目安以下の群と年齢、性別、サプリメントの形態、主な栄養素、使用期間、使用前に摂取目安量を確認したか、自分の摂取量に関する認識に有意な差があった(表1)。

表1 対象者特性の比較

(出典:東邦大学)

多変量ロジスティック回帰分析の結果、過剰摂取は、年齢(50~64歳)、有職(パートタイムまたはフルタイム勤務)、錠剤タイプ(とくに水溶性ビタミン単剤)の使用、6カ月以上の継続使用、意図的に推奨量より多く摂る行動と関連していた(表2)。

表2 摂取目安量超の使用と関連する要因

(出典:東邦大学)

さらに、耐容上限量(UL)の定められた栄養素を含む製品を摂取していた人(1,705人)に限ると(図2)、過剰摂取群297人のうち、62%(184/297人)が、1種類以上の栄養素で耐容上限量を超過しており、サプリメントの安全な利用に向けた情報提供の重要性が示唆された。

図2 摂取量が耐容上限量(UL)を超えている人とUL以下の人の人数

耐容上限量(UL)が設定された栄養素を含むサプリメントを摂取している人(297人)のうち、ULを超えている人とUL以下の人の人数。なお、メーカーの示す摂取目安量を超えた摂取の者を過剰摂取者とした。

(出典:東邦大学)

結論:適切な利用の啓発が重要

日本人成人のサプリメント利用者において、過剰摂取が一定割合(約2割)で生じており、過剰摂取は中高年、有職者、錠剤(とくに水溶性ビタミン単剤)の使用、長期使用などと関連していた。サプリメントの過剰摂取は耐容上限量の超過につながり得ることから、利用者が推奨量を理解しやすい情報提供や、製品選択・摂取行動に関する啓発の重要性が示唆される。

プレスリリース

日本人でサプリメントの「過剰摂取」はどのくらい起きているのか?~過剰摂取者の割合と関連要因の横断的調査~(東邦⼤学)

文献情報

原題のタイトルは、「Prevalence and Associated Factors of Excessive Dietary Supplement Use Among Japanese Adults: Cross-Sectional Study」。〔Interact J Med Res. 2026 Mar 19:15:e82623〕 原文はこちら(JMIR Publications)

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スポーツ栄養Web編集部


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大塚製薬株式会社が展開する食育ゲームアプリ『もぐもぐタウン』が、農林水産省主催「第10回 食育活動表彰」において、教育関係者・事業者部門「企業の部」の審査委員特別賞を受賞しました。

本表彰は、食育推進に優れた取り組みを行う団体・企業・教育関係者などを対象に、その功績を広く社会へ発信し、全国的な食育推進につなげることを目的として実施されているものです。

『もぐもぐタウン』のダウンロード・遊び方はこちら

今回受賞した『もぐもぐタウン』は、子どもたちが日常生活の中で“食”や“栄養”について楽しく学べる無料の食育ゲームアプリです。スマートフォンやタブレットで食事を撮影すると、食材キャラクター「もぐみん」がARで登場し、クイズやゲームを通じて食や栄養への理解を深められる仕組みとなっています。

本アプリは、一般社団法人日本スポーツ栄養協会(SNDJ)が監修として参画しており、スポーツ栄養や食育の専門的知見を活かしながら、子どもたちが楽しみながら正しい食習慣や栄養知識に触れられる内容づくりが行われています。公式サイトには、SNDJ理事長・鈴木志保子先生のコメントも掲載されており、「子どもたちが食への興味を自然に深められる新しい食育ツール」として期待が寄せられています。

食育を“続けたくなる学び”へ

『もぐもぐタウン』の大きな特徴は、“ゲーミフィケーション”を活用している点です。

食事や栄養バランスを「勉強」として押しつけるのではなく、ゲーム感覚で継続的に取り組める設計とすることで、子どもたちが主体的に食に関わるきっかけをつくっています。

アプリ内では、最大100食材・25万種類以上の「もぐみん」が登場。食材に関するクイズや栄養知識を楽しみながら学べるほか、食事内容に応じてゲーム内の「もぐもぐタウン」が発展していくなど、継続利用につながる工夫が多数盛り込まれています。

また、家庭だけでなく、小学校での食育授業や企業・団体との連携イベント、飲食施設などでも活用が広がっており、食育を社会全体で支える取り組みとしても注目されています。

2026年からは新たに、企業の健康経営や教育現場などを対象にした親子参加型の食育ワークショッププログラムの提供も開始。配信開始時より展開されている「もぐもぐタウンかるた」やYouTubeチャンネル「もぐもぐタウンレディオ」などの家庭向けコンテンツに加え、リアルな体験型プログラムへと活動の幅を広げています。

こうした継続的な展開により、『もぐもぐタウン』は単なるアプリにとどまらず、家庭・学校・地域・企業を横断しながら、“食を楽しく学ぶ文化”を育てる新たな食育プラットフォームとして進化を続けています。

食育ワークショッププログラム

(大塚製薬ニュースリリースより)

アプリ利用による“食への意識変化”も

大塚製薬が小学校3~4年生500名を対象に行った調査では、『もぐもぐタウン』利用後に「さまざまな食材に挑戦してみたい」と回答した児童が増加。さらに、アプリの利用データ分析では、1回の食事で取り入れる品数が増加する傾向も確認されており、食への興味関心や行動変容につながる可能性が示されています。

2024年2月の公開以降、利用者は10万人を突破。現在も利用者は増え続けており、保護者からは「子どもが食事に興味を持つようになった」「苦手食材にも挑戦するようになった」といった声も寄せられているとのことです。

食育の新たな可能性として期待

スポーツ現場においても、ジュニア世代への食育や、日常的な栄養教育の重要性はますます高まっています。

一方で、“栄養を教える”だけでは継続的な行動変容につながりにくいという課題もあり、子ども自身が楽しみながら主体的に取り組める仕組みづくりが求められています。

『もぐもぐタウン』は、デジタル技術やゲーム性を活用しながら、家庭・学校・地域を横断して食育を支える新たなアプローチとして、今後さらに活用が広がっていきそうです。

『もぐもぐタウン』のダウンロード・遊び方はこちら

関連リンク

大塚製薬ニュースリリース(2026年4月17日) 『もぐもぐタウン』公式サイト 大塚製薬「もぐもぐタウン」リリースに伴う子どもの食意識調査 一般社団法人日本スポーツ栄養協会(SNDJ)監修について

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スポーツ栄養WEB編集部


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屋外環境で行われるトライアスロンの水泳の際に、意図せずに水を飲んでしまうことが競技後の消化器症状に関連していて、より多く飲むほどそのリスクが高くなることを示唆する調査結果が発表された。4口以上飲んでしまった場合のオッズ比は5.1倍だという。オランダからの報告。

トライアスロンで水をどのくらい飲んでしまうとリスクになるのか

トライアスロンの人気が世界的に高まり、各地で開催されるようになった。この複合スポーツは多くの健康上のメリットをもたらすと考えられるが、水泳が川や湖、運河などのオープンウォーターで行われる場合、選手は病原性微生物に曝露されることになり、意図せずに水を飲み込んだ場合には消化器症状を来し得る。

このリスクを避けるため、大会前には水質検査が実施され、大腸菌の量や藻類の発生状況等次第で水泳が中止されることもある。ただし、水質の評価には時間を要するため、サンプリングは開催の1週間ほど前に行われる。一方でオープンウォーターの水質は周囲からの排水や降雨などによって変化し、競技開催日の水質が水質検査実施日と同じとは言えない。これらの結果として、試合参加選手が水を飲んでしまうことによる体調の悪化が発生する。

2024年のパリ五輪はその代表的な例と言え、細菌濃度が高いために一度は延期されたものの、当初の予定どおりセーヌ川で実施された。そして競技後に多くの選手が水質に対する不満を述べ、複数の選手が体調不良のため入院加療を要した。

このように、トライアスロンのオープンウォータースイミングに一定のリスクがあることは明らかだが、どの程度の水を飲むとリスクになるのかといった定量的な検討はこれまでなされていない。そこで今回取り上げる論文の著者らは、選手の経験、スイムタイムなどを考慮して、飲み込んでしまった水の量と消化器症状との関連を検討した。

オランダ国内の4都市で開催された計6大会の参加者を対象に調査

この研究は、2025年の5~9月にオランダの異なる四つの都市で行われた、計6回のトライアスロン大会参加者(18歳以上)を対象に実施された。競技中の水の摂取の有無や摂取量、大会後7日間の体調などに関するオンラインアンケートを作成、そのサイトへのリンク情報を、各大会の主催者を通じで全参加者に送信。回答の受付けは記憶バイアスの影響を抑制するために、各大会終了後14日以内とした。

6大会の参加者数は合計7,188人であり、1,294人(18%)が回答した。

解析対象者の特徴

1,294人の主な特徴は、男性が70.9%、年齢層は40代29.3%、30代25.3%、50代20.8%、30歳未満17.0%、60歳以上7.7%。競技レベルは51.2%が初心者であり、46.8%が熟練者、1.9%はエリートレベルだった。また84.8%は、オープンウォータースイミングの経験を有していた。なお、3.8%の選手が何らかの慢性疾患を有していた。

スイムの距離・時間

スイムの距離は1,500~1,900mが58.8%と最も多く、400~1,000mが26.3%、3,800m以上が14.9%であり、スイムに要した時間は30~60分が47.4%、30分未満が37.9%、60分超が14.8%だった。

交絡因子を調整後もスイム中に水を飲むことが消化器症状の発現に関連

消化器症状発現頻度は5.1%

全体として4人に1人(24.7%)は意図せずに水を飲むことはなかったと回答し、4人に3人(75.3%)は意図せずに水を飲んだと回答。後者のうち、1~3口の水を飲んだという回答が43.0%、4口以上の水を飲んだという回答が32.2%だった。

大会参加後7日間で消化器症状を発症した選手は全体で5.1%であり、発生頻度を大会別にみると、最も発生率が低い大会は0.5%、最も高い大会は7.6%の範囲だった。症状の発現は大会当日と翌日に多く、2日目以降は減少していた。

飲んだ水の量と消化器症状発現との関連

水泳中に意図せず水を飲むことがなかった選手では、大会後7日間での消化器症状発現頻度は1.3%だった。一方、意図せずに水を飲んでしまった選手でのその頻度は6.4%だった。また、飲んだ水の量で層別化すると、1~3口では4.8%、4口以上では8.4%だった。

結果に影響を及ぼし得る因子として、年齢区分、性別、オープンウォータースイミングの経験の有無、競技レベル、スイムに要した時間、慢性疾患の有無を調整後に、意図せず水を飲むことがなかった選手を基準として、消化器症状発現のオッズを計算すると、以下のような結果が得られた。

まず、意図せずに水を飲んでしまった選手はオッズ比(OR)4.355(95%CI;1.614~11.749)と、有意に消化器症状発現が多かった。また、飲んだ量で層別化すると、1~3口ではOR3.672(同1.316~10.242)、4口以上ではOR5.07(1.740~14.767)であって、より多く飲んでしまった場合により高いオッズ比が示された。

これらに基づき論文の冒頭に、ハイライトとして次のような総括が掲げられている。

  • 本研究は、トライアスロンの水泳競技において水を飲み込むことが消化器症状の発現につながる可能性を示唆しており、レクリエーションとしてのウォータースポーツにおける環境衛生上のリスクが、頻繁に発生している実態を浮き彫りにしている。
  • 飲み込んだ水の量とレース後の消化器症状との間に観察された関連性は、現在の水質モニタリング方法の限界と、アスリートの保護を強化する必要性を示している可能性がある。
  • 今回の調査結果は、レース直前の水質モニタリングをより頻繁に実施すること、および、オープンウォータースイミング中の意図しない水の摂取を減らすため、選手に焦点を当てた予防戦略を開発することの必要性を裏付けている。

文献情報

原題のタイトルは、「Unintentional Water Intake During Swimming and Post-Race Gastrointestinal Illness in Triathletes: Results from 6 Triathlons and 1294 Athletes」。〔Int J Environ Res Public Health. 2026 Mar 19;23(3):392〕 原文はこちら(MDPI)

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スポーツ栄養Web編集部

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