トヨタG7社25年3月期 4社が最終増益 円安と原価低減奏功

デンソーは売上高、各利益ともに過去最高を更新した(写真は林新之助社長)
 トヨタグループ7社が25日発表した2025年3月期の連結純利益は、デンソーと豊田自動織機、アイシン、愛知製鋼の4社が増益だった。国内外で完成車メーカーの減産があったが、原価低減活動や円安効果が下支えした。今期は堅調な車両生産を見込み、豊田自動織機を除く6社が純利益で増益を予想。ただトランプ政権による関税措置や、円高進行など、業績悪化のリスクも付きまとう。

 増収は、デンソーと豊田自動織機、トヨタ紡織、愛知製鋼で、4社ともに過去最高を更新した。トヨタ自動車の日本での完成車の減産や、中国での販売不振も影響したが、円安による増収効果が打ち消した。  利益面では、円安効果のほか、お家芸である原価低減活動も奏功した。デンソーは、車両販売が軟調な欧州やアジアで利益が落ち込んだが、日本や北米での原価改善活動が実を結び、1799億円分、営業利益を積み増した。  アイシンも、体質強化や構造改革を営業増益の要因として720億円計上した。伊藤慎太郎副社長は「米国での生産ロス低減や、グループでの会社統廃合などが効いた」とし、減収ながらも最終増益につなげた。  一方で減益だったのは、トヨタ紡織、豊田合成、ジェイテクトの3社。豊田合成は、中国市場での苦戦が続いている。中国事業の営業損益は、72億円の赤字に転落(前期は50億円の黒字)。齋藤克巳社長は中国市場について「想定以上の速さで減速している」と語り、引き続き構造改革や固定費削減に取り組む方針を示した。  トヨタ紡織は、米国、カナダ、メキシコに所在する連結子会社が保有する固定資産について、市場環境を踏まえ、283億円の減損損失を計上。全体の純利益も大幅に押し下げた。  今期は豊田自動織機を除く6社が純利益で増益を予想しているが、トランプ米政権による関税措置の動向によっては、業績の下方修正の可能性もはらむ。デンソーの松井靖副社長は「状況が不透明なため、各四半期ごとに業績を修正する可能性はある」と明かしている。  加えてこれまで業績押し上げ要因となっていた円安効果も剥落する見通しだ。豊田自動織機は今期、ドル円の想定為替レートを1ドル=135円に設定した。25年3月期実績の153円から18円、円高に振れる想定で400億円分の営業利益押し下げ要因になる。 関税リスクが顕在化/今期利益を押し下げ  トヨタグループの間で米国の高関税政策が業績の下振れリスクとして顕在化し始めている。現時点で関税の影響の見極めが困難なものの、アイシンとトヨタ紡織、豊田合成の3社が今期見通しに一部影響を織り込んだ。車両生産の減産も想定する。今後、サプライチェーン(供給網)や製品価格を見直す検討にも入っている。 ■懸念  「正直どうなるか分からないが、ひとまず仮置きの影響額を入れた」。アイシンの伊藤慎太郎副社長は打ち明ける。  アイシンは今期予想に、米国の関税政策で200億円利益が下振れると影響を織り込んだ。5月3日までに自動車部品に課される見通しの追加関税分も含めて影響額を試算したという。また、トヨタ紡織は4月の影響分のみ反映し2億~3億円の利益が減ると見込む。  車両販売・生産にも影響が及ぶことを懸念している。豊田合成は、関税で米国現地の車両生産と米国への輸出台数それぞれが従来計画に比べ5%減るといち早く見通しを立てた。今期の営業利益を50億円押し下げる要因になるとみている。  愛知製鋼は今期の予想に関税影響を織り込んでいないものの、後藤尚英社長は「米国が示している通りに関税がかかれば、日本国内で納入している製品の受注にも影響が出る」と懸念を示す。 ■対応を検討  関税への対応も検討し始めている。特に腐心するのが、関税の負担をサプライチェーンの中でいかに吸収するかだ。  デンソーの松井靖副社長は「関税が課されれば、まずは自社で負担を抑制し、その上で顧客に相談して部品価格に反映させる。逆に中小の仕入れ先が悪影響を受けることがないよう、仕入れ先に対する価格転嫁も適正に進める」と強調する。  豊田自動織機は、フォークリフト価格の見直しも視野に入れ始めた。伊藤浩一社長は「顧客との交渉前だが、仮に関税政策が続くならフォークリフトの値上げなどを考える」と話す。  また、関税の影響を抑えるため自社のサプライチェーンを見直す可能性もあるようだ。  ジェイテクトは、サプライチェーンの変更を検討。近藤禎人社長は「トランプ米政権前からグローバルにコストや物流を踏まえてどこで、どの製品を造るのがベターか見直し続けている。今後も着実に見直しを進める」とし、今後の影響を冷静に見極めて対応に動く考えだ。

(勝又佑記、川原和起、鈴木隆宏)

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