<病院の実力 兵庫編206>薬で炎症抑制 基本

関節リウマチ

 今回の「病院の実力」は関節リウマチを取り上げる。一覧表では、2024年の生物学的製剤・JAK阻害薬による治療や関節手術の実績などを紹介する。

 関節リウマチは、病原体から体を守る免疫が誤って自らの関節を攻撃し、炎症が起きる病気だ。手足をはじめ全身の関節に腫れや痛みが出て、発熱や 倦怠(けんたい) 感なども生じる。患者は80万人を超えるとされ、女性が4分の3を占める。

 治療は、抗リウマチ薬「メトトレキサート(MTX)」を服用して炎症を抑えるのが基本。早期に治療を始めるほど効きやすく、関節の変形も抑えられる。

 MTXだけで症状が治まらない場合は、免疫の異常を抑え、炎症を引き起こすサイトカインという物質が働かないようにする「生物学的製剤」か、サイトカインの生成に関わる酵素の働きを抑える「JAK阻害薬」を併せて使う。いずれも免疫を抑える効果が強く、肺炎や結核などの感染症にかかるリスクも高くなる。

 治療の開始が遅れるなどして関節の変形が進行した場合には手術を行う。破壊された骨を削ったり、人工関節に置き換えたりする。

 診療は、リウマチ科や 膠原(こうげん) 病内科、整形外科など様々な科が担う。一覧には、経験豊富な専門医が認定される日本リウマチ学会の「指導医」の数も掲載した。

初期は腫れや痛み

神鋼記念病院・ 籏智(はたち) さおり 膠原病リウマチセンター長

 関節リウマチについて、神鋼記念病院(神戸市中央区)の籏智さおり・膠原病リウマチセンター長(52)に聞いた。(聞き手・東礼奈)

「リウマチとの上手なつきあい方を知ってほしい」と話す籏智センター長(神戸市中央区で)

  ――どんな病気か。

 関節リウマチは、免疫の異常により関節を包む滑膜に炎症を起こし、関節以外の臓器にも炎症を起こす可能性のある全身性疾患です。喫煙や歯周病、体質など様々な要因が関わるとされています。

  ――初期症状は。

 朝の手のこわばり、関節の腫れや痛みなどの症状で気づく人が多いです。手を握りにくい、押さえると痛むなどの症状が数週間続く、徐々に痛みの程度が増す、痛みを感じる関節の数が増えるなどの悪化傾向があれば受診してください。関節リウマチと診断されれば、すぐに薬物治療を始めます。

  ――発症年齢は。

 以前は30~50歳代の女性に多いとされましたが、最近は高齢での発症も増えており、他の世代に比べ男性の割合が高いです。高齢者は比較的進行が速く、肩や膝などに症状が出て寝たきりになりやすく、基礎疾患の影響で薬の選択が難しくなります。

  ――気をつけることは。

 喫煙者はまず禁煙しましょう。歯周病や虫歯を治し、定期的に歯科にかかることも大切です。炎症が強い時は安静にし、症状が落ち着けば関節が硬くなるのを防ぎ、筋力を維持するため、関節を曲げて伸ばす運動に取り組みましょう。免疫を抑える薬を使う人は感染症に気をつけ、予防接種は生ワクチンを避け、不活化ワクチンを受けてください。

  ――病院選びのポイントは。

 リウマチ専門医による早期診断・治療が肝心です。日本リウマチ学会のホームページに専門医・指導医のリストが掲載されているので参考にしてください。症状が落ち着いた「寛解」になった場合でも、多くの人は生涯治療を続けることになります。自宅から通院しやすい病院が良いでしょう。

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