ウクライナ侵略は言語道断!それでもロシアと向き合う必要がある深刻な事情…日本は今こそ「多元的視点」を持て(Wedge(ウェッジ))
ロシアのウクライナ侵略に責任を問うことは日本を含めた国際社会の責務だ。一方で、日本がロシアとの関係を遮断してしまえば、それこそ隣国として国益を損なうことになる。「Wedge」2025年8月号に掲載の特集「終わらなかった戦争 サハリン、日ソ戦争が 戦後の日本に残したこと 戦後80年特別企画・後編」の内容を一部、限定公開いたします。 ロシアによるウクライナ侵攻は是認できない。国際平和を保つための「領土不可侵原則」を根本から脅かす行為だからだ。しかしながら、日本の隣国ロシアとの関係を断つことも危険だ。 歴史を教訓にするのであれば、現下のロシアと日本がどのように二国間関係をマネージしていくのかは難しい問題であるが、「多元的な視点」を持ち、様々な情報を獲得できる環境を有することが、選択肢を増やし、日本の国益につながるのではないか。
わが国がロシアに制裁を科す現在の情勢においても、日本が『戦略的な例外』として、ロシアとの関係を維持することが求められるテーマは3つある。それは、「エネルギー」「食料」「環境」だ。 『エネルギー白書2025』によれば、日本のエネルギー自給率は15.3%で主要7カ国(G7)各国で最も低い。発電は7割程度を化石エネルギーに頼るが、石油の99.7%、天然ガスの97.9%、石炭の99.7%と、ほぼ全量を海外からの輸入に依存している。 ウクライナ侵攻後も、日本は全体輸入量の8.8%に相当する液化天然ガス(LNG)をロシアから輸入している。その供給先は、日本とも歴史的に関係が深いサハリン島から送られてくる。 日本企業が権益を有する「サハリン2」プロジェクトが生産するLNGは、片道おおよそ3日で日本へ到着し、その輸送ルートには、中東のホルムズ海峡や東南アジアのマラッカ海峡といった〝チョークポイント〟が存在しない。加えて、比較的安価だとされる。
長期引取契約により、その調達は安定しており、ロシア産LNGは日本にとって貴重な存在だといえる。G7各国と豪州はロシア産原油の購入にあたりプライスキャップ(価格上限規制)を科した。 サハリン2ではLNGに随伴して石油が産出されるが、この石油がサハリン島から搬出できないと原油タンクが一杯となり、LNG生産も止めざるをえない。こうした経緯から、日本政府は米国などとの協議を継続して行い、サハリン2の石油をプライスキャップ「適用除外」の対象としてきた。
ロシアの化石燃料輸出に厳しい制裁の矢を放ってきた米国であるが、「米国第一主義」を掲げるトランプ政権の発足により、ロシアとの「エネルギー」を通じた米露関係も潮目が変わりつつある。 ※こちらの記事の全文は「終わらなかった戦争 サハリン、日ソ戦争が 戦後の日本に残したこと 戦後80年特別企画・後編」で見ることができます。
加藤 学