2025年ル・マン24 予選総合結果:トヨタ、揃って二桁グリッドも「勝利を争える」キャデラックが最前列独占
2025年FIA世界耐久選手権(WEC)第4戦、第93回ル・マン24時間レースの最終予選「ハイパーポール」が6月12日(木)にフランス・サルト・サーキットで行われ、キャデラック・ハーツ・チーム・ジョータの12号車キャデラックVシリーズ.R(ウィル・スティーブンス、ノーマン・ナト、アレックス・リン)が圧倒的な速さでポールポジションを獲得した。
アタックを担当したリンは、昨年のポールタイムを約2秒も上回る3分23秒166という驚異的なラップを記録し、ハイパーカークラスのライバルたちに強烈なインパクトを与えた。僚友の38号車キャデラック(アール・バンバー)も2番手に続き、キャデラックは初のル・マン24時間ポールを、フロントロウ独占という完璧なかたちで手にした。
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ハイパーポールを経てポールポジション獲得を喜ぶアレックス・リン(キャデラック・ハーツ・チーム・ジョータ)、2025年6月12日(木) ル・マン24時間レース
本大会から導入された新予選フォーマットは、「予選」「ハイパーポール1」「ハイパーポール2」の三段階ノックアウト方式。ハイパーポールの2セッションでは異なるドライバーを起用することが義務づけられており、チーム戦略がより複雑化している中での快挙となった。
一方、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)勢は、2台揃って二桁グリッドにとどまった。
8号車(セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮)は、11日の予選で上位15台に滑り込み、ハイパーポール進出を果たした。ハートレーが担当したハイパーポール1では6番手タイムを記録し、ポール争奪戦への切符を手にした。
だが、日没直後に開始されたハイパーポール2でアタックを任されたブエミは、ミュルサンヌ・コーナーへの進入でタイヤをロックさせ、右フロントがパンク。アタックを完遂できず、8号車はノータイム10番手に沈んだ。
「本当に悔しい」と語るブエミだが、「最優先事項は、決勝でクルマの性能を最大限に引き出すこと。10番手というグリッドは、それほど悪くない」と巻き返しへの強い意欲を見せた。
7号車(小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ニック・デ・フリース)は、さらに厳しい状況に直面した。デ・フリースがアタックを担当したものの、黄旗やトラフィックの影響を受け、ハイパーポールにすら進出できず、17番手に終わった。
なお、予選後には思わぬ波乱も起きた。昨年のWECチャンピオンであるポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963(ケビン・エストレ/ローレンス・ファントール/マット・キャンベル)が、最低重量違反により失格処分を受けた。この裁定により、6号車は決勝レースをクラス最後尾からスタートすることとなった。
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小林可夢偉と話すニック・デ・フリース(ともにTOYOTA GAZOO Racing)、2025年6月12日(木) ル・マン24時間レース
それでも、トヨタ陣営に悲壮感は漂っていない。デ・フリースは「これまでのところ厳しい状況だけど、正しい方向に進んでいると思う」と前向きな姿勢を示し、ハートレーは戦略の意図を次のように明かした。
「シングルラップで究極のパフォーマンスを出せたわけじゃないけど、それはレースペースに重点を置く僕らの戦略の一環でもある」
チーム代表を務める小林も自信をのぞかせる。「僕らは最速ではないかもしれませんが、今シーズンこれまでのレースで完璧なレースを戦い続けることで順位を上げられることを証明してきました。決勝が楽しみです」
さらに平川は「勝利を争えると思っています。頂点目指して頑張ります」と力強くコメントした。
Courtesy Of TOYOTA MOTOR CORPORATION
ピットインするTOYOTA GAZOO Racing7号車、2025年6月12日(木) ル・マン24時間レース FP4
決勝への布石は整った
ハイパーポール終了後に行われた公式練習4回目では、マシンの最終調整や夜間走行時のLEDヘッドライトの確認が行われた。トヨタ勢2台はともにトラブルなくセッションを完了し、8号車が9番手、7号車が12番手のタイムを記録。決勝に向けた準備を着々と進めた。
果たしてキャデラックの圧倒的優位は24時間持続するのか。それとも、レースペースに自信を見せるトヨタ勢が逆転劇を演じるのか。
決勝レースは現地時間14日(土)午後4時(日本時間午後11時)にスタートする予定で、スタート前には正午から短時間のウォームアップ走行も予定されている。ル・マンの長い夜が、どんなドラマを生み出すのか——期待は高まるばかりだ。