かつては「利益率40%超」を誇ったが… ファナックで「フィジカルAI」より先に起きていた”米中ロボット事業”の大変化
ファナック(写真:ロイター/アフロ)(AERA DIGITAL)
かつてはスマホ向け事業の特需で営業利益率40%超にも至ったファナック。いま、売上を支える柱は、当時の主力事業から入れ替わっている。いったい、なぜか。決算書を読み解くと、とくに米国と中国で突出した「ロボット需要」の強さが見えてきた。10月23日に27年3月期の中間決算発表を控える同社について、書籍『決算書「分析」超入門2027』から、26年3月期の決算分析を抜粋して紹介する。
* * *■なぜ? 売上以上に利益の伸び率が大きいワケ 1972年5月、富士通から分離して設立された機械・電機メーカーのファナック。富士山麓の広大な森の中に、本社、研究所、工場など主要施設を置き、コーポレートカラーで塗られた建物群は、まるで「黄色い要塞」です。 数値情報で工作機械の動作を制御するCNCでは世界シェア約50%、産業用ロボットでも世界トップクラスのシェアを持ち、100か国以上で展開。その存在感は「ファナックが止まれば、世界の工場が止まる」と言われるほどです。 2025年末には、AIが自律的に機械を制御する「フィジカルAI」の分野で米半導体大手のエヌビディアと提携したことも話題となりました。 当期(26年3月期)の損益計算書から運動成績をみてみましょう。売上高は8578億円で、前期から7.6%増加、過去最高を更新しました。一方の費用をみると、売上原価率は61.7%と前期から1.3ポイント低下。販管費比率も16.9%へ0.2ポイント低下しました。 有価証券報告書で販管費の内訳をみると、研究開発費は450億円で前期から3.7%減少。研究開発費比率は5.2%と、機械業界の平均水準(4~5%前後)は保っていますが、絶対額は減少傾向です。また人件費は565億円と大きく、前期比1.8%の微増ですが、売上比では7.0%から6.6%へ低下。 売上増に加え、原価率や販管費比率が低下したことでレバレッジがかかり、営業利益は1838億円と前期から15.7%増加。利益の伸び率は売上の2倍以上です。また、営業利益率は21.4%と1.5ポイント上昇。 費用のうち、人件費や減価償却費といった固定費の割合が大きいため、売上が増えて工場の稼働率が上がるほど利幅が拡大する構造になっています。それでもスマートフォン向けロボドリルの特需があった2015年3月期のピーク営業利益2978億円(利益率40.8%)には及んでいません。■世界の二大製造拠点にバランスよく分散 次に、事業別の売上を分析してみましょう。ピーク利益を記録した2015年3月期、前期、当期の売上構成を比べてみると、大きく変化しています。 15年3月期はスマホ特需によってロボマシン(ロボドリルやロボショットなど、CNC<数値制御装置>とサーボモータを積んだ加工用機械を販売)の売上が約40%を占めていましたが、当期はロボット(自動車や電機の工場で溶接・組立・搬送を担う産業用ロボットの開発・販売)が44%、ロボマシンが15%と比率が逆転しています。 前期との比較では、基幹事業であるFA事業(工作機械の頭脳にあたるCNCやサーボモータなど、「工場の自動化」に欠かせない部品を各種製造会社に販売している)は2085億円で、7.0%増と好調。 特に伸びたのがロボット事業で、前期から14.9%増と、唯一2桁増を達成しました。中国でのEV関連向けと一般産業向けの売上がともに好調に推移し、中国でのロボット部門売上は約1.6倍に急増しています。 対照的に、ロボマシン事業は主力3機種のうちロボドリルとロボショットが振るわず、前期から80億円(5.8%)減と、唯一の減収となりました。 当期の地域別の売上構成比をみると、米州と中国がそれぞれ3割弱を占め、ほか地域が1~2割と、日本企業でありながら世界中にバランスよく分散していることがわかります。 なかでも米州と中国が突出しているのは、この2つが世界の二大製造拠点だからです。米州はロボット売上1611億円と同部門全体の4割超を占め、自動車産業などの自動化需要を吸収。中国は世界最大の工作機械・ロボット市場であり、EVや半導体への投資が続いています。 特に米州においては、トランプ政権による強力な米国内投資の誘致政策を追い風に、9000万ドル(約143億円)を投じて、2027年末までにミシガン州に約7.8万㎡の新施設を建設予定です。これはフィジカルAIなどの先端自動化技術を米国内の製造現場へ直接送り込む布石であり、同社のグローバル戦略は新たな攻めのフェーズへと入っています。 ※現在発売中の書籍『決算書「分析」超入門2027』では、ファナックの貸借対照表からみえる「まるで力士」のような体つきや、キャッシュ・フロー計算書からみえる「資本効率の改善の余地」などについても分析しています【AERA Books MEMO】『100分でわかる! 決算書「分析」超入門 2027』(佐伯良隆著)「決算書から、世界を読む。」ビジネスの最重要スキルかつ、投資の最重要リテラシー。2027年版も圧倒的「わかりやすさ」でアップデート! 【金利上昇】みずほFG(3大メガバンク)/【軍事AI】パランティア/【フィジカルAI】ファナック/【地政学リスク】日本郵船/【半導体】任天堂……ほか