米国向けiPhone、大半が中国製ではなくなる アップルが説明
米アップルは1日、アメリカで販売するiPhoneやそのほかの機器の大半の生産を、中国から別の国に切り替えていると明らかにした。この措置は、ドナルド・トランプ米大統領が中国からの輸入品に高関税をかけていることを受けてのもの。 アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)によると、今後数カ月のうちに、米市場向けiPhoneの大半はインドで生産され、iPadやApple Watchなどの主要生産拠点はヴェトナムになるという。 トランプ大統領は、主要な電子機器を「相互関税」の対象外にすると発表している。しかし、アップルの試算では、中国に対する高関税によって今年4〜6月期に9億ドル(約1300億円)のコストがかかる可能性が示されている。 トランプ政権は、アップルが生産拠点をアメリカに移すことを望んでいると繰り返し表明している。 世界中の企業が米政権の貿易政策によって引き起こされた、国際貿易の大きな変化に対応しようと躍起になる中で、アップルはこの試算を公表した。 クックCEOは1日、投資家との電話会合で同社の財務状況について協議した。その際、参加者らの関心を、同社のアメリカ国内への投資に集めようとしているように見えた。 クック氏は会合の冒頭で、同社が今後4年間で米国内のいくつかの州に計5000億ドル(約72兆8500億円)の投資を行う計画があると説明した。 ■米国向けiPhoneの大半はインド製に クック氏はまた、アップルは米国向け商品のサプライチェーンを中国から別の場所に切り替えつつあり、主にその恩恵を受けるのはインドとヴェトナムだと述べた。 「アメリカで販売されるiPhoneの大半は、インドが生産国になるだろう」 一方で、ヴェトナムは「アメリカで販売されるほぼ全てのiPad、Mac、Apple Watch、AirPods」の主要生産拠点になる見通し。 米国以外で販売される商品の大部分については、引き続き中国が生産国になると、クック氏は付け加えた。 トランプ政権は、企業側に米国内での生産を増やすよう促すため、他国からの輸入品に「相互関税」を課すと発表、アップル株は急落した。 しかし、政権はその後、関税措置の緩和を求める大きな圧力に直面。関税発動から間もなく、政権は携帯電話やコンピューターを含む特定の電子機器を対象から除外すると発表した。 ■不確実性が広まる 貿易上の混乱は今のところ、アップルの売り上げに影響を及ぼしてはいない。 アップルによると、今年1〜3月期の売上高は、前年同期比5%増の954億ドルだった。 関税がもたらす損害の兆候を注視している米通販大手アマゾンもまた、1〜3月期の北米Eコマース事業は前年同期比8%増と、売り上げは堅調に推移しているとしている。 アマゾンは今後数カ月間で、同様の成長を予測している。 同社のアンディー・ジャシー社長は、「関税がいつ、どこに落ち着くのか、当社の誰にも正確にはわからない」としつつ、新型コロナウイルスのパンデミックのような混乱期から、アマゾンは以前よりも強くなって立ち直ったと述べた。 「当社は、困難な状況を他社よりもうまく乗り越えることができる」と、ジャシー氏は続けた。「私は、今回もそうなる可能性があると、楽観視している」。 ■新拠点、位置づけの転換 分析会社ムーア・インサイツ・アンド・ストラテジーのパトリック・ムーアヘッド最高経営責任者(CEO)は、iPhoneのサプライチェーンのインドへのシフトは「印象的」だとしている。 「これは、中国だけがiPhoneを組み立てることができるとする、(クック氏の)数年前の発言からの著しい変化だ」 「アップルがここで示さなければならない進歩はたくさんあるが、かなり良いスタートだと思う」と、ムーアヘッド氏は述べた。 アマゾンもまた、関税の影響を受けた際の回復力を高めるために、自社の位置づけに変更を加えている。 同社は、多様な販売者の確保に取り組んでいるとしている。ジャシー氏は、自社の規模と日常必需品の供給という役割をふまえ、今後数カ月間に向けて良い状況にあると感じていると述べた。 現在のところは、アマゾンの売り上げは関税をめぐる混乱の影響は受けていないという。むしろ、一部の顧客が備蓄を始めたことで、同社の事業が恩恵を受けた可能性があると、ジャシー氏は述べた。 同社の今年1〜3月期の総売上高は前年同期比9%増の1557億ドル。利益は約170億ドルと、前年同期に比べて60%以上増えた。 (英語記事 Apple says most US-bound iPhones no longer made in China)
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