レーシングコントローラーは巨大モーター搭載が主流に【TGS2025】(日経クロストレンド)
東京ゲームショウ2025(TGS2025)ではレーシングコントローラーの展示が多い。そのほぼ全てが、内部に巨大なモーターを搭載するダイレクトドライブ方式を採用する製品になっている。 【関連画像】Corsair Japanブースに展示されていたFanatecブランドの「ClubSport DD」(実売価格:12万9000円) 自動車の動きをリアルに再現したレーシングシミュレーションゲームが、流行の兆しを見せている。近年では、レーシングシミュレーションゲームがレーサーの練習道具として認識されるようになった。また、レーシングシミュレーションゲームで運転技術を磨き、実車のレースに参加する「ゲーマーレーサー」も徐々に増えつつある。海外ではF1のチャンピオンがレース期間中にレーシングシミュレーションゲームをプレーし、話題になったこともあった。 レーシングシミュレーションゲーム上で実物の自動車と同じように操作するには、ハンドルやアクセルペダル、ブレーキペダルが必要で、レーシングコントローラーは不可欠だ。 TGS2025では、レーシングコントローラーを展示するブースが多い。筆者が確認した限り、ホール3のCorsair Japanブースやホール4のHORIブース、ホール9の「ゲーミングハードウェアコーナー」では、DELE(デーリー)ブースやMOZA Racingブース、「eスポーツコーナー」ではFlashFireブースなどで展示していた。 それらのブースで展示していたレーシングコントローラーの共通点として、「ダイレクトドライブ」方式を採用した製品が多い点に注目したい。 ●大型モーターの軸にハンドルを直結 レーシングコントローラーのダイレクトドライブ方式は、大型モーターの軸にハンドルを取り付け、ゲーム中のフォースフィードバックの反応を直にハンドルに伝える構造。従来方式では小型モーターを使い、その動力をギアやベルトでハンドル軸に伝えていた。そのような従来製品と比べると、ダイレクトドライブ方式のレーシングコントローラーはフォースフィードバックの応答が素早く、その力も非常に強いという利点がある。本格的な挙動を好むレースゲーマーに好まれる。 ただし、ダイレクトドライブ方式のレーシングコントローラーは大型のモーターを搭載するため、従来製品に比べて重量がかなり増す。コントローラーを設置するには、本格的なコクピットといった設備があるのが好ましい。 モーターのトルクが20Nm(ニュートンメートル、ある定点から1m離れた点に向かって直角方向に1Nの力を加えたとき、その定点の周囲を回転させようとする力の単位)を超える製品もあり、本物のレーシングカーのようなハンドルの重さを再現できる製品もある。そのため、ゲーム中にクラッシュし強烈なフォースフィードバックがハンドルに伝わり、指や腕が挟まれけがをする危険性も指摘されている。 また、多くの製品は「ホイールベース」と称し、ハンドルや各種ペダル類は別売りだ。そのため一式をそろえようとするとかなりの金額となる。製品によっては「ホイールベース」だけで20万円以上もする。そのため、ダイレクトドライブ方式のレーシングコントローラーは、レースゲームやレーシングシミュレーションゲームの初心者が、手を出しにくい印象がある。 ●手軽さをアピールした製品も 東京ゲームショウ2025では、コクピットのような大がかりな設備を必要としないダイレクトドライブ方式のレーシングコントローラーを展示しているブースもあった。 例えばCorsair Japanブースでは、テーブルに同社のFanatecブランドが販売する「Gran Turismo DD Pro QR2(5 Nm)」(12万5000円)を、製品付属のクランプでテーブルに固定し、日本のゲーマーのプレー環境に近い形で展示していた。担当者によると、ダイレクトドライブ方式のレーシングコントローラーの手軽さをアピールしたいという。 HORIブースが開発中の製品として展示していたレーシングコントローラーもダイレクトドライブ方式を採用している。こちらもテーブルに固定して利用できる製品だ。3Nmとトルクは他社製品と比べると控えめだが、実売は4万円台を想定しているという。こちらを試遊してみたが、フォースフィードバックの力は確かに従来製品に比べて弱いものの、反応の素早さがあった。また、タイヤが滑り始める感触や、コース脇にタイヤをはみ出したときに伝わる感覚も手に感じることができ、ダイレクトドライブ方式を採用するレーシングコントローラーの裾野を広げる存在となりそうだ。 こうした製品バリエーションの広がりは、これまで一部のコアゲーマーに限られていたダイレクトドライブ方式のレーシングコントローラーを、より幅広い層へと浸透させるきっかけとなりそうだ。今後は、初心者でも導入しやすいモデルからハイエンドまでラインアップされ、間口が広がることで、レーシングコントローラーなどを含めたレースゲーム市場全体がさらに拡大する可能性がある。 (文・写真/田代 祥吾) 日経Gamingでは「東京ゲームショウ2025」に関する情報を発信中です。ぜひご覧ください。 ・日経Gaming https://xtrend.nikkei.com/sp/gaming/ ・東京ゲームショウ特設サイト https://xtrend.nikkei.com/sp/tgs/
田代 祥吾