水上恒司×山下美月×宮舘涼太にインタビュー、人が抱く執着の怖さとは?『火喰鳥を、喰う』で三角関係に
ミステリーホラー映画『火喰鳥を、喰う』が、2025年10月3日(金)に全国公開。主演の水上恒司、共演の山下美月と宮舘涼太にインタビューを行った。
映画『火喰鳥を、喰う』は、原浩による同名小説を実写映画化した作品。ある日、主人公・久喜雄司のもとに、かつて戦死したはずの祖父の兄・貞市が書いたという謎の日記が届く。そこには「ヒクイドリ、クイタイ」という生への執着が記されていた。その日を境に、貞一が死ななかった新たな現実が生まれてしまい、その貞市の生への執着が現実を侵食。雄司らの現実を徐々に変容させていく。それぞれが抱える“執着”は、どこに行きつくのか?“怪異”か仕組まれた“罠”か、先読み不能のミステリーが描かれる。
ファッションプレスでは、謎と怪異が交錯する奇妙な世界に巻き込まれていく重要人物——主人公の雄司を演じた水上恒司、雄司の妻・夕里子を演じた山下美月、夕里子への異様な執着を見せる超常現象に詳しい男・北斗総一郎を演じた宮舘涼太の3人にインタビューを実施。
作品では殺伐とした三角関係にあった3人だが、和気あいあいと仲良さげな姿には、思わずほっこり。芝居に対する三者三様の姿勢、映画のテーマの1つ“執着”に関連した話など、貴重な話をたっぷりと伺うことができた。
ミステリーとホラーを融合させ、歪んだ愛も織り交ぜられた映画『火喰鳥を、喰う』。まずは原作や台本を読んだ際の感想をお聞かせください。水上:本当にいろんな要素がある作品ですが、特に重要になってくるのが“執着”というワード。執着というのは、人間がつくりだすもの。どんなジャンルの作品であれ、映画というのは人間が人間のためにつくるものなので、同じ人間がつくりだす“執着”を大事にしながら作品に向き合おうと思いました。
山下:原作や台本を読んだ際、様々な種類の怪異が出てくるので、どのように映像になるんだろうと、まず思いました。私自身、こういった“ザ・ミステリー”という作品は初めてでしたので、この映画を通して、原作者の方や監督が何を伝えたいんだろう、観る人にどういう答えを導き出してほしいんだろうというのを考えながら本を読んでいました。
作中ではすごくギスギスとした三角関係にあったお三方ですが、撮影現場での雰囲気はいかがでしたか?宮舘:実際、僕が撮影現場に入ったのは水上くんと山下さんよりもだいぶ後だったんです。なので、すでに現場の空気感が出来上がっていて。その中に入って行ったのですが、なんというか、夏休み明けの転校生みたいな感じでした(笑)。水上・山下:たしかに。
宮舘:それも含めてすごく北斗とも重なるなと思いましたね。はじめに雄司と夕里子がいて、あとから北斗がやってきて自己紹介パートに入るみたいな。僕はこういう人です、という紹介みたいなところを自分自身と北斗の役柄で重ね合わせて、北斗の人物像をつくり上げていったので。
ジャケット 56,100円、ベスト 45,100円/ともにアオイワナカ(AOIWANAKA)、リング(左手小指) 42,900円/ボーニー(BONEE)、その他スタイリスト私物そこから打ち解けるのは早かったですか?宮舘:いやあどうなんでしょう。水上:ずっと、山下さんが宮舘さんでツボに入ってました。
どういうことですか?(笑)
山下:本当に水上さんとの絡みと宮舘さんの雰囲気がおもしろくて、私ずっとヘラヘラしてて(笑)。よくないって分かってはいるんですけど(笑)。宮舘:3人がお笑いのトリオだったとしたら、すごく上手くいくと思います。水上:なにどういうこと(笑)。山下:絶対にいやだ絶対にいやだ。宮舘:いやおれも絶対嫌だよ?(笑)。
皆さんの仲の良さが伝わってきます(笑)。一方作中での三角関係についてお聞きしたいのですが、皆さんはどのように作中の3人を見ていましたか?水上:僕自身は、現実でもよくあるような三角関係だなあと思って見ていました。僕自身、三角関係の経験はないですが、周りの話を聞いていると意外とよくあるよな、と。芸能界でもよくあるじゃないですか?(笑)宮舘:今その話題はやめておきましょう?(笑)水上:そういった意味でいうと、世界中には約70億人いますけど、その中で自分が身を置いている環境って狭い世界じゃないですか。こんなに世界は広いのに、なぜか三角関係の中の人間関係に執着してしまう、苦しくなってしまうという、そこにすごくリアリティを感じます。その生々しさをしっかり僕らで表現しなきゃなと思っていました。山下:私は夕里子視点から考えたことになるんですけど…。夕里子は本当に三角関係の中にいたのかな?と疑問に思っていて。正直、雄司と一緒になっても、北斗と一緒になっても、夕里子はきっと心から幸せを感じることはできないんです。夕里子というダイヤモンドを奪い合う怪盗2人の間にはいるけれど、ただじっとそこにいるだけという…。水上:「ロミオとジュリエット」でもそうだし、『タイタニック』でもそうだし、三角関係の中でカップルが生まれたとしても、必ずしも幸せになれるというわけではないということですよね。
山下:その通りです!
皆さんが演じられたキャラクターの魅力と、ご自身との共通点を教えてください。水上:僕が演じた雄司は、化学の助教で、科学的根拠のないものを排除したがる性格。超常現象や霊的なものは信じられない。とにかく何事にも“疑問”を抱いて、徹底的に問いただしていくタイプ。僕も何かと“疑問を抱く”タイプではあるんですが、雄司とは若干違う気がしていて。妖怪とかおばけとか、目に見えないものを信じていたいというか、あったらいいなと想像することが好きなので。これだけ調べたらスマホでなんでも出てくる時代だからこそ、目に見えないものを信じられる力というのも大事にすべきだなと。
山下さんが演じた夕里子はどんな人でしょう?
山下:夕里子は、えーっと、“ミステリアス美女”、です。水上:ミステリアス美女!?自分で言う(笑)山下:ちがう、私のことじゃなくて(笑)。でも、私は美女の役をやりました。宮舘:さすがです。山下:ビジュアルの話ではなく…(笑)。作中の夕里子が「都会から来た人だよ」と扱われる描写があるのですが、そこの場面がすごく好きで。今も田舎、都会の距離感ってありません?私は東京出身ですが、良くも悪くも「東京の子」「東京からきたきれいな人」みたいにラベルを貼られる瞬間があって、そのリアルさにとても共感しました。
リアルな世界観がそのまま表現されていたんですね。山下:『火喰鳥を、喰う』では、“すべてが対になっている世界”がコンセプトでもあると思っています。田舎と都会のあいだ、雄司と北斗に挟まれる夕里子、というように、夕里子は常に対照的なものの境目にいる存在なんですよね。
先ほど夕里子は、そこにただじっといるだけ、とおっしゃっていましたが、その解釈は最初から持っていましたか?
山下:小説を読んだ時から感じていました。それから、小説だと夕里子は“能面のような女性”と書かれていて、一見すごく芯が通っているようで、実は一番揺れやすい人。結局、夕里子は本当に雄司と田舎で生きていきたいのか、それとも北斗と一緒に、自分の特殊な力を認めて生きていきたいのか…。答えは最後まで自分の中で決めないとしました。だから常にふたりの“あいだ”に立ち、相手に呼応して、あえて揺らそうと。その揺れ自体が夕里子の“生”だと思ったんです。
Page 2
宮舘さんはいかがでしょう?宮舘:北斗もミステリアスな男です。何を考えているのかわからない、そして何を言い出すかすごく気になるキャラクター。僕自身とは全く似てないですが、演じてみてはじめて、“あ、北斗になれる自分がいるんだ”と気付けました。
存在感の強い人物ですよね。
宮舘:そうなんですよね。人間って、「何か飲み物を飲みたい」、「ここを歩いていきたい」とか、日々“思念”に突き動かされて生きている。その“思念”がこの作品では大事なキーワードなので「“思念”はとても大切なんだよ」というのを観客に伝えるべく、北斗って存在しているのかなとも思いました。“思念”をもう少し噛み砕くと?
宮舘:「〜したい」というふとした衝動や方向性、言葉になる前の気配です。北斗はそれを強く帯びている人。考えは見えないのに、次の一歩に“引力”があります。
それぞれの役を演じるにあたり、大事にしたことは?山下:おふたりのお芝居についていこうという気持ちでいました。雄司と北斗がこの作品にすごくマッチしていたので…全任せすることに不安は一切ありませんでした。前半は水上さん演じる雄司のトーンにあわせて、“妻として支える”、後半では、北斗の存在感が増して作品のトーンも変わっていくので、雄司に寄るのではなく、ふたりの中間にいようと思い演じていました。宮舘:そう言っていただけてすごく嬉しいですね。僕は個人としては映画初出演になるので、皆さんにしっかりついていこうというスタンスでいました。とはいえ、作中では北斗が話を進めていく役割を担っていたので、毅然と、飄々とした態度の北斗により説得力を持たせることができるよう努めました。
具体的にはどのように?
宮舘:とにかく台本を何度も読み込んで、分からない事はすぐに調べて、北斗のセリフ/話を理解しようと徹底していました。語る自分が内容を理解していないと、みんなのことを納得させることはできないので。どうみんなを説得して巻き込んでいくかということを考えながら台本を読み込んでいました。水上:僕もいかにリアリティを持たせるかを意識しました。邦画・洋画、民放ドラマも含めて、最近は“きれいなものだけを見せる”傾向、ルッキズムが強いと感じていて。今回はそこから脱却するために、ノーメイクで臨みました。ご自身で提案されたのでしょうか?
水上:はい、自分からです。たとえば田舎で暮らす人ならヒゲは伸ばしっぱなしか?いや都会でもあり得るよな、と生活の手触りを想像しながら、その土地の暮らし・文化・歴史を丁寧に調べました。実際に歴史のある建物とかもお借りして撮影もさせていただいたのですが、現場に立つと土地のパワーや空気感をはっきり感じるんです。そのまま画に乗せて届けたいと思っていました。
映画『火喰鳥を、喰う』のキーワードは、みなさんおっしゃっているように“執着”と“思念の強さ”。作品外で、人間の執着の恐ろしさ、思念の怖さを感じたエピソードはありますか?水上:僕1個すごく強い思念の話があるので、最後に言います。宮舘:めっちゃハードルあげるじゃん。山下:うーん、あるかなあ。水上:え、じゃあ僕から言っていいですか?つい最近のことなんですけど、宮舘:結局先に言うんだ(笑)。水上:つい最近、久々に電車に乗ったんですよ。山手線に乗って、とある駅で降りて、トイレに行きたくてトイレに入ったんです。そうしたら、横に立っている方がかなり便器から離れて立っていたんです。山下:ええ??水上:あろうことか横に思い切り振ったんですね。そこから先は想像にお任せしますが、初めての体験で衝撃的すぎて三度見くらいしました。宮舘:いやちょっと、僕らも今衝撃受けてますよ。水上:だからその、執着ってこう、周りの世界が見えなくなって“入っていく”、みたいな感じだと思いますが、僕のこと全く見向きもせずに立ち去っていきました。笑っちゃいましたし、すごく怖かったです。これから『火喰鳥を、喰う』が始まるのかと。
宮舘:たしかに3人目でしたね、話す順番。あとその話を映画に絡めないでください(笑)。
気を取り直して、山下さんはいかがでしょう?山下:私は、その日起きたことを夢でも繰り返し見るんですけど、これが執着なのかな?と思っています。夢って、自分が考えていることが反映されるって言うじゃないですか。普段から「今日はこれがだめだったな」「こうすればよかったな」とか、夜に反省会をしているんですけど、自分の生活に執着が強いからこそ、夢でもその日にあったことを繰り返してるのかなって。宮舘さんはどうですか?
宮舘:最近の話ではないですが、「デビューする」ということが思念でもあり執着でもありましたね。今Snow Manとしてデビューして5年目になりますが、デビューさせていただけるまでにそこまでの下積みで15、6年かな?長い年月をかけて。デビューを目標に日々頑張ってきたので、グループへの執着、グループでデビューすることへの執着はとても大きかったと思います。
【作品詳細】映画『火喰鳥を、喰う』公開日:2025年10月3日(金)監督:本木克英脚本:林民夫出演:水上恒司、山下美月、宮舘涼太、森田望智、豊田裕大、小野塚勇人、吉澤健、平田敦子、カトウシンスケ、麻生祐未原作:原浩「火喰鳥を、喰う」(角川ホラー文庫刊)
配給: KADOKAWA、ギャガ
©2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会