パウエルFRB議長、この夏にかけ関税は目に見えて物価に影響へ

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は1日、インフレのデータには向こう数カ月で関税の影響が顕在化し始めるだろうと述べた。その一方で、なお不確実性は残るとも認めた。

  パウエル議長は欧州中央銀行(ECB)がポルトガルのシントラで開いた年次フォーラムで、他の中央銀行総裁らとともに公開討議に参加。「われわれは注視している。夏にかけていくらか数値が上がると予想している」と話した。

  ただしその影響が「想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのか」は今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意があるともパウエル議長は述べた。

  連邦公開市場委員会(FOMC)は今年、利下げを見送り続けている。トランプ米大統領が利下げ圧力を強めているにもかかわらず、FOMCが金利を据え置いているのは、関税の影響でインフレが長期化するのかどうかを見極める必要があるからだ。しかし現時点では物価の上昇は顕在化していない。

  パウエル議長はトランプ関税がなければ今年、追加利下げを実施していたとの見方をあらためて示した。

  「関税の影響がどうなるのか様子を見るのが堅実だと考えている」と述べた。

  7月は利下げには早過ぎるかとの質問に対し、パウエル議長はその可能性を排除せず「検討は会合ごとに行われる」と回答。「どの会合も選択肢から除外しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」と述べた。

  次回FOMCは7月29ー30日に開かれる。

  トランプ関税の影響は現時点で、物価や労働市場などの経済データに鮮明に反映されていない。これを根拠にトランプ大統領と政府高官らは、利下げ要求を強めている。

  パウエル議長は「インフレの時期と幅、持続性は非常に不確実だと常々述べてきた」と話した。

  トランプ氏が任命したウォラーFRB理事とボウマン副議長は、7月FOMCでの利下げが適切になり得ると主張。両氏とも良好な経済データをその理由に挙げている。

  パウエル氏はトランプ氏からの個人攻撃で職務が遂行しづらくなっているか尋ねられると、「私は自分の仕事に集中している」と答え、会場からは拍手がしばらく続いた。

  同氏は「重要なのは、議会から与えられた目標を達成するために、われわれの手段を使うことだ」と述べ、「われわれはそのことに100%集中している」と強調した。

  来年5月のFRB議長任期満了後に辞任するかどうかについては、今回も明言を避けた。パウエル氏のFRB理事としての任期は2028年まで続くが、FRB議長は議長職の任期終了とともに退任するのが通例となっている。

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原題:Powell Reiterates Fed Would Have Cut More If Not for Tariffs(抜粋)

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