日本からアメリカを取ったら何が残るか?
今週、アメリカから手紙が来るかも、来ないかもと呟いていたのですが、来たようです。8月1日から25%。手紙の文面からすると多少ネゴの余地はあると思いますが、私は選挙の結果を踏まえないと日本側は何も動けないとみています。そんな中、この25%に日本は怒るのか、あきらめるのか、はたまた粛々と代替策を考えるのか、トランプ氏は実に良い機会を与えてくれたと思っています。そこで今日のテーマは
(日本)ー (アメリカ)=??? です。
カナダはトランプ氏の傍若無人な政策に大いなる反省をし、アメリカ依存体制から世界とバランスある経済貿易関係の再構築を目指しています。カーニー首相は表立っては事を荒立てないですが、経済依存シフトは着実に変化してくると思います。カナダから初の液化天然ガスのアジア向け輸出ターミナルが完成して出荷が始まりました。日本向けも一定量あります。輸送ルートに政治地政学的リスクが少ないことで今後リスクヘッジになりますし、カナダから見てもアジア方面との関係強化に一躍買うことになります。
実はカナダの原油もアジア向け輸出が急増しています。12年かけて建設していた原油のパイプラインが24年5月にバンクーバー港とつながったため、アジア向け輸出は従来の3倍の日量89万バレルとなり、その多くを中国向けに輸出しています。カナダの原油は重質油なので日本のようにガソリンなど軽質油系の需要が高い国にはあまり魅力がないのですが、カナダはアメリカ向け原油輸出の比率を下げるためにもこの輸出機会をうまく使って貿易の多様化を図っていくものと思われます。
では日本はカナダのような器用な真似ができるのでしょうか?
日本は戦後、アメリカからビジネスのみならず文化、社会、政治などあらゆる方面で影響を受けましった。カナダはアメリカの51番目の州になれという話題がありましたが、私から見れば日本とアメリカの関係はもっと緊密で誰が見ても「日本とアメリカはデキている」と思っているでしょう。ただ、アメリカからすると真の意味で日本が好きなのではなく、利用しやすいということなのだと思います。第二次大戦後の呪縛からいまだに切り離せない状態と言ってもよいでしょう。
その1つが憲法であり、その改正1つすらできないのです。永世中立国であるスイスですら自国の軍隊はあるのです。平和と軍隊を持つことは別の話ですが、日本はアメリカから戦闘機や武器を購入して「みつぐクン」になることで関係維持しようと懸命だというのがひしひしと伝わってくるのです。
トランプ大統領 ホワイトハウスXより
日経に「米なき自由貿易圏深化を タニン・チャラワノン氏」という記事があります。タイのCPグループ上級会長の意見ですが、今回のトランプ氏の高関税主義に「もうアメリカに依存ばかりするのはよそう」と述べています。
トランプ氏と日本政府の関税交渉における最大のギャップとされる自動車問題。トランプ氏は「日本はアメ車を買ってくれないじゃないか」と言います。日本は「今さら何を」と思っているでしょう。アメリカ側のロジックに立てば「長年アメリカは日本のクルマを売らせてやっているじゃないか。いくら儲けたんだ。あまりにも不平等じゃないか」と。「車の代わりにいろいろ買っているじゃないですか、装備品から農産物まで」と反論しますが、24年のアメリから見た対日本の貿易赤字額は687億ドル。これに肉薄するのが韓国で662億ドル。ちなみに対台湾は737億ドルの赤字で対中国は2952億ドルの赤字。あえてコメントするなら対日本は貿易赤字が前年比31億ドル減ったのに対して対韓国は152億ドルも増えています。対台湾はなんと前年比263億ドル増です。トランプ氏から見れば「日本も中国も韓国も台湾も酷い奴らだ」というわけです。
トランプ氏はなにがしかの関税を引き上げるわけで日本は不利になります。唯一生き残る方法は現地化を進めるしかないのですが、アメリカで日本車を日本並みの品質管理とコスト管理で製造するのは容易ではないと思います。とすれば日本企業からすると「アメリカは儲からない国」になりかねないのです。
ならばしょうがない、他の国にシフトするか、という話です。これができるかどうかは日本企業の腹積もり次第だと思います。一方、アメリカとの関係が薄れるのなら日本としては2つのことを考えなくてはいけません。1つは日本が持つアメリカ国債を今より2-3割減らせるか?であります。国債運用者からすればアメリカ国債のような安定した大口のマーケットは他で代替できないと言います。ただ、中国にできて日本にできないはずはなく、それはできないという言い訳なのだと思います。本気度が足りないだけ。
もう1つは防衛と装備品の問題です。装備品は日米関係が180度転換しない限りアメリカは日本に売ってくれると思います。向こうは商売ですから。その間に自営する準備を進めるしかありません。防衛については現在のアメリカの存在は一種の保険だと思っています。いざ、何かあった時、アメリカがどこまで関与するかは時の政権次第だと思っています。よって保険料を払っても保険金が下りるとは限らないとするならこちらも自立する機運が出てもおかしくはないのでしょう。
トランプ関税は日本を覚醒させる可能性があり、逆説的ですが、日本にとってチャンス到来、従前の考え方をすべて見直す機運すら高まってきてもおかしくないのです。いや、そうならなければいけません。「アメリカにすがる日本」は美しくないと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年7月8日の記事より転載させていただきました。