これ、歯磨き粉じゃなくて「バッテリー」(開発中)。可能性、無限大っぽそう

Image: Thor Balkhed

現代社会を支えているのは何か。それはSNSでもスマホでもスマートリングでもなく、バッテリーです。どんなガジェットも充電切れたらただの石ですから、バッテリーがあってこそです。

このバッテリー、今は硬いブロックのようですが、もしふにゃふにゃに柔らかいバッテリーができたらどうなるでしょう。バッテリー必要不可欠のガジェット業界に大変革が起きるかもしれません。

スウェーデンの研究機関が研究開発を進めているのが、そんな液体バッテリー。チューブからでる歯磨き粉くらい柔らかく、好きな形に成形できる液体バッテリーです。

3Dプリンターで好きに形成

バッテリーは、電気機器で最も大きなパーツです。固体でゴツい。これがもし柔軟性のあるものになれば、デザインに制限はなくなります。どんな電子機器にも、今までにない方法で入れこむことができるのです。

そう語るのは、研究チームを率いるリンショーピング大学のAiman Rahmanudin氏。

電池には2種類の金属、プラス極とマイナス極があり、化学反応によってプラスからマイナスに電子が移動し、電気エネルギーを作ります。バッテリーが大きくなると生み出す電気も増えますが、その分物理的に大きい電極が必要になるので、結果バッテリーそのものが分厚くなってしまいます。

今までも液状バッテリーは研究されてきましたが、特殊な素材や開発プロセスが必要で、実用化が難しかったというRahmanudin氏。今回研究しているのは液状素材を使うのではなく、電極を液体状にする手法。通電性のあるプラスティック(複合ポリマーとリグニン)を活用し、柔らかいバッテリーを開発しました。

結果、500回以上も充電が可能で、伸縮性も十分、素の状態から2倍にまで伸びるバッテリーが完成。その柔軟性を利用し、3Dプリンターを使って好きな形に成形することができます。

また、素材のリグニンは紙の製造過程でできる副産物であり、これを価値の高いバッテリーとして再利用することで、原料が豊富なだけでなくサステナブルなバッテリーとしても魅力的だといいます。

Image: Thor Balkhed

歯磨き粉みたいなバッテリーが完成したものの、現時点では弱点が。それは電圧が弱いこと。

「このコンセプトが可能だと示すことはできました。次は性能です。今のところ電圧は0.9ボルトほどしかありません」と語るRahmanudin氏。研究開発チームは、今後、電極の電圧を上げられるようプロジェクトを進めていく方針で、他の化合物を試していく予定だとのこと。

ちなみに、単3電池の電圧が一般的には1.5ボルト、スマホのバッテリーの多くは3.7から4.2ボルトです。

論文はScienceに掲載されています。

柔らかいバッテリーがあれば、昨今加熱する薄いスマートフォンもより簡単により薄型化するかもしれませんね。

Source: Linköping University

関連記事: