三菱商事、天然ガスに回帰 中東緊迫で揺らぐ脱炭素
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中東情勢が大手商社を揺さぶる。三菱商事は1日、2030年度までの脱炭素の目標を後退させた。世界の貿易やエネルギー調達は有事下にある。安定した調達網の確立に向け、中東以外で液化天然ガス(LNG)などへの投資を拡大する。
「中東情勢を含めて地政学リスクが顕在化した。脱炭素社会への国際協調の前提が揺らいでいる」。1日の決算記者会見で三菱商事の中西勝也社長は方針修正の必要性を説明した。
三菱商事は50年までに温暖化ガス(GHG)の排出量を実質ゼロにする目標を21年に発表した。21年末に国内では政府公募の洋上風力事業を3海域の全てで落札。22年にはオランダでも洋上風力発電の事業権を得た。
25年の第2次トランプ米政権の発足後、世界の脱炭素の動きは後退した。さらに26年2月の米国とイスラエルによるイラン攻撃に伴う中東情勢の緊迫がエネルギーの安定調達のあり方を一変させた。
今回の新目標では、50年までの脱炭素目標を維持する一方、30年度までに20年度比でGHG排出量を半減させる目標を「30%〜半減」と緩和した。中西社長は「事業環境に柔軟に対応していく」と話す。
生成AI(人工知能)の普及で世界的に電力需要が高まっている。エネルギーは安定供給、価格、脱炭素という3つの側面が重要になる。再生可能エネルギーだけでは現実的には賄いきれない。
「現実解」として注力するのがLNGを含む天然ガスだ。中東に世界埋蔵量の半数が集中する原油と比べて天然ガスは各地に分散する化石燃料だ。石油などと比べれば二酸化炭素(CO2)排出量も3〜4割少ない。
三菱商事は6月までに天然ガスを開発するエーソンを負債を含めて約1.2兆円で買収する。エーソンの買収を機に米国で新たな天然ガスの供給網を構築する。
中西社長は「戦略の基軸をLNGから天然ガスにする。天然ガスはLNGにも電力にもなる」と語る。
エーソンの天然ガスを米国で運営するガス火力発電所に供給する。中東産LNGの調達が難しくなる中で代替需要が高まる米産LNGの輸出拡大に生かす。
三菱商事は他にもカナダでのLNG新事業が25年度に出荷を始めた。今後の拡張計画もある。三井物産などと共同出資する米国の「キャメロンLNG」も増産方針だ。アジアにおけるマレーシアやブルネイなどのLNG事業とも合わせて分散調達を進める。
他商社も地政学リスクに向き合う。
三井物産は1日、成長投資の積み上げによって30年ごろで1.4兆円超の純利益を目指す計画を掲げた。堀健一社長は28年度までの投資の考え方について、「(地政学リスクの上昇を踏まえ)投資の規律は上げ、要求リターンも高く設定する。万全の体制で臨んでいく」と話した。
丸紅の大本晶之社長も「(今期は)リスクを下げることを徹底する」と語る。重要視するのがサプライチェーン(供給網)の分散だ。同社は中東からのナフサ(粗製ガソリン)の調達量が多いが「中東以外の代替調達を見つけている」と明かした。
LNGにも注力する。大本社長は「LNGの短期トレードは日本首位の取引量がある。こんな状況だからしっかりと需要を捉えたい」と語る。
中東情勢が平常化する見通しは各社で分かれる。三井物産が1日に発表した28年度までの中期経営計画では26年7〜9月の平常化を前提にした。伊藤忠商事は軍事衝突自体は6月末に収束すると見込むが、「ビジネスへの影響は26年内は続く」(中宏之最高財務責任者)とみる。
石井敬太社長も「長引けば(硫黄などの)トレード品の取引での収益や費用にも影響が出てくる」とする。
仮に米国とイランの軍事衝突が終結したとしても、世界の貿易環境の先行きは不透明さが拭えない。丸紅経済研究所の今村卓社長は「ホルムズ海峡を経由して石油や天然ガス、石化製品の相当数が供給されていた。海峡封鎖が現実となり、世界はもう戦前には戻れない」と話す。
商社がビジネスの前提としていた貿易環境が崩れた。新常態では変革のスピード感が問われる。
(古川慶一、平嶋健人、佐藤優衣)
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