大谷翔平はなぜ9試合連続ノーアーチ? 「バットは振れているも」専門家が指摘した"ズレ"

【MLB】ドジャース 5ー2 パドレス(日本時間12日・サンディエゴ)

 専門家が“ほんのわずかなズレ”を指摘した。ドジャースの大谷翔平投手は11日(日本時間12日)、敵地で行われたパドレス戦で、右中間を破る三塁打を放ち、今季2度目の8試合連続安打をマーク。一方で打球が上がらず、今季最長の9試合連続ノーアーチとなった(成績は11日現在、以下同)。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、引退後もオリックス、ソフトバンク、広島でコーチとして名声を高めた野球評論家・新井宏昌氏が大谷の現状を分析する。

「バット自体は非常によく振れていると思います。ほんのわずかなバットコントロールのズレが、しばらく本塁打が出ていない理由でしょう」。これが大谷についての新井氏の見立てだ。

 たとえば、11日(同12日)のパドレス戦。3回1死走者なしで第2打席を迎えた大谷は、相手先発の右腕ランディ・バスケス投手の初球のスライダーを“逆方向”のレフトへはじき返し、フェンス際まで飛ばすも左飛に終わった。「外角から真ん中へ入ってくるスライダーに対し、いい感じでスイングしましたが、ほんの少しバットの芯より上っ面にボールが当たった分、フェンスを越えませんでした」と新井氏は解説する。

 9回1死の第5打席で、相手6番手の左腕ワンディ・ペラルタ投手から放った右中間三塁打も、「真ん中付近の甘いコースに来たスライダーでしたが、今度はバットの芯よりやや先端気味に当たったため、スタンドに届きませんでした」と振り返る。

 安定した成績を残す打者にも、感覚にズレが生じる時期はある。ただ、最近の大谷の打撃には少々気になる傾向があると新井氏は言う。「左投手と対戦する際に、ストライクゾーンの感覚にズレが生じやすいのではないか」と指摘するのだ。

「大谷は右投手に対してはスクエアに構えますが、左投手に対してはボールを見やすくするために、右足を引き少し肩を開いてオープンスタンス気味に構えます。その分、ストライクゾーンが自分の体の方にずれて、内角のボールゾーンのシンカー系の球がストライクに見え、手が出てしまう。逆に遠くに見えて見送った外角のフォーシームやスライダーに球審の手が上がる。あるいは外角球に手を出してもバットが届かない現象が起こっています」と説明する。

パドレス松井裕樹に通算100奪三振目を献上「ストライクゾーンのズレ」

 この日、パドレス2年目の左腕・松井裕樹投手にメジャー通算100奪三振目を献上した7回の第4打席も、その一例だろう。大谷は初球の内角のシンカーを空振り。2球目には逆に、外角へ逃げていくスライダーを空振り。そしてカウント1-2となった後、外角のスライダーに再びバットが空を切り、三振に倒れた。

 左打者が左投手に対した時の、こうしたストライクゾーンのズレは、多くの打者が経験していることだ。新井氏は「私自身も現役時代に何度か対処法として試し、コーチ時代にも選手たちに勧めたことなのですが、こういう時には10センチほどホームベースに近づいて立ってみたらどうか」と提言する。

「これだけでも、内角のシンカー系はより厳しいコースに見えて手を出さなくなり、外角にはバットが届くようになると思います。大谷の現状にマッチした対処法で、もっとホームランが出るようになるのではないでしょうか」と熱を込める。

 大谷は今季23本塁打でナ・リーグトップの座を維持しているが、2位につけるフィリーズのカイル・シュワーバーが11日のカブス戦で右中間席へ21号ソロを放ち、2本差に迫った。大谷もヒットは続いており、決して不調ではないだろうが、美しい放物線を取り戻すのはいつになるだろうか……。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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