ガザ市民、命がけの食料調達 「食べ物を持ち帰るか、布に包まれて帰るか」
Nidal al-Mughrabi Ebrahim Hajjaj Olivia Le Poidevin [ロンドン 20日 ロイター] - ガザに住む大勢のパレスチナ人と同じく、ヒンド・アルナワジャさん(38)は、家族の食料を手に入れるため、毎日何キロにも及ぶ危険な道のりを歩く。生きて帰れることを願いながらだ。 4人の子どもを持つアルナワジャさんは、妹のマズーザさんとともに、道端のがれきの陰に身を隠した。近くで銃声が響いたためだ。 ガザ北部ベイトラヒヤに住むアルナワジャさんは「子どもに食べ物を持ち帰って喜ばれるか、手ぶらで帰って泣かれるか、それとも遺体となって布に包まれて帰るかのどれかだ」と語る。「これが私たちの生活だ。私たちは虐殺されている。もう限界だ」と訴えた。 ガザの医療関係者によると、過去2日間で、国連などの支援トラックから食料を受け取ろうとしたパレスチナ人数十人が、イスラエル軍の発砲で死亡した。 医療関係者によると19日には、イスラエル軍の銃撃と軍事攻撃によって少なくとも51人が死亡した。その中には、ガザ地区中央部にある、米国とイスラエル主導で設立された「ガザ人道財団(GHF)」が運営する施設に近づこうとした12人も含まれる。 イスラエル軍は、ガザ中部ネツァリムで複数の「容疑者」が部隊に危険を及ぼす形で接近したと発表。軍は威嚇射撃を行い、負傷者は把握していないと説明した。 GHFはメールで、ガザ保健当局が不正確な情報を繰り返し発していると非難。パレスチナ人が「ネツァリム回廊」を通じて施設にアクセスしていないと主張したが、今回の事件の認識については答えなかった。 一方、医療関係者によると、ガザ北部ではイスラエル軍の空爆で39人が死亡した。シャティ難民キャンプのテントでは、女性や子どもを含む少なくとも19人が犠牲となった。さらに北部ジャバリアでも少なくとも14人が死亡し、住宅も被害を受けた。イスラエル軍はこれらの攻撃についてコメントしていない。 イスラエル軍は最近、軍の活動地域に近づく人々に対し発砲や警告射撃を行ったと発表。民間人の死傷者について調査中とした。 <道路脇で寝泊まり> イスラエルは現在、多くの支援物資をGHF経由でガザに搬入している。GHFはイスラエル軍が警備する地域で配給所を運営する。 ガザ保健省によると、5月下旬以降、GHFの拠点にたどり着こうとして殺害されたパレスチナ人は数百人にのぼるという。 国連はGHFの配給体制について、不十分かつ危険で人道的中立性に反すると批判している。イスラエルは、イスラム組織ハマスによる支援物資の横流し防止のために必要だと主張するが、ハマスはこれを否定している。 GHFは17日、3カ所の配給拠点で300万食を問題なく配布したと発表した。 ガザ戦争は2023年10月7日、ハマスがイスラエルを攻撃し、イスラエル側の発表によると1200人が殺害され、251人が人質となったことに端を発する。 その後、イスラエルの軍事攻撃で、ガザ保健省によれば5万5600人近くのパレスチナ人が死亡した。200万人超の住民のほぼ全員が家を追われ、飢餓も深刻化している。 人道支援団体「ノルウェー難民評議会(NRC)」は19日、100万人超が適切な避難所を持たず、3月1日以降テントや防水シートの搬入がイスラエルに阻止されていると警告した。 アルナワジャさんは18日、食料探しから手ぶらで戻り、ガザ市のテントの外のほこりっぽい地面に倒れ込んだ。ここで家族と避難生活を続けている。 彼女と妹は20日間、道路脇で寝泊まりしている。援助物資を積んだトラックが到着する配給所に必死に入ろうとするが、男性に押し負けることが多い。配給所では、男性同士が小麦粉の袋を奪い合う場面もある。 「食べ物がなければ子どもたちは泣き出し、怒り出す」とアルナワジャさんは語る。「3キロ、4キロ、時にはそれ以上歩くため、足は傷だらけ、靴もぼろぼろだ」