「寒々しい…」住民から不満続出 街路樹の“やりすぎ剪定” 行政はなぜ短く切りすぎるのか 「景観と涼しさを失う」

 清々しく芽吹いた新緑が映える初夏。イチョウやプラタナス、ケヤキといった街路樹も私たちの目を楽しませてくれる……はずなのだが、近年は枝や幹をなぜか短く大胆に剪定される樹木が増え、住民から「見た目が寒々しく不自然」「緑が減って寂しい」など不満の声も出ている。「強剪定」といわれるこの手法、本当に必要なのか。樹木研究の第一人者に話を聞くと、倒木や夏の酷暑への影響など、意外な課題が見えてきた。 【写真】仙台市のイチョウの街路樹。理想的な樹形を保っている *  *  *  「見ていて痛々しく、いたたまれない気持ちになるんです。何の理由があってここまで幹や枝を短く切ってしまうのでしょうか」  怒りを込めた口調でこう話すのは、東京都内に住む60代の女性。自宅近くには遠方から訪れる人がいるほどの長いケヤキ並木があり、新緑の季節をいつも楽しみにしていた。しかし近年は落葉期のたびに大胆に剪定され、枝の広がりが小さくなり、すっかり見応えがなくなってしまったのだという。 「ケヤキだけじゃないです。プラタナスもイチョウも枝を大きく切り落としてしまい、『まるで電柱が立っているみたい』と近所の人も呆れ、憤慨していますよ」  枝や幹を大胆に落とし、樹形を小さく抑える。「強剪定」といわれる手法だ。一般的な剪定が枝先を整える程度であるのに対し、大量の幹や枝を一度に切り詰め、元々の樹木の骨格に大きく手を加えるものだ。  そもそもこの「強剪定」、行うことにどんな意味があるのだろうか。 ■「論外です」 「意味のある『適正な強剪定』というものは、まず存在しません。やってはいけないことなんです」  こう話すのは、樹木研究の第一人者で日本庭園学会会長も務めた藤井英二郎・千葉大学名誉教授。街路樹の一般的な剪定が必要だとされるケースについて、こう説明する。 「まず、車道側から見て4.5メートル以下、歩道側から見て2.5メートル以下にある枝葉は通行の妨げにならないように切る。これは道路法に基づく政令『道路構造令』で基準とされています。他にも、交通信号を見る妨げになっている枝や、道路敷から民地へ越境している枝、あとは電線や通信ケーブルなど道路管理者への申請で設置が許可されている『占用物件』と接触しそうな枝も、剪定の対象とされている。ただ、その他の枝葉は基本的に『剪定しなくていい』はずのもの。ましてや強剪定など論外です」  なぜ論外か。冒頭の女性が憤慨する「良い景観が失われる」以外にも理由があると、藤井さんは言う。 「一つは樹木へのダメージです。強剪定で大幅に枝葉が失われると、樹勢が弱り樹木を腐らせていく『腐朽菌』が入り込みやすくなり、大きな枝や幹が折れたり、さらには樹木を支える太い根をも枯らしてしまったりで、倒木につながるおそれもあります」

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