セDH制2027年決定 阪神に有利か不利か 藪恵壹氏が徹底解説

6月15日の楽天戦ではDHに森下が入った

プロ野球セ・リーグ6球団による理事会が4日、東京都内で行われ、2027年シーズンから指名打者(DH)制の導入を決めた。阪神で1994年に新人王に輝くなど日米通算91勝をマークした藪恵壹氏(56)=サンケイスポーツ専属評論家=が、セのDH制について徹底解説。投手が不利になる!? 阪神にとっては追い風!? 最も恩恵を受けるチームはどこ!? 阪神から米大リーグ、ア・リーグのアスレチックス、ナ・リーグのジャイアンツ、楽天と日米4リーグを渡り歩いた経験を踏まえ、2年後のセ界を展望した。

以前は、各リーグの特長がなくなるので、セ・リーグのDH制導入には反対の立場だった。だが、2022年に米大リーグのナ・リーグがDH制を導入した。時代の流れは止められない。ドジャース・大谷翔平はDH兼投手として、二刀流で活躍している。これを機に、日本でもそういう選手が出てくるかもしれない、という楽しみはある。

藪恵壹氏は2年後に向け、攻撃特化型の外国人野手を発掘の重要性を説いた

投手目線では、9人目の野手の存在はこれまでよりも厄介になる。ただ、それ以上に投球により集中できる利点がある。セ・リーグの投手は勝つために準備として、打席で犠打を決めるために練習したり、簡単なものとはいえ攻撃のサインを覚えたり、出塁すれば走ったりということを求められた。DH制なら、そういう煩わしさがなくなり、守備部隊としてマウンドで投げることだけを考えられる。

また、以前の阪神には、能見篤史や秋山拓巳ら打撃が得意な投手がいたが、今のチームでは西純矢くらいしか見当たらない。その分、先発ならシーズン25、6試合ではなく、登板間隔を詰めて30試合以上投げないと稼げなくなるだろう。

阪神にとってはどうか。メンバーを見渡しても、攻撃特化型で本塁打を打てる選手がいない。守備に課題がある前川右京をより生かせるという見方があるが、22歳とまだ若い選手がDHに特化するのはいかがなものか。動けるうちは守備にも就く方がいいと思う。

その上で、大事になるのはDH専門の助っ人砲だ。これまでセ球団が新たな外国人選手を獲得する際には、一塁や外野を守れることが条件の一つだった。だが、守備面を考えずに打てる野手を狙える。駐米スカウトを含めた編成担当の腕の見せどころだ。

現状で、DH制が特定の球団に有利に働くことはないとみている。そこは横一線だ。いかに調査して、DH制にマッチする選手を探し出せるかどうか。米大リーグでは活躍できず、マイナーリーグでくすぶっている選手はいる。簡単なことではない。だが、米国でプレーしていた時代、何とか日本でひと花咲かせようとする選手は数多くいた。いかにそういう選手を発掘できるか。それをできた球団が、DH制を導入した2年後のセ・リーグで優位に立つことができる。(サンケイスポーツ専属評論家)

◆DH制導入について阪神・嶌村球団本部長「6球団、同じ思いで野球界発展のために団結してやっていこう、新たなセ・リーグという形でわれわれが協力してファンの皆さまに新しい野球を見せていきたい、という気持ちです」

■指名打者(DH)制 攻撃時に投手に代わって打撃専門の打者を使える制度。試合前に指名しなかった場合は試合途中で使えない。「DH」はDESIGNATED HITTERの頭文字。米大リーグのア・リーグで1973年に始まり、2年後に日本のパ・リーグが導入。メジャーでは2022年にナ・リーグでも採用され、国際大会などでも多く実施されている。米国に続き、日本では23年に先発投手が降板後もDHとして出場できる通称「大谷ルール」の運用が始まった。

国内アマチュア野球では来年に大学野球の東京六大学連盟と関西学生連盟、高校野球でも選抜からの導入が決まっている。

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