スペイン、大規模停電の原因はサイバー攻撃ではないと……では何が影響したのか
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ジョージア・ラナード気候変動・科学担当記者、ハフサ・ハリル記者
スペインの電力網運営会社は29日、スペインとポルトガル、フランスの一部地域で混乱を引き起こした28日の大規模な停電の原因について、サイバー攻撃を否定した。
レッド・エレクトリカのエドゥアルド・プリエト運営部長は、予備調査の結果、「制御システムに何らかの干渉があったことを示すものはない」と述べた。
ポルトガルのルイス・モンテネグロ首相も、前日にサイバー攻撃の可能性を否定している。
レッド・エレクトリカは29日、「具体的なデータが得られるまで結論を出すことはできない」と述べた。スペインのペドロ・サンチェス首相は、調査官が原因の特定を進めているとし、その後、「このような事態が再び発生しないようにするために必要な措置を講じる」と述べた。
停電発生時の状況に関する情報が徐々に明らかになり、原因についてさまざまな仮説が浮上している。専門家はBBCに対し、複数の故障が原因である可能性が高いと述べている。
現在判明していることと、未解明の疑問点をまとめた。
スペインのサンチェス首相は28日、電力需要の60%に当たる15ギガワットが「突然システムから失われた。(中略)わずか5秒の間に」と説明した。
レッド・エレクトリカのプリエト氏は29日の記者会見の中で、大規模な太陽光発電がおこなわれているスペイン南西部で2件の「接続の切断」がほぼ同時に起きたと述べた。
同社が問題の一つとなった可能性があるものとして挙げたのは、電力会社が供給と需要の不一致を特定し、それが不安定を引き起こす可能性がある場合、システムを保護するために一時的に切断する措置だ。
しかし、サンチェス首相は後に、停電は「再生可能エネルギーの過剰が原因ではない」と述べた。供給に問題はなく、停電前の数日間の電力需要は、通常通りの、比較的低い状態だったという。
では、実際に何が起こったのだろうか? それは不明だ。実際、再生可能エネルギーだけでなく、多くのシステムが頻繁に故障しており、この規模の停電は世界のどこかで平均して年に1度は発生している。
電力の需要と供給の不一致は、電力網の周波数を変化させる可能性がある。
ヨーロッパやイギリスでは50ヘルツと規定されているが、この周波数が狭い許容範囲から外れると、機器が損傷する可能性がある。
英オックスフォード大学のハンナ・クリステンセン教授は、「大企業は、周波数が許容範囲を外れたのを検出すると、機器を保護するためにオフラインにすることがある」と述べた。
多くの企業が短期間にそれを行えば、「連鎖的な影響」を引き起こし、停電につながる可能性があるという。
しかし、再生可能エネルギーに関しては、電力事業者は風力発電や太陽光発電の余剰が発生する時期を予測するために非常に正確な短期天気予報を得ており、それに応じて電力供給を調整していると、クリステンセン教授は述べた。
また、再生可能エネルギーは「断続的であるため」、化石燃料エネルギーとは異なる課題があるという。しかし、これはよく知られた問題であり、計画に組み込まれていると、クリステンセン教授は述べた。
「なので、それが予測されなかったのは少し不可解だ」
英ストラスクライド大学のキース・ベル教授は、「システムが太陽光や風力に依存している場合、システムはそれに合わせて設計される」と指摘。再生可能エネルギーからの追加供給は、電力網にとって突然の出来事ではなかったと示唆した。
「スペインは風力と太陽光の経験が豊富で、天気予報とその影響を予測する長年のシステムを持っている」
一方で、「すべてのシステムは故障する」とベル教授は付け加えた。「再生可能エネルギー、化石燃料、原子力のいずれであっても、うまくいかないことがある。これはスイスチーズモデルかもしれない。複数のシステムの穴が、偶然に一致するというものだ」
レッド・エレクトリカは、電力の低下がスペインとフランス間の電力網接続を切った可能性があると示唆した。
電力網や国と国を接続するために使われる基本技術は、交流の標準送電線と、近年増加している高電圧直流送電線の2種類がある。
スペインには7年前に運用開始された高電圧送電線があるが、これは十分に検査されているとベル教授は述べた。
イベリア半島は、ピレネー山脈を通じてフランスと接続する数少ない接続に依存しており、故障に対して脆弱(ぜいじゃく)だ。そのため、「電力の島」と呼ばれることも多い。
サンチェス首相は、フランスやモロッコとの接続、およびガスと水力発電源のおかげで電力が復旧したと述べた。
ポルトガルの送電会社RENは、28日に同社が発表したとされる、停電の原因がめずらしい気象現象であるという初期報告を否定した。
ポルトガル語で書かれたこの報告書には、「スペイン内陸部の極端な気温変化により、非常に高い電圧線(400kV)に異常な振動が発生した。これは『誘発性大気振動』として知られる現象だ」と記載されていた。
報告書では、「これらの振動が電力システム間の同期に障害を引き起こし、ヨーロッパの相互接続された電力網全体に連続的な障害をもたらした」とされている。
しかし、RENの広報を務めるブルーノ・シルバ氏は29日、AFP通信に対し、同社は「この声明を発表していない」と述べた。詳細は明らかにしなかった。