125 mL以下の広汎脳梗塞へのグリベンクラミド静注が後遺症を軽減させ得る

国立循環器病研究センターの豊田一則副院長が国際顧問と国内代表者を務める国際無作為化比較試験The Glibenclamide for Large Hemispheric Infarction Analyzing mRs and Mortality （CHARM）では、糖尿病治療薬グリベンクラミド（グリブリド）の静注投与による早期虚血サイズの大きな脳梗塞（以下、広汎脳梗塞）での治療効果を脳梗塞のサイズ毎に検討し、125 mL以下のサイズであれば効果が期待できることが、英文医学誌「Annals of Neurology」オンライン版に、令和7年6月6日に公表しました。

研究の概要

グリベンクラミドが脳梗塞の浮腫抑制作用を持つことを根拠にCHARM試験が世界21か国で行われましたが、その主解析では広汎脳梗塞患者全体でグリベンクラミドは有意な治療効果を示せませんでした（主解析結果：国循プレスリリースhttps://www.ncvc.go.jp/pr/release/pr_45428/）。今回のサブ解析で、早期虚血サイズ125mL以下の147例においては、グリベンクラミド群が偽薬群と比べて90日後の機能的転帰が有意に良好で（調整オッズ比2.11, 95%信頼区間1.10～4.01：　図1）、このうち急性期血管内治療を受けた34例に限れば転帰改善効果がより目立ちました（調整オッズ比8.19, 95%信頼区間1.60～42.0）。今回の125mLという値は、国循の研究者が急性期血管内治療の効果を予測するカットオフ値として提唱したものであり（国循プレスリリースhttps://www.ncvc.go.jp/pr/release/pr_42933/）、急性期血管内治療の効果が高い患者にグリベンクラミドを併用することで、さらに後遺症を軽減することが期待できます。

発表論文情報

著者：W. Taylor Kimberly, Jeffrey L. Saver, Bruce C.V. Campbell, Gregory W. Albers, Bradley J. Molyneaux, H.E. Hinson, Marcelo Rocha, Shilpi Mittal, Stephen Bacchi, Gagan Sharma, Charlotte Cordonnier, Thorsten Steiner, Kazunori Toyoda, Max Wintermark, Raul G. Nogueira, Sven Jacobson, J. Marc Simard, Kevin N. Sheth

題名：Intravenous Glyburide in Medical and Endovascular-Treated Large-Core Stroke: A Subgroup Analysis of the CHARM Randomized Clinical Trial

DOI：doi.org/10.1002/ana.27268

図1：早期虚血サイズ125mL以下の147例における90日後の機能転帰

最終更新日：2025年06月16日