ロシア人が指摘する不利な状況の原因、不十分な対策、美しい報告書、敵の過小評価

ロシア軍は2026年に入って戦場での勢いが大幅に低下し、ロシア国防省はウクライナの長距離攻撃についても「6月にロシア領上空で空中目標を約13,000機撃墜した」と発表、ロシア人ミルブロガーは現在の状況をもたらした原因について「不十分な対策」「美しい報告書」「敵の過小評価」を挙げた。

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ウクライナにおけるロシア軍の前進は昨年と比べて低下し続けており、ウクライナ人が運営するDeepStateは6月1日「ロシア軍は5月に完全な失敗を喫した。これは敵が戦線の大部分で戦略的攻勢作戦を開始した2023年10月以降、占領地域の面積増加率が最少だったことを意味する」「敵が5月中に占領したウクライナ領土は僅か14平方キロメートルだった」「ウクライナ軍の前進状況については作戦上の安全を確保するため意図的に遅らせてマップに反映していることを理解してほしい」「そのため具体的な数字は出せないが、ロシア軍の占領地域の純増面積は2023年10月以降に初めてマイナスに転じた月になったと断言できる」と報告。

“戦争は新たな段階に入りつつあり、ウクライナにとって主導権を失わないことが重要である。幸いなことに人事面で良好な変化が見られる。新任のフェドロウ国防相、東部作戦管区のヴィクトル・ニコリュク新司令官をはじめとする非常に多くの有能な軍団長や旅団長が要職に就き、問題のある者たちは「栄転」という形で現場から外された。この傾向が今後も続くことを望む”

“興味深い事実として敵の攻撃回数が37.5%増加している点が挙げられ、5月の攻撃回数は7,000回以上という記録的な数字だ。しかし、ロシア軍は戦術レベルでの劣化が続いているため大きな成果は得られていない。我々の元にはロシア軍の攻撃を映した動画が頻繁に提供されるものの、良くても2人1組、大半の攻撃は単独で仕掛けてくるため、敵は目的地に到達する前にウクライナ軍のあらゆる攻撃が降り注ぐ。敵は現在も浸透戦術を多用しているが、これに対するウクライナ軍の適応も進んでいるため、敵は旗を立てて占領を誇示したり、兵力を集積させたりすることはますます困難になっている”

DeepStateは7月1日「ロシア軍が6月に獲得した占領地域の面積は84平方キロメートルだった」「ウクライナ軍が同時期に奪還した土地の広さに関してまだ公表できない状況(作戦上の機密)だが、先月に奪還した土地の面積を加味すれば敵の純増面積は2ヶ月連続でマイナスになる計算だ」「ただし、その差は僅かである」と報告。

“興味深い事実として敵の攻撃回数が再び増加した。今回は4.4%増となったが以前にも説明した通り、これは攻撃は質に関連している。敵は単独で攻撃を仕掛けるケースが極めて頻繁に見られ、何が彼らをこのような自殺行為に駆り立てているのかは謎のままである。7月にはウクライナ軍がある方面で成功を報告するだろうと期待されているため、その話についてはもう暫く待つ必要がある”

ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは同等のデータを提供していないためDeepStateの報告と比較するのは不可能だが、視覚的証拠の位置情報をまとめているロシア人マッパー=Сливочный капризが報告する占領地域の純増面積も昨年と比べて大幅に減少している状況=DeepStateと同じ傾向を示している。

観測者によってロシア軍が占領したウクライナ領土の面積や純増面積の数字は異なるものの、これらに共通するのは「ロシア軍の勢いが昨年と比べて大幅に減少している」という傾向で、さらに長距離攻撃能力の格差がほぼ解消されたことも加味し、ウクライナメディア、海外メディア、アナリストらは「ロシアが昨年と比べて戦場を含む戦争全体で勢いを失っている」と指摘するのだ。

ちなみにロシアメディアのКоммерсантъ=コメルサントは6月25日「ロシア国防省は防空システムの運用状況に関する日報を公表している。2026年初頭以降、ロシア国内51地域で3万9,000機以上のウクライナ製無人機が迎撃もしくは破壊されており、これは月平均6,000機に相当する。6月も9,700機のドローンが撃墜された」と報じ、管理人が6月26日~30日の数字をロシア国防省発表から手集計すると2,299機になったため、ウクライナが6月に発射した自爆型無人機の数を「推定11,999機」としたが、ロシア国防省は4日「ロシア軍は6月にロシア各地域の上空で空中目標を約13,000機撃墜した」と発表している。

ロシア国防省は「ウクライナ製の固定翼無人機」ではなく「空中目標」と表現しているため、自爆型無人機だけでなくFP-5、対地攻撃用のネプチューン、ストームシャドウ、HAMMER、HIMARSのロケット弾などを含む総数だと思われるが、この攻撃の影響を色濃く反映しているのがロシア国内のガソリン不足だ。

プーチン大統領も「国内のガソリン供給は大丈夫だ」と強調した上で「ガソリンスタンドには行列ができており、必要なグレードのガソリンが常に手に入るとは限らない」「現在のクリミアには数日分のガソリン備蓄しかない」「陸路と海路の両方で供給を増やすことでこの課題は解決されると信じている」と公の場で発言していたが、ロシア国内のガソリン不足はますます状況が悪くなっており、ロシア人ミルブロガーのTwo Majorsは以下のように報告している。

“ウクライナ軍の目的は明白だ。ロシア全土を巻き込んだ燃料危機を背景にクリミア半島への兵站を極限まで困難にすることだ。公式には一般市民へのガソリン販売は停止されているが、非公式には長蛇の列ができるごく一部のガソリンスタンドにおいて1リットル200ルーブル以上の高値で燃料を買うことができ、それすらも瞬く間に売り切れる状況にある。事態の収拾に向けて地方および連邦当局は対策を講じているものの、陸上と海上の兵站ルートが攻撃に晒され、ウクライナ軍が石油貯蔵施設だけでなく個別のガソリンスタンドまで攻撃しているからだ”

“さらに発電所や変電所に対する無人機攻撃で、クリミア半島の電力供給に深刻な支障が生じて計画停電が導入され、猛暑の中で小売業者や生鮮食品の生産者が打撃を受けている。これは住民へのストレスになっており、敵は情報心理作戦を展開し、フェイクニュースを通じて電化製品の電源を入れるよう扇動しているが、当然ながらこれは許容されるものではない。ロシア軍は近代的な迎撃手段(特にパンツィリ用の迎撃ミサイル)が不足しているため兵站に対する保護が低下しかねない”

“現在の状況をもたらした原因には「講じられた対策の不十分さ」「軍部隊や部隊編成からモスクワへの体裁の良い報告書」「2022年と同じ敵の過小評価」が挙げられる。2022年の特別軍事作戦計画を立案した連邦省庁の幹部陣営が変わらないため、現在のクリミアは他の全地域と同様に「敵の攻撃撃退に向けた準備態勢のスライドと報告書」で評価するシステム=実態を伴わないプレゼン至上主義のツケを払わされている”

出典:Президента России

“治安・軍事機関の現場責任者には責任感がなく、さらに組織体制の硬直化が現在の状況を招いたのだ。このようにマイナス要因が幾つも発生しているにもかかわらず、クリミア半島の防衛に責任を負う連邦省庁の関係者は誰一人として交代していない。どれだけ「被害はなく全ては順調だという政府の虚偽報告」や「現実から目を背けさせるような愛国ニュース」をいくら流してみても、ガソリンスタンドに燃料がないという厳しい現実の前では何も通用しない”

ロシアは例年なら夏季攻勢を開始する頃だが「契約軍人の供給」にも陰りが報告されており、今年も例年通りに戦場での前進が可能なのかどうか注目される。

According to our data, in May the net gains of the Russian armed forces were approximately 82km².

Despite their advance in Kostyantinivka, the Russian forces are struggling to regain offensive momentum amidst instensifying Ukrainian mid-range strikes and local counterattacks. 1/ pic.twitter.com/4MbkhGVW7u

— Black Bird Group (@Black_BirdGroup) June 4, 2026

追記:フィンランドのBlack Bird Groupも6月「我々のデータによると5月のロシア軍の純増面積は約82平方キロメートルだった。コンスタンチノフカでの前進にもかかわらず、ロシア軍はウクライナ軍の中距離攻撃と局地的な反撃の激化の中で攻勢の勢いを取り戻すのに苦戦している」「ウクライナ軍の中距離攻撃はロシア軍の補給と兵站を制限している可能性が高く、ロシア軍はロシアは兵員補充の目標を下回り続けており、前線部隊を消耗させている」と報告していたが、7月5日「我々のデータによると6月のウクライナにおけるロシア軍の純増面積は約マイナス9平方キロメートルだった」と報告。

“ロシア軍にとって純増面積がマイナスとなるのは2026年に入って2回目だ。これ以前にマイナスを記録したのは2023年のことだった。ロシア軍の占領面積を失ったのはドネツク州リマン、スムイ州アンドリーイウカ〜クレウツォベ周辺、さらにザポリージャ州フリアイポレ北方におけるウクライナ軍の反撃によるものである。前線全域におけるグレーゾーンの拡大もロシア軍の占領面積の喪失に寄与しており、ウクライナ軍は浸透戦術の運用を拡大している”

According to our data, in June the net gains of the Russian armed forces in Ukraine were approximately minus 9km².

This is the second net-negative month for the Russians in 2026. Before this, the previous net-negative months (within Ukraine) were in 2023.

1/ pic.twitter.com/BdPUXVOp9T

— Black Bird Group (@Black_BirdGroup) July 5, 2026

“ロシアの能力が限定的なのでこれ以上の戦果を挙げるの難しく、ウクライナ軍の長距離攻撃作戦によってロシア経済が苦境に立たされる中、ロシア指導部が戦争のエスカレーションを試みる可能性がある。しかし、ロシアにとってエスカレーションの選択肢はますます限られてきている。ロシアは再び国民を動員して現在の兵員補充問題を補うことも可能だが、それには多大な政治的代償を伴うことになる。現時点では可能性が低いものの核兵器使用という選択肢も残されている。戦場での成果不足と戦争による経済的コストの増大がロシアを交渉テーブルに着かせる可能性もある”

Black Bird Groupが示す数字もウクライナ人が運営するDeepState、ロシア人マッパー=Сливочный капризが報告する傾向と一致しており、ロシアが昨年と比べて戦場を含む戦争全体で勢いを失っているのは明白と言ってもいいだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

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