大谷翔平の「ピークはまだこれから」 5年先も"健在"の期待…専門家が太鼓判の理由

【MLB】ドジャース 6ー1 マリナーズ(日本時間29日・シアトル)

 ドジャース・大谷翔平投手は28日(日本時間29日)、今季最終戦のマリナーズ戦に「1番・指名打者」で出場し、55号ソロを含む5打数3安打1打点。本塁打王争いではフィリーズのカイル・シュワーバー外野手にわずか1本差で敗れたが、自己最多の55本塁打に到達し、102打点、打率.282でレギュラーシーズンを終えた。驚異的な数字を残し続ける希代のスラッガーに、専門家が来季以降期待するものとは──。

「今季の大谷からは、より長打を増やしたいという意図を感じました。あえて言えば、ここぞという場面で力が入れなければならなかったことが、打点と打率が昨季(130打点、打率.310)よりダウンした要因かなと思います。もったいない気もしました」。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも詳しい野球評論家・新井宏昌氏はこう評するが、大谷のことだから来季には修正を施してきそうでもある。

 そんな大谷に、新井氏は「来季はぜひ3冠王を狙ってほしい。かつて落合(博満氏=元中日監督、現役時代にNPBで3冠王3回)がシーズン開幕前に『3つ獲る』と宣言した上で実際に3冠王に輝いたように、まず“宣言”してはどうでしょうか。大谷とヤンキースのアーロン・ジャッジ(外野手)の2人には十分、口にする資格があると思います」と期待する。

 確かに、今季ナ・リーグ首位打者となったフィリーズのトレイ・ターナー内野手の打率も.304で射程圏内。3割打者はリーグで唯一人という状況だ。ア・リーグでは、ジャッジが本塁打王こそ60発量産のマリナーズのカル・ローリー捕手に譲ったものの、大谷に続いて史上7人目の2年連続50本塁打(53本)を達成。さらに打率.331で首位打者に輝き、114打点もローリーに次ぐ2位だった。大谷とともに現在MLBの打者で双璧と言える。

 一方、落合氏はNPBでロッテ時代の1982年、1985年、1986年に3冠王を獲得。1歳上の新井氏(当時南海=現ソフトバンク)も1982年には落合氏と首位打者を争い、打率.315をマークしながら1分差で2位に終わった。

35歳で自己最高成績残した新井氏「ストイックな大谷も心配ない」

「当時の落合は非常にクレバーな打者で、相手投手を研究し尽くし、駆け引きもうまかった。セ・パ交流戦の無い時代で、対戦相手がパ・リーグの他5球団に限られていたからこそできた部分もあったと思います」と新井氏。それに比べると「シーズン中に29球団と対戦しなければならない大谷は大変だと思います」と見ている。

 また、大谷は現在31歳だが、新井氏は「打撃は毎年進化していて、ピークはまだこれから。あと4~5年は本塁打王争いができるでしょう」と見ている。実は新井氏自身、自己最高の打率.366、184安打13本塁打67打点をマークし、念願の首位打者のタイトルを獲得したのは、35歳シーズンの1989年(当時は近鉄に所属)だった。

「お酒が好きだったりして、30代前半に衰えがくる選手もいます。特に脚や腰を痛めると、衰えは加速します。しかし、ストイックな大谷にはそういう心配はいらないでしょう」と新井氏は太鼓判を押す。

“3冠獲得宣言”は謙虚な大谷からは想像しにくいが、実際のところ、個人成績で未踏の領域はそれくらいしか残されていないかもしれない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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