〈いよいよ最終週・NHK朝ドラ「あんぱん」〉春風亭一之輔、朝ドラ「あんぱん」を観ながらブツブツ 「ホントにアンパンマンを描くような人になるのかね」

落語家・春風亭一之輔 この記事の写真をすべて見る

 NHKの朝の連続テレビ小説「あんぱん」は22日、いよいよ最終週に突入しました。クライマックスにむけて盛り上がる物語。「あんぱん」にまつわる記事を総集編として再びお届けします。今回は、落語家春風亭一之輔さんのコラムです(※この記事は、4月27日に配信した内容の再掲載です。情報は当時のままです)。

落語家・春風亭一之輔さんが連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今回のお題は「得意科目」。

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 今春からNHKの朝ドラ「あんぱん」が始まった。

 常々、朝ドラについて高座のマクラやラジオで喋ったり原稿にも書いたりしてるので、周りの人からは私が熱心な朝ドラファンと思われているみたいだ。

 熱心というほどでもない。だって前作「おむすび」は2カ月で挫折してしまったのだもの。決して「おむすび」が悪いんじゃない。私の器が小さくて、堪え性がなかったから。今思えばちゃんと観ておけばよかった。結(橋本環奈さん)は立派な管理栄養士になれたのだろうか? 社会人野球の彼はどうなった? 意固地な靴屋の親父(緒形直人さん)の心はほぐれたのか? いまさら気になっている。気になるなら録り溜めたHDDを観りゃいいんだけど、時間には限りがある。NHKの「映像の世紀 バタフライエフェクト」も観なきゃならない。「東ドイツ 監視国家 41年の闇」回もようやく観たところだし、すまん「おむすび」、興味の対象として東ドイツには勝てん。

 とりあえず「あんぱん」は今のところ初回からちゃんと観ている。

「目、乾いてしょうがないだろうなー」

 先日の独演会も、楽屋で主催者が「やっぱり今日もマクラで『あんぱん』の話するんですか?」とか、お囃子のお姉さんが「今日の出囃子は『アンパンマンのマーチ』にしますか?」とか聞いてきたりして、とにかく私に「あんぱん」を振ってくる。そりゃ「アンパンマンのマーチ」が出囃子だったら「あんぱん」の話しなきゃおかしくなっちゃうでしょう。だからしますよ、「あんぱん」の話。

 基本、「あんぱん」観ながらなんかブツブツ言っている。

 ヒロイン・朝田のぶを演じる今田美桜さんはなんて目が大きいのだろう。「目、乾いてしょうがないだろうなー」とか「ガガンボ(デカい蚊みたいなヤツ)くらい平気で吸い込まれていきそうだなー」とか「ガチャピン、ミニラ(ゴジラの息子)並みの眼球だなー」なんてブツブツ言いながら観ている。


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 オープニングは録画でも早送りせずにちゃんと観る。毎回主題歌を聴きながら「早口言葉みてえな曲で聴き取れねえなー」なんてブツブツ。

 嵩(北村匠海さん)を捨てて出て行ったはずの母、登美子(松嶋菜々子さん)が8年ぶりに前触れもなく帰ってきて、義兄の家の中で我が物顔で振る舞う様子を観て「ひでーなー、この女!」なんてブツブツ。

 「登美子、背ぇ高過ぎて、柳井医院の天井がメチャクチャ低く見えるなー。この時代としては規格外だなー」なんてブツブツ。

 「でもなんだかんだ、やっぱり松嶋菜々子は綺麗だなー」なんてブツブツ。

「あさイチ」も楽しい。

「登美子はホントにヒドくて、デカくて、キレイだなー。昭和初頭にこんな女が東京からやってきて派手な着物で街を闊歩してたら、高知の町は大騒動だろうな。怪物だよ。登美子はモンスターだなー」なんてブツブツ言いながら観ていると、「おまん、ちぃと黙っちょれ!」と家族から嗜められた。

 まあとにかくブツブツ言いながら観る朝ドラは楽しい。その流れで8時40分くらいまでそのまま観てしまう「あさイチ」も楽しい。

 で、今回のお題はなんだっけ? そうそう「得意科目」でした。

 今日4月24日放送の「あんぱん」のなかで、のぶちゃんが女子師範学校の入試を受けていた。のぶちゃんの得意科目は体育、苦手科目はお裁縫だ。音楽は得意というほどではなさそうだが、歌唱テストでは楽しそうに歌っていてよかった。

 「でもまあ、よくある元気少女の典型的なかんじだなー。体育が得意で裁縫苦手なヒロインかき集めたらえらい数になりそうだ。ちょっとした一個師団できちゃうなー」とブツブツ。

 のぶちゃんと同日に自分の入試を控えた嵩は当日の朝、家に受験票を忘れてしまう。

 「もうそろそろ受験票を忘れてピンチに陥るキャラ、なんとかできないものか? 人生かかってるんだからちゃんと家を出るときに確認しろよ!」とまたブツブツ。

 その受験票を韋駄天のぶちゃんが自慢の健脚で嵩の元へ届けてやる。

 「おいおい、自分の受験もあるんだぞ!! 大丈夫かよ!?」とまたまたブツブツ。


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 受験票が嵩の手に渡り、のぶちゃんも校門が閉まるギリギリのところで間に合うのだが、門を閉める女性教師(瀧内公美さん)と目が合う。

 「のぶちゃん、けっきょく間に合うんかい!! あー、でも受かったらあの先生となんかいろいろ揉めそうだなー」とまたもやブツブツ。

 のぶちゃんは出来がイマイチでしょんぼり帰宅。嵩は出来に満足そうで、晩御飯に「前祝い」と称してタイの尾頭つきやら赤飯やら出てくる。母の登美子は、もうすでに受かったつもりではしゃいでいる。

かなり前のめりで観ています

 「おい! もう! こんな分かりやすいフラグおったててんじゃねーよっ!」とやっぱりブツブツ。

 もっと週末まで引っ張るかと思いきや、なんとその日の内に合格発表があり、やっぱりのぶちゃん合格。嵩は不合格。

 「案の定っっっ!!」とシャウト。

 すいません。またブツブツ言ってしまいました。おまけにシャウトまでしてしまいました。

 やいのやいの言いながら、かなり前のめりで観ています。「ブギウギ」や「虎に翼」はセリフの一言一句聞き逃すまいと黙って凝視してたから、その点、前のめりでありつつ気楽に観られるのがいいね。

 「嵩はこの後、ホントにアンパンマンを描くような人になるのかねー。なんだか心配だなー」なんてブツブツ言いながら観てたら、周りから家族が離れていきました。

 あんまり「あんぱん」のことを考えていたから、ヤキモチ妬かれたのでしょうか。私の夢に「おむすび」の結ちゃんが出てきて、往来でおむすび売ってました。「ヒトのショバ荒らしてんじゃないよ!!」と飛びかかるのぶちゃん。おむすびマンとアンパンマンが胸ぐら掴み合ってるので、仕方ないから仲裁に入る私。「とにかく炭水化物同士、仲良くしなさいよ!」と諭したら、おむすびマンが「こっちはちゃんと栄養バランス考えてるんだからね!」と怒り出す。あたふたしてたら、街角に監視カメラがあって二人ともどこかへ連れていかれちゃった。

 「おむすび」への罪悪感があるなか、「あんぱん」と「バタフライエフェクト」を交互に観ると頭の中がゴチャゴチャになってこんな夢を見ます。お気をつけて。

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