「違法な命令は拒否」を呼びかけた米野党議員へのトランプ政権の処分、裁判所が阻止
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元米海軍大佐のマーク・ケリー上院議員(民主党、アリゾナ州)をはじめ計6人の民主党議員が昨年11月、上官による違法な命令は拒否するよう米兵に呼びかける動画を公開したことを受け、ピート・ヘグセス国防長官がケリー議員の階級を引き下げると決定した問題で、首都ワシントンの連邦地裁は12日、国防長官の命令を一時的に差し止めた。これに先立ちワシントンの大陪審は10日、動画を発表した民主党議員6人を反逆共謀罪で起訴しようとする動きを退けていた。
元宇宙飛行士でもあるケリー議員について、退役海軍大佐の階級から降格させるとヘグセス国防長官が命令した問題について、首都ワシントンの連邦地裁のリチャード・レオン判事は、ヘグセス長官の行為は報復にあたり、違憲だと厳しく指摘した。
これを受けてヘグセス長官はソーシャルメディアで、「直ちに控訴する。反逆は反逆だ、『大佐』」と投稿した。
ケリー議員は声明で、「判事の慎重な審理と明確な判断に感謝する」と声明で述べた上で、「これがまだ終わりでないことも承知している」として、トランプ政権との闘いを続ける覚悟を示した。
ケリー議員への降格処分は、退役後の年金に大幅な影響を及ぼす可能性がある。
ケリー氏は今年1月、ヘグセス氏を被告に政府を提訴した。ケリー議員は、自分がトランプ政権を批判したことへの報復として、ヘグセス氏が違法に自分を降格させようとしたと主張。訴訟が続く間、仮差し止め命令で降格を阻止するよう裁判所に求めていた。
トランプ政権は、国防長官の決定を争うならば、それは一般の裁判所ではなく軍の手続きによって争うべきだと主張していた。しかし、レオン判事は「私はそうは思わない」と判決に書いた。
レオン判事は、連邦憲法修正第1条で国民に保障される言論の自由が、軍人に対しては制限される場合はあるものの、その制限が退役軍人に拡大適用されるなどと定めた判例はないと指摘した。
「被告らが修正第1条に基づくケリー上院議員の自由を踏みにじり、数百万人に及ぶ退役軍人の憲法上の自由を脅かしたと結論できるだけの、必要な材料はそろっている」と判事は書いた。「控えめに言っても、政府は退役軍人をもっと尊重するべきだし、尊重するよう憲法は要求している!」とも判事は書いた。
レオン判事の今回の判決には、通常の法廷文書よりも多くの感嘆符が含まれていた。判事はさらに、「修正第1条が退役軍人に保障する自由を縮小しようとするよりむしろ、ヘグセス長官をはじめとする被告たちは、いかに過去250年にわたり、軍事問題に関する公共の議論に退役軍人が知恵と専門性を貢献してきたかについて、感謝すべきだ」とも書いた。
大陪審は議員6人の起訴退け
10日にはワシントンの大陪審が、90秒の動画を発表した民主党議員6人に対する反逆共謀の罪での起訴を退けていた。議員6人を起訴しようとしたのは、トランプ大統領が指名した首都ワシントンのジャニーン・ピロ検事だった
民主党議員6人は昨年11月、アメリカの軍人たちにあてた動画で、「現在の政権は、制服を着た兵士や情報機関の専門家らを、アメリカ国民と対立させようとしている」と主張。「私たちと同じく、皆さんも今の憲法を守り抜くことを誓った。私たちの憲法に対する脅威は今、外国からだけでなく、国内からももたらされている」と訴えた。
この動画は、米軍が昨年9月以降、カリブ海と東太平洋で船舶攻撃を続ける中、その攻撃の合法性が疑問視される中で公開された。
ケリー議員は動画の中で、「私たちの法律は明確だ。違法な命令は拒否できる」と力説していた。
このビデオは、登場するエリッサ・スロットキン上院議員(ミシガン州)がシェアして広まった。ほかに、クリス・デルージオ(ペンシルヴェニア州)、クリシー・フーラハン(同)、マギー・グッドランダー(ニューハンプシャー州)、ジェイソン・クロウ(コロラド州)の各下院議員も出ている。6議員は全員、軍や情報機関に勤務した経験がある。
トランプ大統領はこの動画が発表されると、「扇動行為で、死刑に値する」と非難した。後に米FOXニュースに対しては、「死を脅しているわけじゃないが、(議員たちは)深刻な状況にあると思う」と述べた。
CBSニュースによると司法省は、アメリカ合衆国法典第18編第2387条(反逆、扇動、破壊活動などの禁止)を根拠に、議員6人を起訴しようとした。同法の規定は、「不服従、不忠誠、反乱、職務拒否」を促す「軍関係者」に最長10年の禁錮刑を科すと定めている。
大陪審による不起訴決定を受けてスロットキン議員は10日、「今日、法律を守り、この訴訟を前進させるべきでない今日決定したのは、匿名のアメリカ市民からなる大陪審だった。この政治的な捜査が、これで終わると期待したい」とXに書いた。
議員6人を反逆罪などで起訴しようとする政権の動きについては、トランプ氏がまたしても、自分の政敵とみなす相手に罰を与えようとするものだという批判が相次いでいた。