トランプ政権、月探査計画を大幅見直しへ SLSロケット・有人宇宙船・月周回基地の中止を提案

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SLSロケット 出典:NASA

トランプ政権が発表した2026年度予算案が、NASAの有人宇宙探査計画に大きな衝撃を与えています。従来のアルテミス計画の中核を担ってきた大型ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」、有人宇宙船「オリオン」、月周回宇宙ステーション「ゲートウェイ」のいずれもが終了対象として名指しされているのです。

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■SLS・Orion・ゲートウェイの中止を提案

SLSロケット 出典:NASA

今回公表された予算の骨子文書によると、政権は現在のNASAが抱える高コスト体質とスケジュールの遅延を問題視し、より効率的で柔軟性の高い「商業ベース」の宇宙探査体制への転換を図る方針を明確にしています。SLSとオリオンは、2022年に実施された無人飛行「アルテミスI」で初飛行を果たして以降、現在も続く有人飛行の準備が進んでいますが、計画通りとなれば「アルテミスII」と「アルテミスIII」のあとに運用を終了することとなります。

さらに注目されるのは、NASAがかねてより進めてきた月周回基地「ゲートウェイ」の中止提案です。国際協力によって構築されつつあるこの小型ステーションは、月面探査の中継拠点として構想されており、すでに主居住モジュール「HALO」も完成済みでアメリカに輸送されています。しかし予算案では、その完成を待たずに計画を終了し、製造済みの部品などは今後の他の計画に転用するとされています。

■「高コスト旧世代」から「商業ベースの次世代」へ

有人宇宙船「Orion」出典:NASA

このような見直しの背景には、アメリカの宇宙開発に対する新たな優先順位の提示があります。政権は、月探査の目的を「中国に先んじること」と明確に位置付け、さらにその先には「人類初の火星着陸」を掲げています。つまり、従来のシステムを用いた長期的かつ高コストなプロジェクトを見直し、柔軟かつ低予算での目標達成を狙う形です。

その中心に据えられるのが、スペースXやブルーオリジンといった民間宇宙企業の存在です。すでにこれらの企業は、NASAの委託により月着陸船の開発を進めており、打ち上げ能力も商業ロケットによって代替可能とされています。予算案では明確に言及されていないものの、これらの企業のインフラが、今後のNASA探査計画の中核を担うことになるのは間違いないと見られています。

■宇宙政策の転換

月周回有人拠点「ゲートウェイ」出典:NASA

また、火星探査への注力も打ち出されており、将来的には有人での火星到達を目指す構想が水面下で進行しています。一方で、無人探査機による火星サンプルリターン計画(MSR)は中止が濃厚となる見込みです。

現時点では、この予算案はあくまで「大統領府の提案」にすぎず、今後は上下両院での審議と修正が加えられます。NASAが今後どのような方向へ進むかは、最終的には議会の判断に委ねられます。SLSやオリオンは米国内の複数州に関連産業を抱えており、雇用や地域経済への影響から強い支持を受けてきました。議会がこれを容認するかどうか、今後の動きにも目が離せません。

国家主導の巨大開発を終え、民間主導の探査時代へ舵を切るこの変化が、次なる「月」と「火星」の時代をどう切り拓くのか。宇宙開発の今後を占う上で、極めて重要な論点となりそうです。是非みなさんからのご意見もお待ちしています。

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