どん底.132→史上初の新人首位打者へ "激変"したロッテドラ1…2軍監督からの金言

 驚異のV字回復だ。ロッテの西川史礁外野手のバットから快音が続いている。23日にZOZOマリンスタジアムで行われた西武戦で今井達也投手から左前打を放つなど、19日からの5試合の打率は.350。規定打席には到達していないものの23日の時点で打率はチームトップの.290をマークしている。開幕後は不振に陥り、打率1割台前半に低迷したドラフト1位ルーキー。2度の2軍落ちを経験して状態を上げ、ペナントレース中盤以降は本領を発揮している。

 オープン戦では衝撃の打率.410、OPS1.018を記録。ただ、各球団は新人や新外国人に“餌を巻く”期間でもある。「オープン戦期間は、いろいろと試されていたと思います。公式戦の配球ではなく、自分が打てるボールを探すというか、探られているのは正直分かっていました」。どのコースが得意で、どの球種は苦手なのか、見極められていたのである。

「ただ、その中でもしっかり打てたというのは自分の自信にもなっていたんです」。プロの球に対応できている手応えを得て、開幕スタメンの座を勝ち取った。3月28日のソフトバンクとの開幕戦(みずほPayPayドーム)は「1番・左翼」でプロ初安打初打点を記録。開幕から5試合連続安打を記録したが、オープン戦とは相手の配球がガラッと変わり固め打ちができない。「攻め方が変わって、苦しんだところがありました」。

 4月4日の楽天戦(ZOZOマリンスタジアム)から5試合連続無安打。打率は.132まで落ち込み、2軍での再調整となった。4月下旬に1軍復帰も結果が伴わない。安打性の当たりを放っても好守に阻まれたり相手野手の正面を突く。運にも見放され、打率.145と“低空飛行”のまま5月下旬に再び2軍落ちとなった。

 サブロー2軍監督(現1軍ヘッドコーチ)の助言を受けて打撃スタイルの変更に着手。「今まで前に置いていたミートポイントを体の近くにしました」。投手寄りで捉えていたポイントを、自分の体の真横で捉えるイメージである。「詰まっても大丈夫というぐらいの気持ちです。自分の手前まで引きつけて、ボールを長く見る。意識を凄く大きく変えました」。ボールを長く見られる分、余裕を持って対応できる。一方で差し込まれないようにスイングスピードを上げる必要がある。懸命に振り込んで新打法を習得していった。

3割前後のタイトル争い、規定打席到達&首位打者の可能性

 6月中旬に再び1軍復帰。打撃改造の成果が徐々に表れる。6月22日のDeNA戦(横浜スタジアム)ではプロ初の4安打。打率を2割台に戻すと、勢いは加速していった。6月は月間打率が.441。7月も月間打率は3割を超え、8月は.356と打ちまくっている。「意識を変えた効果はもちろん感じています。信じてやった結果、そこから良くなったので、今は続けてやっています」。

 同学年で同期入団の楽天・宗山塁内野手や、西武・渡部聖弥外野手が開幕から活躍を続け、球宴にも出場したのは大きな刺激となっている。「最初は自分がなかなか活躍できない中、彼らが凄く活躍していて、嫌でも情報が入ってきました」と複雑な感情もあったが、輝きを取り戻した現在は違う。「プラスに捉えて、燃え上がる。ずっと『負けないぞ』って気持ちでやれている。そういうライバルは本当にいい存在だなと思います」と切磋琢磨している。

 8月9日のオリックス戦(ZOZOマリンスタジアム)以降はサブローヘッドコーチが「一番いい打者を置きたい」という2番に定着。74試合出場で犠打0とバントはしない攻撃的2番として機能している。「そこ(2番)に置いてもらえるのはありがたいこと。力が入りすぎてもダメだと思うので、打順に関係なく自分の打撃をできるように心がけています。(バントなしで)どんどん打っていこうと思います」。理想は打率も残せて本塁打も量産できる打者で、さらなるパワーアップも見据える。

 23日の時点で残りは34試合。今シーズンの規定打席まで154打席(1試合平均4.5打席)必要だが、最終戦までスタメン出場を続ければギリギリ到達できる可能性を残す。打率トップはオリックス・太田椋内野手の.303、次いで楽天・村林一輝内野手の.302で、タイトル争いに加わる可能性も十分にある。もしかしたら史上初となる新人での首位打者も――。そんな夢のような“V字回復”を期待させる勢いが、今の西川にはある。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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