国境を超える「買春」 ラオスで日本人が9歳少女を買春も
東南アジアの小国ラオスで、日本人の児童買春が深刻な社会問題になっている。なかには、9歳で被害に遭う少女もいるという。「買春は罪」という意識が低い日本人が、貧困のために売春に身を置く少女たちにつけいり、被害を深刻化させている。
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昨年8月、名古屋市の無職の男(当時65)が、東南アジアの小国ラオスで少女のみだらな姿を盗撮したとして、児童買春・ポルノ禁止法違反などの疑いで逮捕された。
愛知県警は男の自宅を家宅捜索し、メモ帳17冊を押収。そこには、男はラオスなど東南アジアで性的関係を持ったとみられる少女の名前、年齢、会った場所、金額などが記されていた。被害者は2014年7月以降、延べ140人以上に及び、最も幼い被害者は、わずか9歳だった。
2月5日、名古屋地裁は、男に懲役3年、執行猶予4年の判決を言い渡した。
「ラオスでは、日本人の児童買春が深刻な問題になっています」
人身売買や子どもの虐待などの社会問題に取り組む認定NPO法人「かものはしプロジェクト」(東京)のラオス事業担当者は言う。
「ラオスなら捕まらない」
少女買春を目当てに、ラオスを訪れる日本人が増えたのは2010年代前半ごろといわれている。担当者は、その背景について「地理的な要因が大きかった」と言う。
「かつては隣国のタイやカンボジアで日本人の児童買春が深刻でしたが、経済発展や、国際的な批判を受けて取り締まりが強化されたことで減少してきました。その結果、『ラオスなら捕まらない』という認識が広がっていったのだと思います」
さらに近年、SNSやブログによって現地の情報が簡単に得られるようになったことも、問題が拡大した要因にあるとみられる。
ネット上には、「ここで女の子を買えます」「十何歳の女の子を買えたよ」といった情報が飛び交い、日本人がラオスの少女を無断で撮影したとみられるわいせつな動画も少なくない。
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一体、どんな男性が「少女を買いに」来ているのか。
「かものはしプロジェクト」の担当者たちは昨年11月、首都ビエンチャンを訪れ、児童買春の実態把握のための現地調査を行った。
調査の結果、児童買春をする外国人で圧倒的に多かったのは中国人で、次いで韓国人。日本人は相対的には「少ない」という印象を受けたという。
昨年6月に外務省が、「日本人による児童買春が刑法の国外犯にあたる」とする異例の注意喚起を出したことや、冒頭の事件の報道による世間の認知が要因ではないかと見る。だが、依然として、幅広い年代の日本人が一定数、訪れているという。
「かものはしプロジェクト」の担当者は、「児童買春の背景構造は複雑だが、 根底の一つにあるのは貧困」と指摘する。人口約760万人のラオスの1人あたりの国民総所得(GNI)は約2千ドル(24年)と、日本の20分の1程度の規模に過ぎない。
「売春をする少女の多くは農村の少数民族出身です。家計を支えるために都市へ送られ、結果として売春に身をおき、搾取されるケースが少なくありません」(「かものはしプロジェクト」の担当者)
ブローカーなどに騙され、都市に連れて来られる少女も少なくないだろうと「かものはしプロジェクト」の担当者は言う。
「売春ホテル」や「置屋」
「稼ぎ先がレストランと言われて都市に来たものの、賃金が非常に低く、性的サービスをせざるを得ないような状況に追い込まれるケースもあります」
ビエンチャンには普通のホテルを装った「売春ホテル」や、少女たちが集められた「置屋」があり、そこで買春が行われる。
値段は、日本円で数千円から1万円程度。年齢が低ければ低いほど価格は高くなる。こうした取引の裏側で、少女たちが精神的・身体的に深刻な被害を受け続けている。
現状を変えるには、何が求められるのか。児童買春をなくすためには、何が必要か。
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現地で活動しているNGOなどは、保護された子どもを一時的に受け入れるシェルターの運営や、故郷の村への帰還支援などを行っている。だが、支援の手はまだ十分ではない。「かものはしプロジェクト」の担当者は言う。
「経済的理由から売春に従事せざるをえない少女を故郷の村に戻しても、また同じ状況に追い込まれ、本質的な解決にはならないと思います。そもそも、売買春が違法とされており、児童買春の現場は表立っては見えにくく、売られた少女たちを保護するのがまず難しい状況にあります」
そうしたなか、同NPOは昨年12月、「#こどもを買わせないプロジェクトinラオス」を立ち上げた。
力をいれているのが「啓発」だ。買春問題は、「買う側」に罪の意識がないことも大きな問題とされる。買春者は悪いことをしているという自覚が薄く、「被害者を経済的に支援した」と考えている人も少なくないといわれる。また、依存的に児童買春を繰り返してしまう人もいるという。
そこで同NPOは、ホームページで「児童買春は犯罪」であると訴え、現地の団体と連携し、日本語で「ラオス国内での買春行為は犯罪である」と記したリーフレットを配布したり、ポスターを貼るなどの活動を始めた。ホームページ上では、自らの加害を止められない人へ向けた匿名相談窓口も設置している(https://kodomo-kawasenai.net/)。
日本人が児童買春に加担する状況
「まずは日本人が児童買春に加担する状況を止めていきたいが、それだけではこの問題は解決しない。長期的には、当事者の子どもを含むラオスの人たちの声や価値観を尊重しながら、子どもの尊厳が守られる社会をラオス流の形で実現できたらいいと思います」(「かものはしプロジェクト」の担当者)
社会の変化を後押しするには、国際社会からの働きかけも重要だ。カンボジアでは、国際的な圧力を受けて児童買春の摘発体制が強化された。ラオスでも、外からの視線が社会の意識変革を促す可能性があるという。
「ラオスにおける児童買春を国際問題として可視化し、『児童買春はどこの国でもしてはいけない』という国際的なうねりをつくることが求められます」(同)
児童買春は、遠い国の問題ではない。私たち一人ひとりが、社会全体で子どもを守らなければならない。
(AERA編集部・野村昌二)
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