はしかなど、ワクチンで予防可能な疾病 集団感染急増 ユニセフなど、「世界予防接種週間」に警鐘を鳴らす
2025年4月24日ジュネーブ/ニューヨーク発
4月24日から30日までの世界予防接種週間を迎えるにあたり、ユニセフ(国連児童基金)などは、誤った情報や人口増加、人道危機、資金削減が予防接種の取り組みの進展を脅かし、何百万人もの子ども、若者、おとなを危険にさらしていると共同で訴えました。
© UNICEF/UNI764056/Muco マラリアの予防接種を受ける子ども(ブルンジ、2025年3月17日撮影)
麻疹(はしか)、髄膜炎、黄熱病など、予防接種で防ぐことのできる疾病の集団感染が世界的に増えており、多くの国で長い間抑え込まれていた、あるいは事実上消滅していたジフテリアなどの疾病も再流行する恐れがあります。こうした事態を受けて各機関は国際社会に、予防接種計画を強化し、過去50年間に達成した子どもの死亡率の低下という大きな成果を堅持するため、差し迫った課題として引き続き政治的関心を寄せ、資金を拠出するよう求めています。
集団感染の増加と医療システムの逼迫
アフリカでは髄膜炎の症例も2024年に急増し、この増加傾向は2025年も継続しています。今年に入ってからの3カ月間だけで、22カ国で5,500件超の疑わしい症例と約300件の死亡が報告されました。昨年は24カ国で約2万6,000件の症例と約1,400件の死亡が報告されています。
アフリカ地域では黄熱病の症例も増加傾向にあり、2024年には12カ国で124件の症例が確認されたと報告されています。これ以前の10年間には、世界的にワクチンが備蓄され、黄熱病ワクチンが定期予防接種計画に使用されたことにより、この感染症は劇的に減少していました。南北アメリカ地域では、今年初めから黄熱病の集団感染が確認されており、4カ国で合計131件の症例が報告されています。
これらの集団感染は、世界的な資金削減の中で発生しています。世界保健機関(WHO)が先ごろ行った、同機関の108 の国事務所(その大半は低所得国および下位中所得国)を通した現状調査によると、これらの国のほぼ半数で、ドナーの資金削減により、集団予防接種や定期予防接種の実施、および関連物資の供給に中程度から重度の支障が出ています。ワクチンで予防可能な疾患をも対象とした疾病監視体制も、調査対象国の半数以上で影響を受けています。
その一方で、パンデミック中に予防接種を受けられなかった子どもに対し、各国がその遅れを取り戻そうと取り組んでいるにもかかわらず、近年では定期予防接種を受けていない子どもの数が増加しています。定期予防接種を全く受けられなかった子どもは2023年には1,450万人いると推定されており、2022年の1,390万人および2019年の1,290万人から増加しています。これらの子どもの半数以上は、紛争下や脆弱で不安定な状況にある国で暮らしており、多くの場合、基本的な保健医療サービスを受けることが難しくなっています。
ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは次のように述べています。「世界的な資金危機により、不安定かつ紛争の影響下にある国々で、脆弱な立場に置かれた1,500万人以上の子どもにはしかの予防接種を行うことが著しく困難になっています。50カ国近くで、予防接種事業、疾病の監視、集団感染への対応がすでに支障をきたしており、その影響の大きさは新型コロナウイルス感染症の流行時と同様です。予防可能な疾病との闘いにおいて、後退は許されません」
新型コロナウイルス感染症のパンデミック中に予防接種を受けられなかった子どもたちに予防接種を行うため、2023年に開始された「The Big Catch-up(大きく取り戻す)」の取り組みやその他の定期予防接種計画への継続的な投資が不可欠です。
解決策としての予防接種
さらに、過去 2 年間で、予防接種に関する他の分野でも大きな進展が見られました。子宮頸がんの発生率が世界で最も高いアフリカ地域では、2020 年から 2023 年にかけて、HPV ワクチンの接種率が 21% から 40% へとほぼ 2 倍に増えました。これは、子宮頸がんの撲滅に向け、世界の協調的な取り組みが反映されたものです。予防接種の進展には、肺炎球菌結合型ワクチンの世界的な接種率の向上も含まれます。この進展は、特に東南アジア地域で顕著であり、疾病負荷の高いチャドとソマリアでも導入が始まりました。
もう一つの重要な進展は、アフリカの約20カ国でマラリアのワクチンが自治体レベルで導入されたことです。これにより、さらに多くの国がこのワクチンを導入し、拡大が加速することで、2035年までにさらに50万人の命を守る基盤が築かれます。これはマラリア対策の手段の一つとして位置付けられています。