男性らの「セクストーション」被害急増 18歳未満からの相談多く
性的な画像や動画を送った相手に脅され、金品を要求されるセクストーション(性的脅迫)について、性暴力の被害者を支援するNPO法人「ぱっぷす」への被害相談が急増している。
ぱっぷすが17日、東京都内で記者会見し、今年度は6月末までに約900人の相談が寄せられたことを明らかにした。
Advertisement中には小学生の被害や、100万円以上脅し取られたケースもあるという。
大半が海外の犯罪グループの関与が疑われるケースだとして「法整備や注意喚起が追いつかないまま、若い日本人が狙われている」と訴えている。
最年少は小学5年生
セクストーションは「Sex(性的)」と「Extortion(恐喝)」を掛け合わせた造語だ。
ぱっぷすによると、これまで主に女性が元交際相手らに性的な画像や動画を要求されネット上で拡散される「リベンジポルノ」が注目されてきたが、金銭を脅し取るセクストーションについては男性からの相談が急増しているという。
ぱっぷすへの被害相談は、2023年度が約640人▽24年度が約1800人――だったが、25年度は6月末時点で約900人に上る。総相談件数の68%が男性だ。
18歳未満からの相談が多く、相談者の最年少は小学5年生だった。25年6月は相談者の44%が高校生、7%が中学生だった。
大半は海外の犯罪グループの関与が疑われるという。100万円超を脅し取られたり、小学生が自殺未遂に至ったりしたケースもあった。
被害は氷山の一角か
相談者はどんな被害に遭っているのか。
具体的には、自動翻訳機能がある交流サイト(SNS)などを介して知り合った海外の女性と自慰行為を見せ合った後に、「録画をした」「インスタグラムのフォロワーに録画をばらまく」などと脅され、電子マネーを要求される――といった被害が確認されているという。
会見した金尻カズナ理事長は「親や周囲に言えず、そのまま加害者の言いなりとなってしまうケースが多い。金銭を要求されても(相手のアカウントを)即ブロックし、相談してほしい。家族や教員など周囲の人もこうした事件があることを知ってほしい」と呼びかけた。
スマートフォンの利用時間が長くなりがちな夏休みは、特に被害が発生しやすいという。
「私たちが把握しているのは氷山の一角。『暗黒の夏休み』とならないようにしてほしい」
法整備追いつかず「公的な窓口を」
また、金尻理事長は「セクストーションを規制する法整備が不十分だ」とも指摘する。
刑法では相手の同意なく性的姿態を撮影する行為を罰する「撮影罪」が新設されたほか、他人の性的な画像や動画を同意なくネット上に公開する行為を規制する「リベンジポルノ防止法」がある。
一方、同意のある撮影画像を用いた脅迫行為を明確に処罰対象とする法律はないという。
国外で日本国民以外が行った場合も処罰の適用外だ。
「国外犯の組織犯罪の形態が目立ち、手口も巧妙化している。自殺者の出た米国などで対策が進んだ結果、日本の若者がターゲットになっているのではないか」と懸念する。
会見に同席した人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」の伊藤和子弁護士も「子ども本人が親を頼らずとも相談できる公的な専用窓口の設置を急ぐべきだ」と訴えた。
ぱっぷすでは、インスタグラムやフェイスブックを運用する米メタ社などプラットフォーム事業者とも対策を協議しているという。
ぱっぷすへの相談は電話またはメールから。無料。詳細はサイト(https://www.paps.jp/hotlinelist)から。【尾崎修二】