【日本市況】3週ぶり円高値、米財務長官が日米金融政策発言-株反落

14日の日本市場では円が大幅上昇し、対ドルで3週間ぶり高値を付けた。ベッセント米財務長官の日米の金融政策に関する発言を受け、日米金利差の縮小を意識した円買い・ドル売りが優勢となった。円高を嫌気して株式は7営業日ぶりに反落、債券は中長期債を中心に下落(利回りは上昇)した。

  円は主要通貨に対して全面高となり、対ドルでは一時前日のニューヨーク終値比で0.8%高の1ドル=146円21銭と7月24日以来の水準まで上昇した。ベッセント氏が13日のブルームバーグのテレビインタビューで、米政策金利は現状より150-175ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い水準にあるべきだとの見解を示したほか、日本銀行はインフレ対応で「後手に回っており、利上げするだろう」と述べたことが背景にある。

  ナショナルオーストラリア銀行(NAB)のストラテジスト、ロドリゴ・カトリル氏(シドニー在勤)は「ベッセント財務長官が発言すると市場は耳を傾ける。そして今、同氏は円高を望んでいる」と指摘。「少なくともここ数日、市場はベッセント氏の発言により注目しているようで、その根底にはドルを押し下げるというテーマがある」と話した。

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14日の国内為替・株式・債券相場の動き
  • 円は対ドルでニューヨーク終値比0.7%高の146円39銭-午後3時45分時点
  • 東証株価指数(TOPIX)の終値は前日比1.1%安の3057.95
  • 日経平均株価は1.4%安の4万2649円26銭
  • 長期国債先物9月物の終値は前日比39銭安の137円97銭
  • 新発10年債利回りは3bp高い1.545%-午後3時時点
  • 新発5年債利回りは3.5bp高い1.100%

為替

  東京外国為替市場の円相場は1ドル=146円台前半まで上げ幅を拡大。前日の海外市場に続き、ベッセント長官の発言を手がかりとしたドル売り・円買いが進んだ。

  あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、ドルのサポートとなっていた147円を抜けたことで、損失を限定するための「ストップロス的なドル売り・円買い」が出た可能性があると指摘した。

   オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場では、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での25bp利下げの予想確率が100%を超え、年内では計63bp程度の利下げが織り込まれている。一方、日銀の利上げの予想確率は10月で約40%、12月までで60%程度となっている。

  野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは14日付のリポートで、この日米国で発表される生産者物価指数(PPI)や新規失業保険申請件数で「9月50bp利下げへの期待が一段と高まるかが焦点になる」と指摘。あおぞら銀の諸我氏は、インフレの高まりもあり「日銀は10月に利上げに踏み切ってもおかしくはない」とし、「ドル・円は上値がどんどん重くなってくるかもしれない」と予想した。

株式

  日本株は反落。主要株価指数が連日最高値を更新していたことで高値警戒感が広がったほか、米利下げ観測を背景に円高が進んだことが投資家心理の重しとなった。

  電機や機械、自動車など輸出関連、商社やサービス株に売りが先行。小売りや建設、不動産など内需関連も安い。一方、日銀利上げによる金利上昇が追い風となる銀行株は上昇した。

  バンエックでクロスアセット・ストラテジストを務めるアンナ・ウー氏(シドニー在勤)は、ベッセント氏が日銀のインフレ対応の遅れを指摘したことで、一部投資家は利上げ圧力の高まりと受け止めたとし、「TOPIXや日経平均が短期的に反応するのも驚きではない」と述べた。

  その上で、米国の対日関税率が相対的に低く、ハイテクおよび人工知能(AI)関連株の上昇モメンタムが続いていることから、中期的には株価は上昇基調を取り戻す可能性が高いと付け加えた。

債券

  債券相場は中長期債中心に下落。ベッセント財務長官が日銀はインフレ抑制で後手に回っていると指摘したことを受け、日銀による早期利上げの連想から売りが優勢だった。

  三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、ベッセント氏の発言が売り材料視されたほか、13日の5年債入札のやや弱めの結果を受けて「中期債は買いにくさが意識された」との見方を示した。

  日銀は午前10時10分の定例の国債買い入れオペを通知した。対象は残存期間1年超3年以下、5年超10年以下、10年超25年以下、25年超で、買い入れ額はいずれも据え置いた。

  三菱UFJアセットマネジメントの小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャーは、日銀オペの結果を受けて先物の下げ幅が拡大したと指摘する。10年以下のゾーンで落札価格が市場予想より安かったことに加え、案分レートと平均落札レートが一致する1本値となったことで「特定の投資家が落札し、日銀に国債を売れなかった他の投資家の売りが出た可能性がある」と言う。

新発国債利回り(午後3時時点)

  2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債   0.810% 1.100% 1.545% 2.545% 3.070% 3.290% 前日比 +3.0bp +3.5bp +3.0bp +2.0bp -1.5bp 横ばい

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

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