ミサイルの音と船上パーティーと 中東で立ち往生するクルーズ客の心境は

湾岸地域や紅海の港湾を巡る普段通りのレジャークルーズとして始まった旅が、今では何百人もの乗客にとって不安な待ち時間へ変貌(へんぼう)しつつある。写真はカタールのドーハに停泊中の「マインシフ5」=3月2日/Noushad Thekkayil/NurPhoto/Shutterstoc

(CNN) 「ミサイルの潜在的脅威あり、ただちに最寄りの安全な建物に避難を」――レスリー・バランタインさんは、早朝に携帯電話の緊急警報で目覚めた。

夫のアリスターさんは気づかずに眠っているようだ。バランタインさんはベッドから起き出し、客室の窓から外をのぞいた。そこにはただ暗闇と、ドバイ港の明かりだけが見えた。

3月1日のことだ。それから2日経っても、バランタインさんはアラブ首長国連邦ドバイに停泊する全長331メートル、19階建てのクルーズ船「MSCエウリビア」の中にいた。

イランの紛争がエスカレートしたため、エウリビア以外にも複数の船が中東から脱出できずにいる。

英北部スコットランドから訪れているバランタインさんは、CNN Travelとのインタビューで「大きな爆発音が聞こえたり、ミサイルが迎撃される様子が見えたりするが、すべて遠く離れた出来事のようだ」と語った。

緊急警報の後、窓から外をのぞいても何も見えないと分かり、バランタインさんはベッドに戻るしかないと判断して、再び眠りについたという。

「体に障るほど」心配する家族も

あの瞬間はまさに現状の異様さを象徴していたと、バランタインさんは振り返る。ほかの乗客も同じだ。

もう一人の英国人乗客、シャロン・コックラムさんはCNNに、「こんなことに巻き込まれるとはまったく思ってもみなかった」と語った。「今までずっと、家のテレビで見る出来事でしかなかった」

船も乗客も当分この場所にとどまることになるだろう。周辺の空域は閉鎖・制限されている。船で送り帰してもらおうとしても、ホルムズ海峡を通れない状態では無理だ。

米軍などで構成する合同海事情報センター(JMIC)は最近、攻撃は「ほぼ確実」だとして、この地域のリスク評価を最も深刻な「危機的」に引き上げた。

ホルムズ海峡を捉えた人工衛星画像。ホルムズ海峡はイランとオマーン間に横たわる戦略的な航路であり、ペルシャ湾とアラビア海を結む。クルーズ船は現在、この航路を避けている/Gallo Images/Getty Images

ドバイではギリシャのセレスティアル・クルーズ社が運航する中型船「セレスティアル・ディスカバリー」も足止めされている。その姉妹船のひとつ「セレスティアル・ジャーニー」はカタールのドーハに停泊中だ。独TUI社のクルーズ船も、「マインシフ5」がドーハで、「マインシフ4」がアラブ首長国連邦アブダビで、それぞれ立ち往生している。

TUIは4日、マインシフ4の乗客218人がエミレーツ航空の緊急便でドバイから独ミュンヘンに向かったと発表した。

ほかの乗客らもいずれ下船して空路帰宅できることを願っているが、流動的で不安定な地政学的状況の下では、いつになるか定かでない。

特にコックラムさんは、早く英国へ帰りたがっている。娘が妊娠しているからだ。予定日は2週間ほど先だが、助産師の見立てではもう「いつ生まれてもおかしくない」。コックラムさんにとっては初孫だ。夫とともに、誕生には立ち会いたいという。娘が自分たちのことをとても心配しているので、そのストレスが体に障る恐れもあると案じている。

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