取り壊し命令に逆らった男性のセルフビルド住宅、ジブリ風と人気 中国

 発信地:興義/中国 [ 中国 中国・台湾 ]

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【6月12日 AFP】中国南西部・貴州省興義市で、取り壊された家屋のがれきの中に、古いベニヤ板と歪んだはりでできた今にも壊れそうな10階建ての塔が空に向かって突き出している。立ち退き命令に頑として応じなかったチェン・ティアンミンさん(42)の反骨精神を示すモニュメントのような建物だ。

当局は2018年、見事な水田と幻想的な山の風景が広がるこの地域に観光リゾートを建設するため、チェンさんが住む村の大半を取り壊した。

だが、チェンさんは立ち退きを拒否。建設計画が頓挫した後も、取り壊し命令を無視し、家族の質素な石造りの平屋住宅を上へ、上へと増築していった。

蒸し暑い5月の午後、AFPの取材に応じたチェンさんは、迷路のような建造物の中で、はしごを上り、木のはりをよけながら、「最初は必要に迫られてこの家を建て、改築し、増築しようと思っただけだ」と語り、「でも、今では私の趣味になった」と続けた。

地元当局はかつて、この村に映画館や人工湖を含む、約320ヘクタールの観光リゾートを建設する計画を推進。

村民に補償を約束したが、チェンさんの両親は立ち退きを拒否。チェンさんは、祖父が1980年代に建てた自宅を守ろうとする両親の力になることを誓った。

近隣住民が引っ越し、家々がブルドーザーで取り壊される中、チェンさんは、ここに居座り続けた。

6か月後、財政危機にあえぐ貴州省で思いつきで進められた他の開発事業と同じく、リゾート計画は中止された。

荒れ果てた村の中でほぼ一人になったチェンさんは、「釘子戸(釘の家)」の主となった。補償を正式に提案されているにもかかわらず、居座り続ける居住者の家を意味する中国語の表現だ。

昨年8月、チェンさんの塔は違法建築物に指定され、もともとの平屋住宅以外の増築部分を5日以内に取り壊すよう命じられた。

しかし、チェンさんは控訴。次の審理は延期されている。

チェンさんは、「心配はしていない。土地を開発する人もいないので、わざわざ、ここを壊す必要は彼らにはない」と話した。

皮肉なことに、近年、チェンさんの家は観光スポットになっている。

中国のSNSでは、中国で最も奇妙な「釘子戸」と評され、スタジオジブリの傑作アニメ『ハウルの動く城』や『千と千尋の神隠し』の建物に例える指摘もある。

夕暮れになると、チェンさんの装飾的なランタンの光が塔を照らした。

近くの道で、その光景を眺めていた地元住民の一人は「美しい」と感嘆しながら写真を撮り、「安全性に問題がなければ、(公式に)地元のランドマークになるかもしれない」と語った。

チェンさんは、この家を見に来た多くの人々は、自分の子ども時代の夢を思い出すようだと話した。

「(みんな)自分の手で自分の家を建てることを夢見る。でも、ほとんどの人は実現できない」

「私は、その夢を思い描いただけではなく、現実にした」と語った。(c)AFP

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