「万博会場のユスリカ大量発生」マンション買った人も悲鳴 「網戸びっしり」「洗濯物干せない」契約違反を主張できる?
大阪・関西万博の会場で「ユスリカ」が大量に発生したことで、日本国際博覧会協会では薬剤を散布するなど対策に追われた。
まさかのトラブルをうけてSNS上には来場者による「現地報告」が相次いだわけだが、蚊に似たユスリカは人を刺すことはない。とはいえ、その存在を不快に感じる人は少なくないだろう。ときには法的なトラブルにまで発展する。
弁護士ドットコムには、新居にユスリカが大量発生したという相談が寄せられている。購入後に“ユスリカの襲来”を受けたら、返金や引越しはできるのだろうか。
●「部屋中のガラス窓にこびりつくユスリカ」に恐怖
ある人は、販売側から何も説明がなかったのに、住んでみて初めて“ユスリカ被害”に苦しむことになったという。
「部屋中のガラス窓や網戸、外壁にびっしりとこびりつき、網戸を一瞬でも開けると部屋の中に大量に侵入してきます」
「バルコニーに洗濯物が干せず、換気口を開けても侵入してくるので換気も出来ません」
この相談者には喘息の持病があるため、粉上になった死骸におびえているという。
ほかにも、虫嫌いのため虫が出ないことを確認のうえで上層階の部屋を購入したのに、ベランダに大量のユスリカの死骸を見つけたという相談もあった。
このように、自宅を購入したところ、ユスリカに困った場合、販売側に対応を求めることはできるのだろうか。不動産の問題にくわしい関戸淳平弁護士に聞いた。
●マンション自体の物理的な欠陥ではない
——マンションの部屋を買った後に大量のユスリカがベランダや窓などに発生したら、販売側に虫への対策や、ユスリカの被害が及ばない別の部屋への引越しなどの対応を求めることはできるのでしょうか。
周辺環境による被害なので、原則としては売主側に対応を求めることはできませんが、契約内容によっては可能な場合もあります。
居住用に購入したマンションに欠陥(契約不適合)がある場合、買主は売主に対して補修や代金減額の請求ができます。また、補修ができずかつ居住できない状態であれば、契約自体を解除することも可能です。
ただし、今回のケースではマンション自体には物理的な欠陥はありません。また、大量の虫が飛来するかどうかは近隣に水場や森林が存在するかと行った周辺の環境に左右されるものです。
ですので、「大量の虫が飛来する」ということは、通常は契約不適合とはならず、売主の責任を追及することはできません。
売主側には虫の飛来の有無を積極的に調査・報告する義務はないため、これを怠っても契約違反にはなりません。
●虫の発生や周辺環境の事前確認が重要
——買主が虫の発生を事前に確認していた場合はどうでしょうか。
買主が売買契約に先立って持病などの事情を伝えた上、特に「大量の虫が飛来しないこと」を売主に確認した上で売買契約を結んだようなケースですね。
このような場合であれば、「大量の虫が飛来しないマンション」を購入する契約をしたことになりますので、「大量の虫が飛来すること」は契約不適合だと言える余地が出てきます。
この場合、買主は売主に対して、大量の虫の飛来を理由に代金の減額を請求できる余地があります。ただし、マンション自体に物理的欠陥はないこと、虫の飛来による日常生活への制約の程度などからすると、大幅な代金減額や契約解除までは難しいでしょう。
マンションの改修や代替物件の提供を求めることも法的には困難です。
売主が大量の虫の飛来を知りながら、あえて虚偽の説明をしていたような場合には、代金減額とは別に損害賠償請求をすることも可能ではあります。
トラブルを避けるためには、購入検討段階で自ら周辺環境を調査するなどして、できる限りリスクを減らしていくことになるでしょう。
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