「Gemini3」と「マイクロソフト」で読むAI相場の行方~その1
その背景を、25年11月にアルファベット<GOOGL>傘下のグーグルが投入した「Gemini3」と、生成AIの認知度を高めたマイクロソフト<MSFT>をキーワードに2回に分けて紹介する。
初回はAIインフラ関連銘柄の動向に焦点を当てる。(聞き手は真弓重孝、高山英聖/株探編集部)
――加藤さんの運用するAI関連株ファンドの過去3年リターンは年率34.4%と、オルカン(全世界株式ファンド)を10%ポイントほど上回ります。AIバブルが懸念される昨今ですが、今後も好成績を残すためにどのような戦略を立てていますか。
加藤明さん(以下、加藤): まず昨今のバブル論については、「AIインフラ需要はピークを迎えつつある」という見方に集約されるのかもしれません。この点に対する私の見解は、需要は今後も堅調に伸びが続くというものです。
ここ数年、インフラ需要に対する市場の見通しは常に弱気でした。代表例がハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)と呼ばれるグーグルのアルファベット<GOOGL>やマイクロソフト<MSFT>などの設備投資額です。
2社の設備投資額について、2024年と25年の市場予想は前年比で約20%増でしたが、実績はいずれの年も50~60%増と予想を大きく上回りました。
エヌビディア<NVDA>や台湾のTSMC<TSM>といった半導体関連銘柄についても同様です。2社は、データセンター向けの設備投資を今後数年間で年率40%程度としていますが、市場の予想は会社計画より保守的になっています。
■「野村グローバルAI関連株式ファンド」と「オルカン」の概要
出所:みんかぶ投信。注:2026年1月7日時点。オルカンは「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」、三菱UFJ AMは三菱UFJアセットマネジメント、野村AMは野村アセットマネジメントの略。
――予想を大きく超える設備投資額が続いていること自体が、市場には「バブル状態だ」と映っているのではないでしょうか。加藤: そうした要素があるのかもしれませんが、需要がありもしないのに設備を増強しているならば、警戒するのは当然です。
しかし、足元の設備増強は「需要に即したものだ」というのが私の見解です。先行きの需要が見えている中で投資しているのであれば、それをバブルと呼ぶのには違和感があります。
――「先行きの需要は膨らんでいくのか」という点を伺う前に、株価水準について目を向けると、足元のエヌビディアの予想PER(株価収益率)は約45倍です。一時期は100倍を超えた時期もありました。
加藤: 2000年前後のITバブル期と比べると、足元の生成AI相場の主役たちの株価水準に過熱感はありません。
ITバブル期は赤字や利益がわずかしかない企業が多数IPO(新規株式公開)し、PER100倍を超える銘柄が目立ちました。 その点で、エヌビディアはしっかりと利益を上げている上に、日本のAI関連銘柄と比べれば株価に割高感はありません。――加藤さんが運用するAI関連ファンドには、2025年5月の運用報告書の時点では、日本株のAIインフラ関連銘柄が組み込まれていません。日本のAI銘柄はバブル状態なのでしょうか。
加藤: アドバンテスト<6857>や東京エレクトロン<8035>など半導体を中心とした日本のAI関連企業は事業モデルが洗練されグローバル競争力も持っています。
業績の成長力もあり、その観点からはバブルではありませんが、現在の株価水準で組み込むのには躊躇があります。 日本のAI企業の株価が割高なのは、米国企業と異なり選択肢に限りがあり、どうしても特定の企業にマネーが集中しやすくなる面があるからでしょう。 当ファンドは、米国以外にも欧州、中近東、アジアなど世界中のAI企業を組み入れ対象にしています。日本企業と同等の力を持つ海外企業の株価水準が割安ならば、そちらの配分を優先することになります。■日米のAIインフラ関連銘柄のPER比較
出所:QUICK・ファクトセット、注:日本勢は2025年12月26日終値、米国勢は25日終値時点
メタバースや量子コンピューティングとは違う――設備需要に話を戻すと、米オープンAIは赤字の中で100兆円を超える設備投資を計画しています。その彼らに資金を供給しているのがエヌビディアをはじめとするAIのスター銘柄たちです。この資金循環の構造に、マーケットは危うさを感じているのでは。
加藤: エヌビディアがオープンAIに資金を供給する構造はベンダーファイナンスの一環で、たとえば自動車会社が自動車購入者にローンを提供するのと同じです。
オープンAIが赤字であることが心配の種になることは理解できますが、彼らが巨額の設備投資を計画するのは、今、着実に需要が増加しており、今後も増加していくと見ているからです。 その点で、ITバブルの時や、少し前にブームになったメタバース(仮想空間)、そして昨今注目を集める量子コンピューティングと大きく異なります。現時点で、メタバースの活用は日常になっていませんし、量子コンピューティングの活用も実験的な領域にとどまっています。 これに対して生成AIは、我々運用会社の業務でも、その活用は日常的なものとなっています。メディアの現場でも同じでは。――我々も、生成AIを使わない日はないといっても過言ではない状況です。また個人投資家の間でも、賢い活用法が広まっています。
加藤: すでに生活の一部になるほどの需要が生まれている中で、今後も利用頻度は高まっていくと考えられます。
そのシナリオが崩れなければ、AIインフラ需要の伸びしろはまだ大きいと考えられます。――今後、世界中で利用が進むにしても、世界の人口は限られています。またGPU(画像処理半導体)の需要については、機械学習を一通り済ましたら、これまでのような需要増は期待しにくくなるとの見方もあります。
加藤: 前段は使う人の数の有限性と、後段はGPUの「ニューラル・スケーリング則」に関するものですね。
まず前段について述べると、生成AIブームの到来によって、AIの定義が大きく変わったと実感しています。それまでのAIは「人が動かすもの」でしたが、ブームが起きてからは「人を介さず自律的に活動するもの」に変わっていきました。
当初の「人が動かす」身近なAIの代表例が、自動翻訳ソフトです。2017年2月に設定された当ファンドも、当初はソフトウェア関連銘柄などに注目していました。 この当時の自動翻訳ソフトは、人が翻訳箇所を指定するものでした。こうした人間が主体になる利用環境に変化を加えたのがオープンAIの「ChatGPT」です。 現在では人がプロンプト(指示)を出すと、その指示を基にAI自らが次のタスクを考え、人に提案するようになっています。 翻訳に限らず今後、人の介在なしにAIが自らの判断でタスクをこなすアプリケーションが次々と生まれれば、AIのインフラ需要は世界人口の壁を乗り越えて増加していく可能性を持ちます。――もう1つのスケーリング則については。
加藤: スケーリング則について誤解を恐れずに単純化して表現すると、AIの性能はGPUを投入すればするほど向上するというものです。
エヌビディアの時価総額が4兆ドル(約600兆円)を超える状況までに膨らんだのも、この法則が広まったことが大きくあります。――一方で生成AIの発展をもたらした機械学習において、世界中にある情報をほぼ学習し尽くしてしまえば、これまでのようなスケーリング則の効果は薄れていくという見方もありました。
加藤: それに一石を投じることになったのが、グーグルが25年11月に投入した「Gemini3」です。
――「Gemini3」登場後でもアルファベット<GOOGL>の上値は重い状況ですが、市場はそのインパクトを評価しあぐねているのでしょうか?
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